第15話 彼の好きなところ



 ――学校からの帰り道。

 彼は駅方面まで自転車を押して、私はその隣を歩く。


 恋愛テスト期間中は自転車通学をしていたけど、普段は電車通学者。

 試練は本当に辛かった。彼は弱音を吐くことを目論んでいたと思うけど、私は最後まで負けずに踏ん張り続けた。あのときにチャンスを与えてもらったから、お互い心の距離が近づけたんだと思う。いまとなっては最高に素敵な思い出に。


「あのさ、質問があるんだけど」


 彼が珍しく赤面しながらそう言ったので、私は「ん、なぁに?」と顔を横に向ける。


「いまの俺のどんなところが好き?」

「えっ」

「この前は好きなところが三つ以上あったから、あれからもう少し増えたのかなぁ〜って」

「あはっ、あはははっ!! その通り! いっぱいあるよ。聞きたい?」

「ま、まぁな……」 


 彼はそう言うと、太陽のように真っ赤に頬を染めた。


 普段は生意気な口を叩いてるくせに、本当は最大級のかまってちゃん。

 彼が与えてきた試練を振り返れば、置き去りにしてしまった青春の穴埋めをするかのようだった。


 彼は人に興味がないわけじゃなくて、自分のことをしっかり見てほしい人。

 それは私も同じ。

 ミス城之内のマネキンじゃなくて、残念な中身もちゃんと見てほしい。


 だから私は、期待以上の好きを届けて彼の顔を恋の色に染めた。




【完】

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キミの言霊は恋の色を描く 伊咲 汐恩 @kazane20160208

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