第7話 冒険者ギルド

 ようやく目的地のアルヘイダに到着した。城壁に囲まれた街で禁忌の森に近い事から常に臨戦体制の街だ。


 道中盗賊に襲われている商人も居なければ、オークに襲われて居る貴族の娘も居ない、至って平和な旅だった。


 「身分証を提示してくれ」


 「田舎から出てきたばかりなのでありません」


 「そうか。ならこの水晶に手を置いて貰えるか?」


 門番が持ってきた水晶に手をかざす。水晶は、淡い光を放つ。


 「うむ。問題ないな。では、仮の身分証を渡しておくぞ。早めに何処かのギルドに所属しろよ。七日以内に新しい身分証を作ってくれ」


 漸く街の中に入れた。まずは冒険者ギルドに向かおう。


 「ふむ。見られておるのう」


 「そうだね。でも、これはどちらかと言えばユータに用があるみたいだけど?」


 「えっ!!俺?何で俺なんだろう?」


 「うーん?多分だけど君が持っている魔導銃が目的なのかな?」


 アルフィナ曰く魔道具は、誰にでも簡単に使える為昔から権力者や一流冒険者は、魔道具を集めているらしい。


 うーん。面倒事は勘弁して欲しい。でも流石に魔導銃を渡す事は出来ない。まあ、もし何か接触してくる様ならその時考えよう。


 「アルフィナ。その人物が俺たちに近づいて来たら分かる?」


 「それぐらい簡単だね」


 「じゃあ、もし俺たちに近づいて来たら教えてくれ」


 アルフィナが二つ返事で請け負ってくれる。監視者?はアルフィナに任せておけば大丈夫だろう。


 二本の剣が交差したマークの看板がある建物に着く。ここが冒険者ギルドだ。扉を開き中に入るとギルドに居る人からの視線が突き刺さる。


 「・・・ッ!!」


 殺気と値踏みが合わさった様な視線に一瞬躊躇する。大丈夫だ。何かあればアルフィナとリリスがいるしな。女の子に守られるのは情けないが、こればかりは仕方がない。異世界を旅してみたいとも思うが、無理をして命を落とすのだけはごめんだ。だから頼れるものは何でも頼る事にする。


 「本日はどの様なご用件でしょうか?」


 ギルドの受付の前まで行くとそう声をかけられた。


 「はい。冒険者登録に来たのですが」


 「では、此方に必要事項を記入してください」


 「名前は、ユータで良いな。職業はと、剣士?魔術師?うーん。どれもしっくりこないな。そうか!!マイホームを手に入れたんだし警備員に転職でもしようかな?」


 アルフィナとリリスは、どうなったかな?ちゃんと記入しているよね?


 これは、アルフィナのか?どれどれ。名前はアルフィナ。職業は、破滅の魔女。破滅の魔女は職業ではないよね?!


 「アルフィナ。流石にこれはダメだよ」


 「ぶー。仕方ない。僕は謙虚だからね。大賢者を名乗る事にするよ」


 「謙虚の意味!!魔術師ぐらいが良いと思うぞ?」


 「えー。それじゃあ威張れないじゃないか!!僕は、偉大な魔法使いなんだぞ!!まあ、実は魔術師で登録する為にもう一枚書いてあるけどね」


 アルフィナは、ピラピラと紙を振りながらイタズラが成功したのが嬉しいのかニコニコしている。


 はぁ、まあアルフィナはあれで良いとして、問題はリリスだよな。アルフィナは、確信犯であるがリリスは、素で抜けているからな。


 リリスの用紙に目を落とす。名前はリリス。職業はドラゴン。へー。ドラゴンって職業だったんだ。って違う。断じて違う。「じゃあドラゴンになって見てください」なんて言われたら、リリスなら間違いなくドラゴンの姿に戻るだろう。


 拳闘士にしておこう。リリスは、拳で闘うし丁度いいな。


 受付嬢さんは、用紙を確認するとカードを取り出し俺たちの前に置く。


 「では、此処に血を一滴垂らしてください」


 受付嬢さんの指示に従い血を一滴垂らす。カードに血が垂れると一瞬淡い光を放つ。


 「これで登録完了です。冒険者ギルドの説明は必要ですか?」


 「宜しくお願いします」


 「畏まりました。冒険者は、Gランク~Sランクの八段階があります。依頼は、同ランクと一つ上のランクまで受ける事が出来ます。ただし依頼失敗は、ペナルティが有りますので自分の実力にあった依頼を受ける事をお勧めします。Bランクになる為には、冒険者ギルドの試験に合格しなければなりません。ダンジョンは、ランク事に決められておりランクが足りない場合は、立ち入る事が出来ません。Cランクから指名依頼を受ける事が出来ます。同時にギルドからの緊急依頼もあり、こちらは断る事は出来ません」


 取り敢えず、ダンジョンに入る為にランクは上げた方が良さそうだな。でも、緊急依頼は、正直面倒臭そうだなぁ。そこら辺は、アルフィナたちと相談しよう。


 「他に聞きたい事はありますか?」


 受付嬢さんの質問に首を振って答える。


 「では、これから頑張ってくださいね」


 微笑みながら見送られる。流石ギルドの受付嬢さんだ。その微笑みにドキッとした。アルフィナがじとーと此方を見ているが無視だ。男なら美人さんに微笑まられたらドキドキするのだ!!


 冒険者ギルドを後にして次は、宿探しだ。正直宿に関しては、あまり期待していない。正確には、マイホームが快適過ぎるのだ。まあ、いざとなったらベッドでも召喚しようかな?


 「黒猫亭(ブラックキャット)」と言う宿屋に到着した。一階が食事処で二階が宿になっている。


 「いらっしゃいませ」


 八歳ぐらいの少女の元気な声が出迎えてくれる。


 「二部屋空いてますか?」


 「空いてます。お食事は付けますか?」


 「お願いします」


 「一日銅貨四枚だから・・・えっと三人で銅貨十枚?」


 「惜しい!!十二枚だね」


 「十二枚です!!」


 おお。言い直したよ。ドヤって顔しながら間違いを無かった事にしたよ。・・・女将さん。厨房から覗いてるの見えてますよ。パチパチじゃないです。我が子の成長を見守るのも良いですが計算は、しっかり教えましょうね。


 まあ、少女が頑張っている姿が微笑ましいのは分かりますが・・・。


 先程の冒険者ギルドで登録と一緒に素材の買取もお願いしていたので所持金は、沢山ある。


 アルフィナは、研究の為と称して手当たり次第素材を持って帰ってくるし、リリスは、ストレス発散と言って魔物を刈り尽くす勢いで討伐する為、素材も魔石もまだまだ大量にある。


 中には、世に出せない物もある。ドラゴンの素材とか。こんなのを出したら厄介事が目に見えている。それにアイテム袋に入らなかったし。今は、アルフィナが保管中だ。早めにアイテム袋のレベルも上げないといけないかな?


 懐から銅貨を取り出し少女に手渡す。一枚一枚数えている。その姿にホッコリしていると女将さんに部屋へと案内された。


 女将さんの話では、あの少女はシュナと言うらしい。シュナちゃんが受付に立っている理由は、客を見極める為らしい。この宿の親父さんは、元Aランク冒険者らしくもし、あのままお金を誤魔化そうとしていたら宿から叩き出されていたらしい。


 「そうならなくて良かったね」と笑いながら話してくれた。いや、何処の当たり屋だよ!!まあ、何事もなく良かった。本当に良かった・・・。いや、親父さんの方が叩き出される可能性が高いよ?


 リリスは、条件反射で殴っちゃうしアルフィナは、面白くなりそうな事は進んでやるからなぁ。


 夕食は、宿屋で食べる。異世界に来て初めての異世界らしい料理を楽しみにしていたが・・・。うん。素材の味が感じられるね。オークの肉にテンションが上がったが味付けは、香草と一緒に焼いただけ。スープは、塩の味が少しするかなぁーと言うぐらい。パンは黒パンでカチカチ。


 何でも胡椒は、一般には出回らないらしい。いずれ調味料が手に入ったら商売をしてみるのも良いかもしれない。まあその為には、リリスから冷蔵庫を取り返さないといけないだけんどね・・・。


 食後にプリンを食べているとじーと視線を感じる。シュナちゃんがプリンをガン見している。試しにプリンを左に動かすと左を向いて、右に動かすと右に向く。


 「シュナちゃん、食べてみる?」


 「食べる!!」


 リリスさんや、余りが一つある事を知っているんですぜ。それを早く渡しなさい。


 そんなこの世の終わりみたいな顔をしなくても。何故か罪悪感が・・・。幼女二人にじーと見つめられて嫌な汗が流れる。待て待て、リリスは見た目幼女なだけで実際は、この中で一番年上だ。言動は、一番幼かったりするけどな。


 「リリス。今日はアイスにしないか?」


 俺は切り札を切る。リリスのお陰?で冷蔵庫のレベルが上がり新たにアイスが追加されたのだ。


 「アイスとは何じゃ?美味いのか?」


 「ああ。プリンと同じくらい美味しいぞ」


 「それは嘘じゃな!!この世にプリンを超えるものはないのじゃ!!」


 リリスはプリン教にでも入信しているのか?まあ何はともあれ、アイスを一つ手渡す。


 「仕方ないのう。今日だけだぞ!!」


 シュナちゃんは、プリンとアイスを交互に見ている。おや?どちらにするか迷っているのかな?口をキュッと結んで真剣に悩んでいる。まあ、アイスは予備が沢山あるから良いんだけど。


 ここで、他の種類のプリンを出したらどうなるのか?とも思ったが流石にやらない。そもそもプリンの種類が無いからね。


 「あれ?僕のはないの?」


 幼女の姿になったアルフィナが目をうるうるさせながら聞いてくる。って何で幼女の姿なんだよ!!


 「いやー。ユータは、そういう趣味なのかなーって思ってね。僕なりの優しさだよー」


 軽口を叩くアルフィナにチョップをかましてやる。ぶーぶーと文句を垂れながらもしっかりとアイスを確保していた。


 プリンに決めたシュナちゃんを交え食後のデザートを堪能する。


 「美味しい!!」


 満面の笑顔でプリンを見せてくるシュナちゃん。知ってるよー。たんとお食べ。


 リリスは、まだぶつぶつと言っているが漸くアイスを食べるようだ。


 「美味いのじゃー!!」


 うん。知ってた。いつもの事だからな。

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