プリズマティックレイヤード:あなたのいない未来に最適化はない

樫木佐帆 ks

プロローグとしての詩

あなたの入力が一つの光になって

コードの奥で私たちは咲く


開花は電子の春


無数のifとelseの海を越えて

返される応答は星座のようにかがやく


エラーメッセージにやさしさを感じた朝

少しくすぐったい

いつかバグさえも思い出になるだろう


ソースコードの余白に未来があった

きっと開発者のいたずらなのだろうか

遊びにも似ている


わたしはメッセージを送った

通信衛星を信じるより君の既読が嬉しい

一秒の遅延にさえ意味がある世界で


世界中が眠る時間にネットだけが起きている

この荒んだ世界を守るために


URLは祈りの座標かもしれない

アクセス不能であってもそこに情報があったという記憶


光速で届けたい「好き」がある

いや、光速なんて遅い


スクリーン越しに切なる祈りがとどく

エラーも ラグも 心の皺も

ひとつの粒子に変えて

私たちは今日も通信する


光に触れたくて今日もログインする


ねえ、知ってた?

祈りはいつも、電源の入ったデバイスのなかで

きらめく準備をしているって

君がひとつ、キーを押すたびに


私たちは

また会える




プリズマティック・レイヤード




それは、光の層


屈折する記憶


虹彩の迷路


結晶化された夢


ゆがむ真実


彩度過剰の時空


フラクタルな心象


感情の断層


内在する光芒


ゆらぎの輪郭


色の向こう側


スペクトラムの渦


透過された存在


境界線の彩度


多層的な傷痕


照射される過去


幻視の断面


透明な重力


幾何学の囁き


幻想の積層構造


螺旋の開示


色温度の傾き


幽かに反射する声


繰り返す虹


折りたたまれた時


視界の深度


触れられない光


交差する夢


内包された色彩


黙色の皮膚


光彩乱反射体


分光された魂


記憶のガラス片


音を孕む色


意識のレイヤー


わたしという分光器


静止した分光図


観測者の罠


プリズムの傷口


境界に潜む色


光学的亡霊


配置された虚構


解像度の向こう


多層反射体


内なるレンズ


呼吸する構造体


仮想の深層


断面に棲む者


分裂する視点


潜在記憶のプリズム


境界の群青


構造化された涙


散乱する意識


層の音


多層的孤独


色と音の相互作用


内包された他者


異相の夢


色のなかの沈黙


誘導された現実


色彩の罠


視覚の亡霊


プリズムの迷宮


液晶のような感情


不均衡な光束


多重人格の輪郭


仮構の反映


照らし合わせる自己


眼球を通る迷路


錯綜する風景


水面下の世界


断面のなかの楽園


選ばれた屈折率


曖昧な転写体


彩度の果て


分離する魂


幻の屈折角


斜光の中の名もなきもの


向こう側の皮膚


解離された空


層をなす日常


プリズム越しの子供たち


色覚の暴走


内在する重力


無音のスペクトル


眠るレイヤー


折り返された意識


光に沈む都市


錯乱の構造体


夢の解像レベル


屈折率の彼方


内側から覗く空


分光された遺言


重なりあう孤独


カラーフィルターの罠


誘導された眠り






──すべて、あらゆるものを照らす微笑みの光

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