マイホームは異世界で〜異世界のマイホームは最強でした〜
@phantomlord
一章 異世界編
第1話 どうやら異世界らしい
朝の音を告げる目覚ましを止め、俺は、ベッドの中で伸びをする。時刻は、六時半を指している。欠伸をしながらベッドから抜け出し、顔を洗い眠気を覚ます。
朝食は、カップラーメンで簡単に済ませる。
いつもと変わらない朝。家の扉を開けるまでは・・・。
「えっ・・・?」
扉の先は、見渡す限りの森。獣の声も聞こえる様な気がする。
寝ぼけているのかと軽く頭を振り、もう一度前を見る。
「やっぱり森だよなぁ」
出て来たはずの玄関の扉は、無くなっている。
「いやいや。有り得ないから」
自分に言い聞かせながら、こう言う場合のお約束を呟く。
「ステータス」
俺の声に反応して、半透明の板が現れる。
「やっぱり異世界転移かよ!!」
暫くその事実に打ちひしがれていたが、ここが森の中である事に気づき慌ててステータスを確認する。
家守悠太 25歳 レベル1
魔力 E
力 F
素早さ F
回復 G
賢さ B
器用さ E
スキル
異世界言語
鑑定
マイホーム(ユニーク)
称号
迷い人
「えっ!何これ?弱くない?」
大抵こう言う時は、チートなスキルが貰えたりするのにそれがない。ステータスも軒並み低い。
あれ?これ詰んだ?異世界に来て早々詰み?
いやいやそれはない。・・・多分。取り敢えず不明なスキルを使ってみる事にする。
「マイホーム」
(マイホームは、動かす事が出来ません。この場所にマイホームを設置しますか?)
ステータス画面に確認画面が現れる。うーん?本来なら、もっとちゃんとした場所に設置するのが正しいのだろうが、今は仕方ない。そう割り切りイエスを押す。
地面に魔法陣が浮かび上がり、建物が召喚される。
召喚された建物は、プレハブに近いものだった。
入り口の先は、部屋が一つあるだけだ。ソファーと机、ロッカーがある。小さな冷蔵庫が隅に置いてあり、ベッドがある。
家の中に入り詳しく辺りを調べる。
「うん?これは何だ?」
鑑定を使い辺りを見るとソファーに特殊な効果がついている事が分かった。
ソファー レベル1
座っている限りリラックス効果が得られる。不壊(こわれず)。効果は、レベルに依存する。
ソファーに特殊な効果が付いているのなら、他の物にも特殊な効果が付いていないか確認する。
ロッカー レベル1
この中に入れた物は、異空間に収納される。異空間内は、時間経過がない。備え付けの袋でロッカーとやり取りができる。異空間の広さは、レベルに依存する。
冷蔵庫 レベル1
中に入っている食材を長期間保存できる。一日に一度異世界の食べ物が自動で追加される。追加される物は、レベルに依存する。
ベッド レベル1
安眠効果付き。ベッドで眠っている間あらゆる傷や病気を癒す事が出来る。癒しに係る時間は、レベルに依存する。
「取り敢えずは、こんな物か?」
確認を終え、ソファーに座り考え込む。住む場所は確保出来たが、問題は此処が異世界だという事だ。異世界に付き物の魔物などもいるかも知れない。しかし、今のところ鑑定とマイホームしか使えず戦闘には役に立たない。
「うーん?どうしたものか?」
暫く悩んでみたものの、解決策などある訳も無い。取り敢えず、マイホームの周辺を散策してみる。
「森ばっかりだなぁ」
マイホームの周辺は、深い森に覆われている。ここで迷ったら生きて帰って来れないかも・・・。いやいや大丈夫。そんなに離れないし。・・・大丈夫だよな?
「これも魔力草か」
鑑定を使い辺りを調べると、結構素材がある。まあ、その素材が価値があるのかどうか判断する事は出来ないんだが・・・。
使えそうな素材を片っ端からアイテム袋に収納して、一先ず散策を終了する。
マイホームの前でもう一度鑑定を使う。散策に行く時に気づいたのだが、マイホームの周りには、結界が張ってある。それが今も張られている事を確認して帰宅する。
結界 レベル1
マイホームの周囲を覆う結界。魔法的攻撃、物理的攻撃を完全に防ぐ。結界の大きさは、家レベルに依存する。
「遅いぞ。僕は、待ちくたびれてしまったではないか!!」
帰宅した俺は、ソファーでだらけている幼女を発見する。何だ。幼女か。幽霊かと思ってびっくりした!!・・・幼女?えっ誰?怖!!
俺は、ソファーで寛ぐ幼女の元へ足を進める。
ソルファスト王国のとある場所では、王が苛立たしげに部下の報告を聞いていた。
「以上の事を踏まえますと、此度の勇者召喚は、勇者の出現場所がずれたのではないかと」
「ほう?ズレたとな。してどうするつもりだ?勇者召喚は、そう簡単には出来ぬぞ?今回強行したのは、前回召喚した勇者を近々処分するからであろう?」
「召喚の特性上出現場所は、そう遠くは有りません。勇者を使って探させましょう。」
「そうじゃ!今回の勇者を見つけたら、余に手間をかけさせた事を後悔させる為に拷問にかけよう。あやつらは、神の加護でそう簡単には死なんからの!」
下卑た笑いをしながらまだ見ぬ勇者をどうするか考えている。しかし、彼は知らない。その勇者召喚で召喚されたのが家守悠太である事を。
彼の周りには、一人で一国を滅ぼせる魔女がいる。神をも殺せるドラゴンがいる。そして彼女たちは、家守悠太を気に入っている事を彼らは知らない。何より神々が怒っている事を・・・。ソルファスト王国は、風前の灯である。
神界では、女神が話していた。
「ソルファストでまた勇者召喚が行われた様です」
「ええ。こちらでも確認しています。何とかあの国に召喚される事だけは、防げましたがあの方には、迷惑をかけてしまいましたね」
「彼を何処に転移させたのですか?」
「禁忌の森です」
「・・・禁忌の森ですか!!」
「あら、あそこ程安全な場所は無いでしょう?」
「そっそれはそうですが・・・。」
女神は、空中に投影されている映像で世界の様子を見ながら、家守悠太の現在の状況に満足気に頷く。
「何か御座いましたか?」
「ふふふ。いえ、何でも有りません。それよりも家守悠太さんを出迎える為の準備をしないといけませんね」
女神は、家守悠太が神界に来る事を確信している様子で準備を進める。家守悠太が神界に来るのは、もう少し先の事。
僕は、百年前にこの場所に封印された魔女。人間って怖いよね?僕は、力を持っていたから色々な人間に狙われた。それが煩わしくなりこの森で静かに暮らしていたのに、権力者たちは僕を恐れた。・・・まあ、それは今はどうでも良い。それよりも問題がある。
「うーん?これは膨大な魔力だね。僕でもこれ程の魔力は持ってないよ」
僕が封印されていた場所の真上に、膨大な魔力の塊が現れた。その影響で僕の封印も解けたんだけど・・・。
「さてさて。一体何があったのかな?」
友好的な相手である事を願いながら、僕は目的の場所へと移動する。
暫く歩くと膨大な魔力を放っている場所の中心に来る。
「これは、家なのかな?」
そこにあったのは、簡易的に作られた家の様な物だった。
「アナライズ」
魔法を発動し目の前の家を解析する。
「成程。成長する家か!!これは面白い!!僕も初めて見るよ」
百年以上生きているが今まで見たことも無い物に、僕は興奮が抑えられない。これは、どうしてもこの家の持ち主に会わなければならない。
家の中も不思議な物で溢れかえっていた。全て魔道具になっているが、違和感が強い。元々は、魔道具ではなかった物を無理矢理魔道具に作り変えた。そんな感じだった。
「これは調べがいがありそうだね!!」
僕は、効果を調べる為にソファーに座る。
「ああ。これは最高だね」
説明通りリラックス効果がある様だ。僕がそのまま、ソファーで寛いでいるとこの家の住民が帰って来た。
見た目は、何処にでもいる青年だ。この様な家を持っているとは、到底思えない。いや、僕も人の事は言えないか。何せ百年以上生きても見た目は、十歳前後の少女にしか見えないのだから。
取り敢えず声をかけて反応を試してみようかな?ふふふ。それにしても楽しくなりそうだよ。
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