二十一本目 魔剣
「スマン待たせた!」
俺は、長剣と斧槍、短剣型の木剣を買って外に出た。
「先輩、
訂正、防具も新調したんだった。
「ずっとあの格好だったから、違和感しかないけどな」
今までは普段着の上にレザーアーマーを着ていたが、チェインメイルの上に赤のサーコートという防具に変えたのだ。
左腕には、盾からの衝撃を和らげるために金属製の小手を付けた。――オークの拳を受けた時、痺れてしばらく使い物にならなかったからな。
「いやいや、メチャメチャカッコいいです先輩!」
「……まぁ、その言葉は素直に受け取っておくよ。ありがとな」
「じゃ、早速
※ ※ ※
ギルドの最上階——
そこは、ギルドの屋上に、さらに塔のようにそびえる建物だ。
「♪」
受付嬢は、天際監視台へ足を運んでいた。
塔の中は、ひたすら螺旋階段が続いており、三階ほどの高さを登ると、開けた青い空間に出る。
円形の空間は、壁はおろか、天井すらガラス張りの室内だ。
「観測者様~、
「あー……了解。そこ置いといてー」
受付嬢の目的は、『観測者』と呼ばれる天際監視台の住人に食事を届けることだ。
「今日の夜空はどうです~?」
「禁域がザワついてるって言う割には穏やかだねぇ」
円形の空間の中心には、クッションにゆるく座る、『観測者』と呼ばれた妙齢の女性がいる。
藍色の長い髪に、やる気のない黒真珠の瞳。――手足はスラリと長く、下手な男よりも高身長だろう。
彼女は全身を覆う、白い布切れのような恰好で、疲れた表情をしていた。
「あぁ、でもー……なーんか予感がするんだよねぇー」
『観測者』——彼女達の仕事はただ一つ。
「
空から飛来する魔剣を探知すること。
「え~……観測者様がいうと冗談にならないんですからやめてくださいよ~」
「アハハー、アタシも疲れてるから、きっとこの予感も外れるってー」
『魔剣が飛来』するとなると、大忙しになる受付嬢は、半眼で観測者を見つめている。
「も~……——交代の観測者様が来るまでお願いしますよ?」
「アイアーイ、ごはんありがとねー」
その夜、金星は明滅を繰り返していた。
※ ※ ※
ブランが出発して四日目の朝。
「はッ!!」
「そう、いい感じ……!! そのままもう一度……打ちこんで来い!!」
「はい!!」
キイラの短剣術は、想像よりも上達していた。
投擲術の方は、短剣術に比べてイマイチだが……それでも、『壊滅的に出来ない』訳ではない。
「身体強化——掛けます!」
「了解——来い『白招来』!!」
ついでに身体強化も掛けて、魔法の練習も同時にこなす。
俺のイメージの目標がブランなだけあって、身体強化の強化倍率は伸びている気はしないが、魔力の操作には少しづつ慣れてきたように思う。
「うぁ……!」
「うし……ここまでにするか!」
「人、少ないですね」
「だな」
現在、ギルドのテーブル。
円形のテーブルに向かいあって座る俺とキイラは周囲の
「確か、ブランの参加してる『オルスの奈落』の魔物掃討作戦に、ほとんどの冒険者が出張ってるんだっけか?」
「そうみたいです。――等級が銀Ⅱ級以上であることを条件に、かなり高額報酬の
「ふーん……」
騎士団は普段、冒険者に
なのに、今回は冒険者にまで
「大丈夫かブランの奴……」
「昨日、物資補給の騎士を見かけました……難航してるんですかね?」
「さぁな……ただ魔物数が多いだけならいいけどなぁ」
ちなみに、セレストとヘリオスは今日もギルドの端で
まぁ、誰も居ない時に魔剣でも振ってきたら一大事だからなぁ……
「ま、考えててもしょうがない。――この間、金使いすぎたし……今日はゴブリンついでにオーク辺りでも狩りに行こうぜキイラ」
「ですね、先輩が居る今、アイツ等なんて敵じゃないっすよ!」
「怖いから調子に乗らないでくれ」
ちなみに、『オーク退治』の
……いつも通りのゴブリン退治+αだな。
「これだけ討伐出来たら、今日のご飯は豪勢に行けそうですね先輩!」
「コラコラ、俺ら
「あー先輩、いつも酒頼んで、僕やブランさんよりお金使ってる人が言えたことじゃないっすよ!」
「俺はいいんだよ俺は」
自分のことを棚に上げながら、俺は今日の戦果を見つめる。
今日の魔物討伐数は、ゴブリン二十体に、オーク三体だ。——これだけ討伐すれば、多少夕飯を豪勢にしても、少しは残る。
「……」
その日暮らしだった頃を思い出し、何となく俺は自分の手のひらを見つめてしまった。
その時だった。
「――え?」
俺とキイラの前に、
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