まおハド 魔王であるボクの周りだけ何故か矢鱈とハードモードな件

K.M

第1部 魔王誕生

魔王、始めました

『対象者の死を確認しました。転生を開始します。』



 きれいな、女の人の声……。


 俺は、死んだ、のか……?


 半年前、肺にがんが見つかった。その時にはもう既にだいぶ進行してしまっていて、いきなり余命半年だと告げられた。


 抗癌剤治療を続けたものの、あまり効果は見られず、癌はどんどん進行していった。


 一ヶ月ほど前だろうか。俺は安楽死を選択し、投与された薬で意識が朦朧としたまま、今に至る。


 ああ、もっと、もっと、生きていたかったなあ……。



『応答を求めます。湊玲緒みなとれお、応答を求めます。』



 なんだ、さっきから。転生だのなんだのと騒ぎちらかして。静かにしてくれ。



『応答を確認。同時にスキルの取得を承認。ユニークスキル"静殺サイレント・キル"を取得。』



 もういい。やめろ。話しかけるな。燃えて、なくなってしまえ。



『承認。ユニークスキル"焼炎鬼気ブレイズ・スプリット"を取得。』



 うぜぇんだよ。消えろ。消えてくれよ……。



『承認。ユニークスキル"消失者バニッシャー"を取得。』



 もっと生きていたかったって悲しんでるやつの前でよくそんなに流暢に話せるな……。もうやめてくれよ……。



『ユニークスキル"無慈悲ルフレス"を取得。また、転生後の種族を長命魔人エルフに決定。ただいまより転生を開始。』



 転生……?ん、なんだ。視界が明るくなった……?


 俺の前には、まさに女神とも取れるような美人が立っていた。



「こんにちは、玲緒?使いの者が迷惑をかけたわね。」


「えっと……?」



 この人は一体誰なんだ?そして俺は死んだはずじゃ……。


 そう考えていると、女の人は見透かしたように答えた。



「あなたは確かに死んだわ。でもね、あなたはまだ若かった。死ぬには早すぎたの。だからね、私がチャンスをあげようとおもったのよ。転生してやり直すっていう最高のチャンスをね。」



 当たり前のようにそう答えられたが、転生など、ラノベや漫画だけの話だと信じていた俺は面食らった。


 そんな俺にはお構い無しに女の人は続けた。



「そして私はあなたが今から転生する世界の女神よ。ちょっと信仰されてたりもするわ。」



 そういって、自称女神は笑ってみせた。やっぱりこの人かなりの美人である。



「安心して、あなたは一般人に生まれ変わるわ。そして、自由に暮らしていいのよ。楽しく生きてちょうだい。強くなってもいいわ。私が転生させた人の中にはその身に私の化身を宿している子もいてね。とっても強いのよ。ともかく、どうするもあなたしだい。第二の人生、楽しんでね。」


「えっ、あの、ちょっ。」


「こう見えて私は忙しいの。じゃあね!」


『転生後の肉体の作成が完了しました。正式に転生します。』


「ちょっと待っ……。」


 目の前の白い空間に青い光が差し込んだ。その光は徐々にこちらに近づいて来た。




 が。




 突如として、その青い光は俺の背後から迫ってきた黒い闇に飲み込まれてしまった。そして、俺も……。













 どれくらい経っただろうか。俺の顔を数人の男女がのぞき込んでいた。



「あなた、たちは……?」


「おお、目覚めましたか。」


「はじめまして、そしてこれからよろしくお願いしますね。」


「え、な、何を……?」


「私たちのことを知らないのも無理はないです。はじめまして、ですから。」



 会話が成り立たないなあ。



「ともあれ、お目覚め、我々一同嬉しく思います、。」

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