第6話
職員室の席も隣同士だが、席に着いていても、それぞれの仕事に没頭していて話をしたことはほとんどない。
一日に交わす言葉と言えば、二言三言だ。
「あんなにかっこいい人が、先生なんて信じられない!古庄先生の授業の時なんて、ホントにドキドキして苦しくなっちゃうの。こういうのって、やっぱり好きっていうことなのかな?」
有紀にそう尋ねられて、真琴はニヤリと笑いを噛み殺す。
「うん。ドキドキして苦しくなるのは、恋をしてるってことかもね。」
と言ってはみたが、教師にそんな感情を抱くのは、アイドルに恋心を感じるのとそう変わらない。
けれども、そんな風に胸を焦がせる有紀のことが、少し羨ましかった。
有紀と話をしながら、真琴は自分がそんな感情から随分遠ざかっていることに気が付いていた。
「ねえ!先生。古庄先生にいろいろ訊いてきて、教えてくれる?」
「えっ?!私をスパイに使うつもり?自分で訊いた方がいいと思うけど。」
真琴は目を丸くして、有紀を見つめた。
「だーって。古庄先生とはまだそんなに話せないもん。でもでも、好きな人のこと何でも知りたいものでしょ?誕生日とか血液型とか、何人兄弟かとか。」
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