be reborn
夜染 空
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白銀:*
黒翼:魔道翼大連隊と敵対している組織のリーダー。顔に大きな火傷の跡がある。黒翼は白銀と敵対するための名称。かつては良きライバル関係にあったが、ある事件をキッカケに対立することになる。本名はアッシュ
アンジュ:白銀の補佐官。グリードとは恋仲
グリード:アンジュの恋人にして大連隊副隊長 役人1と兼役
ローウェン:黒翼に心酔している。 役人2と兼役
0:敵陣営上空
アンジュ:「隊長、敵地周辺の防衛網はかなり厳重なようです…無策で突っ込めば死人が…」
白銀:「わかっている…こちらとしてもこれ以上戦力を削ぎたくない。」
グリード:「私が先攻して騒ぎを起こします、その隙に隊長たちが隊を率いて攻撃しては…」
白銀:「馬鹿か。それでお前が死んだらどうする。」
グリード「…で、ですが!」
白銀:「恋人を置いて死ぬような真似だけはするなと言っただろう」
グリード:「…」
アンジュ:「…隊長」
白銀:「しかしこのままでは戦況が動かない。なので、私が出る」
アンジュ:「え!?」
グリード:「そんな!ダメです!」
白銀:「何も問題ないだろう?私が出た方が都合が良い。それに、私が最大放出した魔力は他者に影響を与える。それを使うんだ」
アンジュ:「危険は、ないのですか…?」
グリード:「以前…最大放出した魔力が暴走したと伺ったことがあります……ご自身の身体にリスクを負ってまで敵地を攻めなくても!」
白銀:「あれは、私が白銀になる前の話だ。今は制御もできる。大丈夫だよ。」
アンジュ:「しかし!」
白銀:「アンジュ。」
白銀:「私は、大丈夫だよ」
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ローウェン:「アッシュ様ぁ…ハエが何匹か飛んできましたよぉ?落としますかぁ?」
黒翼:「放っておけ。どうせただの偵察だ。」
ローウェン:「でもでもぉ、陣営情報がバレちゃいますよォ?いいんですかァ?」
黒翼:「構わない」
ローウェン:「…?なんだか冷静ですねぇ?」
黒翼:「どうせ戦力を削ぎたくないとか甘っちょろいことを言っているに違いない。ならどうするか…出てくるのはアイツだ。」
ローウェン:「アイツ…?あぁ、白銀さまですかァ…」
黒翼:「そうだ。何せあの数だ…下を使って戦力を削ぐよりも、隊長自らが出て戦力を削いだ方が早い」
ローウェン:「でも、もし白銀様が出てこなかったら…?」
黒翼:「…その時は……」
0:
グリード:「隊長、強すぎる魔力は自身を殺します…どうか、お気をつけて…」
アンジュ:「隊長が出たら、すぐに私たちも後を追います。」
白銀:「阿呆め、すぐに出てきたら巻き添えを食らうだけだ。魔力探知ギリギリの所で待機、それ以上は出てくるな」
アンジュ:「…っ、わかりました」
グリード:「敵対組織がまさかここまで勢力を付けるとは思いませんでした…我々が力不足なばかりに…」
白銀:「グリード、我々個に備わる魔力量なんてものは、個の潜在能力が作り出すただの数字だ。適材適所だよ。先程も言ったが、今回は私が出る方が良いと言うだけだ。お前の出番だってちゃんとある。何せお前は、私より魔道撃の腕が良い。アンジュも回復で右に出る者はいない…お前たちに死なれては、私が困る」
アンジュ:「……っ!そう言って頂けて、こんな時ですが嬉しいです…」
グリード:「私もです…隊長、どうかお気をつけて!」
白銀:「あぁ。後でな」
0:
黒翼:「…白銀、白銀か…」
ローウェン:「どーしたんですぅ?」
黒翼:「いや、懐かしいことを思い出しただけだ」
ローウェン:「懐かしい?」
黒翼:「お前には、関係の無いことだ」
ローウェン:「なぁんだ…」
黒翼:「聞いても面白くもなんともない話だ」
ローウェン:「聞かせてください。って言ったら?」
黒翼:「…」
0:ゆっくりと口を開黒翼
黒翼:「あれは、私がまだこの組織をつくる前の事だ……」
0:過去
白銀:「(息切れしながら)はぁっ、はぁ…っ、やはり強いなアッシュ…」
黒翼:「馬鹿言え…手加減されたからイラついただけだ」
白銀:「手加減…?そんなモノした覚えはないぞ……はぁっ、お前との稽古が1番身体にくるな…」
黒翼:「グウェン、お前の魔力量はそんなものでは無いはずだ、なぜ本気を出さない」
白銀:「…知っていたのか」
黒翼:「当たり前だ。」
白銀:「……本気を出せば確かに私はこの国一の魔力量を持つ人間だ…だがな、そんなことをしてみろ?*
黒翼:「お前なら、余裕で白銀の称号を得るだろうな」
白銀:「いやだね…っと。なぁアッシュ」
黒翼:「なんだよ…」
白銀:「俺は、お前と強くなりたいんだ。大連隊の鳥になんてなりたくない」
黒翼:「……」
白銀:「お前が隣にいるから、俺は強くなれる。お前以上の師匠はいない。」
黒翼:「ゴマすっても何も出てこねぇぞ」
白銀:「本心だよ」
黒翼:「……気持ち悪ぃ」
黒翼:「でもまぁ……悪い気はしねぇかもな」
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ローウェン:「あれぇ???今はこーんなに嫌っているのに、随分と仲が良かったんですねぇ」
黒翼:「仲が良い…?馬鹿言うな」
ローウェン:「だってぇ!まさか白銀と昔から知り合いだったーなんて、今初めて知りましたよォ?どんな関係なんですかァ?」
黒翼:「…あいつは」
黒翼:「……っ!来た」
ローウェン:「…白銀ですかぃ?」
黒翼:「やはりヤツ1人だけで来たようだな……仲間は置いてきたのか、それとも後方で待機させているだけなのか…」
ローウェン:「見てきましょうかぁ?」
黒翼:「いや、こちらの数を把握しての事だろう、だとしたら………ぐっ!?」
ローウェン:「……っぐぅっ!!何だこの圧…」
黒翼:「魔力を放出している…防御魔法の重ねがけでもこれは意味が無い…!」
ローウェン:「なんつー重さ…こんな魔力…どうやって隠していやがるんだっ、ぐぁっ!!」
黒翼:「ローウェン!」
ローウェン:「(魔力に当てられて気絶する)」
黒翼:「ローウェンすら気絶するのか…やはりとんでもない魔力量だ…こんなもの、数でどうこうなるものではない…!」
黒翼:「……魔力が、弱まった…違う、抑えたのか…とにかく、これでは戦いにならない…」
ローウェン:「…ぅっ」
黒翼:「…!大丈夫か!」
ローウェン:「ひ、東から、魔力を感知…数は500……連隊の鳥がこちらに向かって…」
黒翼:「圧で弱らせた所を叩きに来たか……」
白銀:「聞こえるか!我は*
黒翼:「何を…今まさに殺そうと言わんばかりのプレッシャーを与えておきながら」
ローウェン:「気絶で済んでるやつは運がいい…何人か死にましたよ…俺ですらこのザマです……ふざけた隊長さまだァ…」
黒翼:「ちっ……全く、本当に…ふざけた魔力だ…」
白銀:「無益な争いはこれにて終了としよう!ケガをしている者、今の魔力に当てられ気絶した者はこちらで手厚く処置をする!……死んだ者が数名いるな…仕方ない…争いに犠牲は付き物だ。だが、こんな争いのために尊い命を散らすなど、これ以上あってはならない!」
黒翼:「よく言う…その魔力がどれほどのものかわかった上で放出していたくせにっ」
白銀:「もう一度言う!大人しく拘束されるのなら命は取らない!」
ローウェン:「どいつもこいつもあの魔力に当てられて戦意喪失してる……」
黒翼:「(舌打ち)」
白銀:「返事をすることも、体を動かすことも出来ないのか。なら、抵抗の意思が無いものとしてこちらで拘束させて頂こう」
(ほぼ同時に)
アンジュ:「隊長!」
グリード:「隊長!」
白銀:「アンジュ、意識がないものに回復魔法を。グリードは隊を率いて拘束魔法を。私は、頭に会いに行く」
アンジュ:「はい!」
グリード:「はい!」
ローウェン:「ここまで勢力を拡大するのに費やした時間が全部パーだ…」
黒翼:「一からやり直すのも無理そうだ…だが、これだけの存在感……抗いようのないプレッシャー…」
ローウェン:「抵抗すれば声も上げられずにあの世行き…仕方ない…大人しくしますかぁ」
黒翼:「ローウェン、お前は逃げろ。道は俺が作る。可能な限り気配を消してここから逃げるんだ。」
ローウェン:「…ご冗談をぉ」
黒翼:「お前まで捕まれば俺たちの悲願は果たされない。この国を、腐ったこの国の鳥共を落とすにはお前が必要だ。」
ローウェン:「……!」
黒翼:「行け!」
ローウェン:「アッシュ様…次会えた時は、夜を忘れるほどのキスをさせてくださいぃ……」
黒翼:「…俺が死んでなかったらな」
黒翼:「さぁ行け!」
0:ローウェンはその場から走り去る。そして入れ替わるように白銀が黒翼の前に現れる
白銀:「……逃がしたか」
黒翼:「なんの事だ?」
白銀:「とぼけるな。お前の側近、ローウェン・グラハムだ。」
黒翼:「知らねぇなぁ!そんな事より隊長様よ…どーしてくれるんだ。必死に集めた駒が使い物にならなくなっちまった」
白銀:「駒…駒…か。お前は仲間を使い捨ての道具のように言うんだな」
黒翼:「実際ここにいるのは、大連隊に恨みを持ち、尚且つ家族を奪われた連中だ。戦って死んだとしても、家族の元に行けるならと死に急ぐような馬鹿の集まり…駒と呼んで何が悪い。」
白銀:「可哀想だな。恨みだけが己を突き動かす力か……」
黒翼:「俺もお前も、似たようなものだろう」
白銀:「…こんな奴でも反国家組織のリーダー…だが、それだけの力がある。人を動かすだけの力が、お前にはあるんだな。俺にはそんなものは無い。白銀の称号だけが人を動かす力だ。」
白銀:「(長めの間)俺は、お前になりたかったよ……」
黒翼:「なら俺と来い…俺とお前には怒りに任せて鳥共を落とすだけの理由がある。俺と来い、グウェン」
白銀:「…断る。それでは何も変わらない…新たな犠牲を増やし、怒りと憎しみを生み出すだけだ」
黒翼:「だからお前は大連隊なんて言うくだらない組織に入ったのか…滑稽な話だな……」
白銀:「なんと言われようとも、俺は俺のやり方で……この国を変える」
0:強力な呪縛魔法を黒翼にかける
黒翼:「…っぐ!…仕方ない…大人しく捕まってやるか……」
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0:黒翼は捕縛。側近のローウェンは行方不明。
そして反乱分子の頭が収監されたことで国は平和を取り戻していた………。
そして時は3年後-
アンジュ:「…不気味なくらい大人しいですね…反逆者のトップがあんなに素直に投獄されたのにも驚きましたけど…」
グリード:「あの一件から連中は動きを見せない…と言うより、好き好んで国に反旗を翻すなんて大罪を犯すやつはいないだろう。奴に当てられていただけさ」
アンジュ:「まぁ、それもそうですけど…でも、ここ数年本当に何も動きがなくて、不気味というか…」
グリード:「何も起こらない…。いい事だ。俺たちの仕事も平和そのものだ」
アンジュ:「…はい」
グリード:「…さぁ、今日も仕事だ!」
アンジュ:「…はい!」
グリード:「まずは囚人の点呼、その後は各囚人の荷物検査、食事を挟んで隊長の仕事の手伝い!今日も働くぞ!」
アンジュ:「はい!」
(しばらくの間)
アンジュ:「囚人諸君!点呼の時間だ!」
グリード:「10秒以内に房から出ろ!素早く、迅速に!」
0:囚人が全て出ているかを歩きながら確認するアンジュ
0:しかしその足は、独房の一番奥、一際分暑い黒翼が居るはずの独房前でアンジュは足を止めた
アンジュ:「……」
アンジュ:「グ…グリード…!」
グリード:「おいおい、仕事の時はさんをつけろと…」
アンジュ:「黒翼が、居ません!!!」
0:グリードはアンジュを走らせ白銀にこの事を報告に向かわせた
アンジュ:「(荒い息)隊長!!」
白銀:「……?どうしたアンジュ、そんなに血相を変えて…それに今は囚人の点呼の時間だろう、何かあったのか?」
アンジュ:「…た、大変です…黒翼が、黒翼が、脱走しました!!」
白銀:「……!?」
アンジュ:「独房内に不自然な箇所は見当たらず……*
白銀:「…一体どうやって…いや、今は脱走方法を探るよりも、やつを見つけ出すことが先だ…グリードは!?」
アンジュ:「房に残っています、この事を、他の兵士には……」
白銀:「……隠しても隠し切れるものでは無い…国の大罪人が脱走したんだ、すぐに奴を探す!グリードと合流して探知魔法をフル展開するんだ!」
アンジュ:「はい!」
白銀:「M/まさか、脱走するとは…一体どうやった?やつ一人で出来る事などたかが知れている…内通者…この数年で怪しまれずに脱走するには……」
白銀:「ローウェンか……」
0:白銀は黒翼を探すべく苦虫を噛み潰したような顔をしながら部屋を出る
ローウェン:「上手く行きましたねぇアッシュ様ぁ」
黒翼:「お前のお陰さ、よくやった…どうだ?」
ローウェン:「数は以前の倍に膨れ上がりましたよぉ!」
黒翼:「お前は主導者の素質があるかもな」
ローウェン:「嫌ですねぇ、国に恨みがある人間なんてこの国には五万と居る…ちょっと揺さぶって怒りを煽っただけです…そしたら綺麗に…ね。」
黒翼:「それがお前の才能だ。誇れ。」
ローウェン:「(声にならない声)あ、ありがとう、ございますぅ!!!」
黒翼:「さて、やつは来るかな……」
ローウェン:「きっと来ますよ…だって、大罪人が逃げたんです。捕まえないと面子が立たないってもんでしょう??」
黒翼:「…そうだな」
0:
アンジュ:「東に65,000!微弱な魔道反応があります!数は2つ!」
白銀:「恐らく黒翼とローウェンだ!だが警戒しろ!周囲に反乱分子連中を潜ませているかもしれん!」
ローウェン:「た、隊長!速度が速すぎます!そのスピードを維持したら隊長がっ!」
白銀:「グリード、俺について来ようとして魔力切れになるのが怖いのならそれでも構わんがな!我々は大罪人を逃がしてしまったのだ!その責任が俺にはある!」
アンジュ:「……っ」
グリード:「隊長…」
白銀:「…(小声)…アイツは、俺の……!」
白銀:「…っ、俺は先に行く!お前達は魔力量を温存しながら索敵!敵が居ても殺すな!」
アンジュ:「は、はい!」
グリード:「はい!」
0:さらに速度を上げて先に進む白銀を目で追う2人
アンジュ:「……グリード…さっき隊長…私じゃなくて、俺って…」
グリード:「俺も驚いた…隊長があんなに焦る所を…」
アンジュ:「でも、今はそれどころじゃない…周囲を警戒しながら隊長のところに行かなきゃ!」
グリード:「そうだな、急ごう!」
0:2人もまた速度を上げて白銀を追う
0:間
0:国から離れた山間部、上空で対峙する白銀と黒翼
黒翼:「随分お早いお着きだなぁ、白銀様」
白銀:「黒翼…貴様、どうやって脱走した」
黒翼:「俺には優秀な部下がいてな。あと、兵士はしっかり教育しないとダメだぜ?仲間の顔を把握出来ていないやつを門番にするもんじゃない」
白銀:「…やはりローウェンか…」
黒翼:「そうだ。」
白銀:「お前の目的は、何も変わっていないんだな…力を行使し、従わせ、1つの国を滅ぼすための手段を暴力で叶えようとしている。」
黒翼:「それが一番手っ取り早い。お前だって本当はそうしたいんじゃないのか?」
白銀:「お前のような手段を取ったとして、その先に何がある」
黒翼:「何も無いな。何も。……だがそれがどうした!あの日俺たちの村は鳥共に消されたんだ!父さんも母さんも、何もかも、全て……全てを奪われたんだ!」
白銀:「…」
黒翼:「なのに何故お前はそこにいる…何故だ……」
白銀:「前にも言ったな…俺は俺のやり方で国を変えると。それが例え、全てを奪った組織だったとしても…外からではなく、内側から変えると……!犠牲は、少なからず出るだろう…だが、あの時の俺達のような思いをする人を…これ以上生み出したくは無いんだ」
黒翼:「綺麗事を…」
アンジュ:「隊長!」
黒翼:「(舌打ち)鬱陶しい鳥が増えたな…」
グリード:「隊長、周囲に前回を超える反乱分子が…っ!」
白銀:「…この数年で、また随分力をつけたんだな…さすがだよアッシュ」
グリード:「……アッシュ?」
アンジュ:「黒翼の名前?何故隊長が黒翼の名前を…」
黒翼:「…なんだ、お前は自分にも信頼する部下にも隠し事をしていたのか?可哀想な奴らだ…なら、これも知らないだろう…?」
0:顔に巻かれた包帯をゆっくり取る黒翼
黒翼:「……よく見ろ。お前たちの隊長が隠してきた、俺達の真実を…ッ!」
アンジュ:「……なっ!?」
グリード:「黒翼、お前……!」
アンジュ:「同じ…隊長と、同じ顔……」
グリード:「どういう事だ黒翼!なぜお前が隊長と同じ顔を…!!」
黒翼:「何故?なぜ…?不思議な質問をするんじゃない。俺と白銀は双子の兄弟だ!幼い頃この国の鳥に何もかもを奪われた、哀れな獣だ!」
アンジュ:「隊長……本当ですか…!」
白銀:「……」
アンジュ:「隊長っ!」
白銀:「事実だ。私達は……いや、俺はコイツの…アッシュの双子の兄だよ。」
グリード:「なぜ、今まで…なぜ何も言ってくださらなかったのですか!?」
白銀:「言って何になる!!!」
グリード:「……っ!」
白銀:「黒翼が俺の弟だと言えば、こいつの罪は軽くなったのか!?魔道翼大連隊隊長の弟だから罪を軽くする…そんな事……有り得るはずがないだろう!」
グリード:「しかしっ!知ると知らぬではやり方が変えられたかも知れない…!」
白銀:「何を変えるというのだ…何が変えられたというのだ……教えてくれグリード。大罪人黒翼は大連隊隊長の弟。この事実を知ってお前は何を変えるというのだ……!」
グリード:「そ、それは…」
白銀:「答えられないだろう……何も変わらないんだ…だから俺は内側からこの国を変えようとした。悪が生まれない国に…魔道翼大連隊が掲げる、くだらない思想ばかりが独り歩きする集団が必要なくなるように……!!!」
黒翼:「大連隊の思想を、お前達は知っているか?《全ての人々に幸福と繁栄を》だ…だが蓋を開けてみれば国家の上層部は私腹を肥やすために国民を扱き使う無能なブタ共…大連隊はそのブタ共の餌場を荒らさないように監視する鳥…。」
黒翼:「不思議に思ったことは無いか?この国の罪人が犯した刑の軽さよりも、それは重い制裁を全く関係ない所で受けている事を…なんの疑いもなくお前達がやってきた事の意味を」
アンジュ:「…制裁……?一体なんのことを言っているの…?」
黒翼:「はっ!おめでたい奴らだ!いいかよく聞け!1人の罪人の罪はその罪人が犯した村によって*
グリード:「……そんな…なら、俺達が今までやってきたことは……」
黒翼:「そうだ…俺達兄弟がその昔受けた、国をあげた制裁にお前たちは加担していたんだよ!何も知らされずにな!…お前達は…国家組織と言う名の、ただの人殺し集団だ」
アンジュ:「私たちがやってきたことは…反乱分子が生生まれる原因は……」
黒翼:「そうだ!これで分かったか!俺が大罪人になった理由が!」
白銀:「(小声)……内側からでは、もう何も変えられない
……」
白銀:「M/本当に国を変えたいのなら、アッシュと同じ方法を取るべきだった…だが、俺にはそんな度胸も覚悟もなかった…甘えていた…自分可愛さに…裁かれる恐怖に…だが、変わるべきは自分だった…覚悟を、見せられた……」
白銀:「M/お前のように行動出来ていたら、こんなにも自分が情けなくなることは無かっただろう…内側から変えると言いながら、その実何も出来ていない……ブタ共のための鳥……確かにそうだな。そのお通りだ。何も変えられなかった。だから、もう潮時だ。もういい。綺麗事はおしまいにしよう…」
白銀:「アッシュ…お前のように行動出来ていたらと心底思ったよ…俺は、お前になりたかった…だが理想ばかりを並べるのは終わりだ。」
アンジュ:「隊長…?」
0:無言でバッジを取り彼方に投げるアッシュ
グリード:「た、隊長!!」
白銀:「お前達、これでお別れだ。魔道翼大連隊隊長グウェンは、今日を持って死んだ」
グリード:「…なにを、仰っているのですか…貴方は我々の隊長です…」
アンジュ:「そうです!」
ローウェン:「本当にそうかぁ?」
アンジュ:「…!お前はっ……!」
黒翼:「…来たかローウェン」
ローウェン:「いやぁ、アッシュ様の早いの何のって…」
黒翼:「お前に戦闘は向かないからな。死なれても困る。」
ローウェン:「死ぬ時はアッシュ様と一緒に死にますよぉ、ちゃんと地獄の底までお供しますぅ!」
黒翼:「……ふん」
黒翼:「さて、白銀の称号を捨てて、お前はどうするグウェン。」
白銀:「俺は…」
グリード:「(割って入る)ダメです隊長!!」
アンジュ:「貴方は大連隊の隊長で、私達の尊敬する人です!大罪人になってはいけません!!」
グリード:「隊長がいなければ死んでいた兵士も大勢いる、救われた命があるんです!」
白銀:「……綺麗事だ」
アンジュ:「そんな事ない!!」
白銀:「なら、お前が変えるか?この国を」
アンジュ:「……っ」
白銀:「出来ないだろう?ただの小鳥には、何も」
白銀:「確かに俺はこの国を変えたい。だがな、上が腐れば下に侵食するんだ。だから、俺はその上を叩くために…」
0:ゆっくりとアッシュ側に着く
白銀:「俺は、こちら側になる」
黒翼:「……ようやくこちらに来たか。」
白銀:「あぁ。もっと早くこうするべきだった…いや、最初からこうするべきだったんだ。俺の甘えが無駄な時間を生み出した…」
黒翼:「今更だな……まぁ、歓迎するよグウェン」
白銀:「…だが、俺には俺のやり方がある。アッシュ、ローウェンを貸せ」
ローウェン:「お前の指図なんか(死んでも受けたくない)」
黒翼:「好きにしろ」
ローウェン:「アッシュさま…何故ですか!?」
黒翼:「こいつがどうやって国を落とすのか、興味がある。だから、協力してやれ」
ローウェン:「……アッシュさまがそう言うなら…。いいか白銀!俺はお前の言うことを聞くんじゃない、アッシュ様の言うことに従ったんだ!勘違いするなよ!!」
白銀:「俺はもう白銀ではない…」
0:ゆっくりとアンジュとグリードに近寄っていく
アンジュ:「……嘘だと、言ってください…」
白銀:「嘘で国が変わるか?」
グリード:「変えられることだってきっとあります……考え直してください隊長……!」
白銀:「考え?」
グリード:「そうです!大連隊は国のために飛ぶ鳥!民衆の意見を聞く力もある!それを上に持っていけば!」
白銀:「馬鹿かグリード。」
グリード:「……!?」
白銀:「その民衆の言葉を聞き流しているのが上だ」
ローウェン:「話を聞く限りでは、随分と悪どい事をやっているようだな…横領は日常茶飯事、賄賂も当たり前…極めつけは税の過徴収…どれだけ国民が働いても国がかっさらっちまう。それを違う方向から上手く隠しているんだ」
アンジュ:「…なぜ、お前がそんなことを知っているんだ」
ローウェン:「何故?簡単だよ、見て、聞いたからさ。」
グリード:「見ていた…お前、まさか!」
ローウェン:「そうさ、俺はお前たちの近くにいた。穴だらけの欠陥組織で助かったよ!潜入は堂々と入口から!兵士1人を味方につければなんでも出来た!お前達はそれに気付かず俺を探し回ってたんだ!」
アンジュ:「…なんて事」
ローウェン:「お前達が呑気に俺を探し回っている間、俺はブタ共の情報を集め、それを各地にばら蒔いた!そしたら憎悪は簡単に膨らんだよ!」
黒翼:「少しの情報と揺さぶり…それはどこをどう触るかで人間の感情に大きく左右する。憎悪を煽る事に関しては、俺より得意かもな」
白銀:「だからこその数…か」
アンジュ:「でたらめな…」
ローウェン:「でたらめぇ?ふざけるな!でたらめな言葉で人の憎悪は引き出せない!」
黒翼:「やめろ、ローウェン」
ローウェン:「……はい」
黒翼:「グウェン、こいつをどう使おうが勝手だがな、殺すなよ?これでもコイツは俺の右腕だ。」
白銀:「分かっているさ。」
0:ゆっくりとアンジュ、グリードに近づく
白銀:「さらばだ。そして、戻ってこう伝えろ。白銀は、地に落ちた…とな」
アンジュ:「隊長……」
グリード:「嘘だと、言ってください……!」
白銀:「お前達は実に優秀な部下だった…そして、優秀な、駒だったよ」
グリード:「……っ!」
アンジュ:「こ、ま……」
白銀:「そうだ。お前達は駒……ら何も知らない馬鹿な駒だよ。」
0:重力操作魔法で2人の動きを封じ、そのまま言葉を続ける
白銀:「俺はもう白銀では無い。大罪人グウェンだ。この場は殺さずにいてやる。追ってこようなどと言う馬鹿な真似をしたら…その時は殺す。そして、二度と、俺を隊長と呼ぶな」
グリード:「ぐっ、うご、けない…」
アンジュ:「うぅ、ぅっ」
白銀:「…行くぞアッシュ」
黒翼:「もういいのか?感動の別れだろ?」
白銀:「いらん世話だ」
黒翼:「冷たいねぇ」
白銀:「情など、バッジを捨てた時一緒に捨てたさ」
黒翼:「そうかい。ローウェンいくぞ」
ローウェン:「はい!」
白銀:「M/さらばだ、グリード、アンジュ…」
0:間
アンジュ:「M/魔導翼大連隊隊長グウェンの裏切りは、瞬く間に国中をさわがせる大事件となった。そして、先の大罪人アッシュと兄弟関係であることも…この事に対して、国民の誰もが納得のいく答えを出せない上層部は、火消しのため、それを口にした国民に重い罰を課した…隊長がいた時は、こんな事一度も起こらなかった…上のやり方を無理やり変えていたのか、独断で動いたからなのか…。国の在り方を…隊長は変えていたのに……」
アンジュ:「どうして、こうなってしまったんでしょう…」
グリード:「さぁな…」
アンジュ:「もう、会えないんですかね…」
グリード:「さぁな…」
アンジュ:「…ちょっとグリードさん、なんでさぁな。しか言わないんですか?」
グリード:「…なぁ、お前はどうしたら良いと思う?」
アンジュ:「…何がですか?」
グリード:「国民が少しずつ怒りをぶつけている…大なり小なりあるが、何よりもは隊長が消えたことだ。あの人がいたから、国は平和を保っていられたんだ」
アンジュ:「……確かに。」
グリード:「隊長がなんとか国としての均衡を保ってくれていた…それが今はどうだ…」
アンジュ:「連隊の*
グリード:「一気になだれ込むのは時間の問題だ…」
アンジュ:「でも、どうしたら…」
グリード:「…それを考えていたんだ…だが、何も浮かばなかった…」
アンジュ:「……」
グリード:「だってそうだろう?とうしようが上があれでは何も変わらない…余計な事をすれば首が飛ぶだけでは済まないかも知れない…お前に何かあったらと思うと…」
アンジュ:「……隊長も、同じだったんでしょうか…」
グリード:「…そうかもしれないし…違うかもしれない……」
アンジュ:「ここで考えても、同じですよね…」
グリード:「…そう、だな…」
ローウェン:「…辛気臭い面だなぁ、」
アンジュ:「……!?」
グリード:「誰だ!」
ローウェン:「誰だとは失礼な…俺だよぉ、ローウェンだ」
グリード:「何故ここに…」
アンジュ:「どうやって入ったの!?」
ローウェン:「欠陥組織って言っただろ?忘れたか?警備が雑すぎてちょっと変装しただけでここまでたどり着けるくらいには、ここは穴だらけなんだよ」
アンジュ:「……何を、しに来たの?」
ローウェン:「ちょっとした伝言だ」
グリード:「伝言?」
ローウェン:「グウェンからだ、よく聞け……。一週間後」
白銀:「(入れ替わるように)一週間後この国を落とす。だが国民に罪は無い。だから、可能な限り避難させろ。上に悟られるな。バレたら最後…その時はこの国の全てを滅ぼす。地獄に落ちる覚悟は出来ている。無能なブタ共は決して逃がすな。これは、警告であり、命令だ」
ローウェン:「だとさ」
グリード:「隊長は…」
アンジュ:「まだ、私達に命令して下さるんですね…」
ローウェン:「全くもって馬鹿な話だがな、これは事実だ。国民だけを逃がせ。だなんて、上手くいくわけが無い!」
グリード:「いいや、やってみせるさ」
アンジュ:「そうね、隊長の命令は、絶対だもの!」
ローウェン:「…俺は伝えたからな。精々グウェンに殺されないように動けよ」
0:ローウェン退場
アンジュ:「……行こう、時間が無い」
グリード:「…あぁ!」
0:間
白銀:「アイツらは、上手くやれるかな…」
黒翼:「全く甘い奴だ…潰すなら国民ごと潰せばいいのに」
白銀:「それではダメなんだよ。俺たちと同じ思いをする人を、これ以上増やしたくない…」
黒翼:「鳥から獣になったかと思えばまだそんなことを…」
白銀:「俺が落としたいのは上の馬鹿共だ……国民は関係ないだろう。」
黒翼:「…」
白銀:「なぁアッシュ…お前は今でも大連隊が憎いか?」
黒翼:「……」
白銀:「俺は嫌いじゃなかった…あんな組織でも、俺にとっては家族のような存在だった」
黒翼:「…お前の家族は、俺だけだろう…」
白銀:「…ふっ、何だよ。急に弟らしいことを言うじゃないか」
黒翼:「……うるせぇ」
白銀:「…そうだな…俺のかぞくは、お前だけだ。でもそれぐらい、俺は…特にグリードとアンジュは、まるで姉と兄のような存在だった」
黒翼:「これ以上兄弟が増えてたまるか」
白銀:「付き合ってみればいいヤツらだ。それに、あの二人は恋仲だ。」
黒翼:「…」
白銀:「俺はあの二人を信じて託した。だから、お前も信じろ。」
黒翼:「…何をだよ」
白銀:「……革命を」
0:1週間後
ローウェン:「…もぬけの殻…とまでは行かなかったんだな」
アンジュ:「当たり前よ、天変地異の前触れが起こるとか、敵国が攻めてくるとか…色んな言葉を使ったけど、それでも半分以上の人は残ってしまった」
ローウェン:「下手なんだよ」
グリード:「そんな言い方ないだろう!」
ローウェン:「あのなぁ、人間ってのはただ恐怖を与えたからって、はいそうですか。と言うことを聞く生き物じゃないんだ。」
グリード:「…なら、どうすれば良かったんだ」
アンジュ:「私たち二人にできることなんて、所詮この程度よ…」
ローウェン:「見せるんだ。災厄の前触れを、敵国の影を。認知しない物に恐怖は生まれない。ただの言葉に、形を載せるんだ。そうすれば説得力が生まれる。」
アンジュ:「…でも、私にはそんな力…」
ローウェン:「(深い溜息)嫌だ嫌だ……出来ないばかりを悔やんで成功するビジョンを浮かべないからそうなる」
グリード:「成功するビジョン…?」
ローウェン:「魔法なんてのは想像なんだよ。そりゃぁそいつの得意不得意はあるがな、ちょっとした幻影ぐらいなら誰でも扱えるんだよ。それに、魔力は個人の潜在能力そのものだ、やれると思えば勝手に引き出せるんだよ。勝手にセーブしてるだけなんだよお前らは!」
アンジュ:「でも、もう時間が…」
グリード:「国民の半数はまるで子供の虚言を相手にしているようで…まともに取り合ってくれなかったんだ」
ローウェン:「だから、形を見せるんだ」
0:空に向かって手をかざすローウェン、小さく呪文を呟くと、そこには無数の火の玉が現れる
ローウェン:「……これが形だ」
グリード:「…こんな事が……」
ローウェン:「これを使って大事な国民とやらをさっさと避難させろ。あと、お前らのどっちかが上のブタ共に催眠かなにかの魔法をかけとけ。」
アンジュ:「なら、私が」
グリード:「…俺は、避難誘導を!」
ローウェン:「早くしろ!」
0:上空、グウェンとアッシュ
白銀:「お前の右腕は本当に優秀だな」
黒翼:「何を今更」
白銀:「魔法をまるで子供のおもちゃのように…想像力は偉大だな。」
黒翼:「だから言っただろう、ちゃんと教育しろと。」
白銀:「全くだ。大連隊は個々の数値だけで判断していたからな…いくら俺が数値なんてただの飾りだと言っても、そこで自ら成長を止めてしまう。」
黒翼:「だから想像力なんて養えるはずがない。」
白銀:「耳が痛い話だ。俺がもっとしっかりしていればな…」
黒翼:「……」
白銀:「今日この日…この国は変わると思うか?」
黒翼:「馬鹿言え……変えるんだよ、俺達が」
白銀:「(一瞬呆気にとられた顔をして)そうだな、やろう、革命を!」
0:
アンジュ:「そうそう起きないように何重にも幻覚と睡眠をかけてきた!私の解除魔法がなければ起きないように強力に!」
ローウェン:「ふん!やれば出来るじゃないか」
アンジュ:「あんたはいちいち…でも、もう時間が無い、私も避難誘導に回るわ!」
ローウェン:「さっさと行け!軽々やってるように見えて結構キツいんだ!」
アンジュ:「……ありがとう!」
ローウェン:「…けっ!!」
0:アンジュ、グリードと合流
アンジュ:「グリード!」
グリード:「来たか!」
アンジュ:「避難状況は!?」
グリード:「見ての通りだ!人がごった返してとてもじゃないがスムーズな避難なんてできない!」
アンジュ:「誘導経路もままならないなんて…やっぱり私たちだけじゃ……」
グリード:「泣き言を言うな!!」
アンジュ:「(ハッとして顔を上げる)!!」
グリード:「俺達は託されたんだ!隊長に…グウェンに!」
アンジュ:「…そうだ、泣き言なんて言っていられない…私たちがやらなきゃ……!」
白銀:「そうだ。」
アンジュ:「…っ、隊…グウェン!」
白銀:「上のブタ共はどうした」
グリード:「ア、アンジュが…催眠と幻術魔法をかけてくれた」
白銀:「腐っても大連隊隊長についていただけの事はあるな」
アンジュ:「た……」
白銀:「(遮って)言ったはずだ。その呼び方をするなと」
アンジュ:「グウェン…」
白銀:「そうだ、それでいい。俺は大罪人。過去の肩書きは棄てたんだ」
白銀:「…で、どうしてまだ国民共が残っている?俺は全ての国民を避難させろと命令したはずだ。」
アンジュ:「無理に決まってる!あんな短い期間で全ての国民を避難だなんて…!」
白銀:「(圧をかけるように)俺は命令したはずだ。」
アンジュ:「…っ!!」
白銀:「強制誘導術」
アンジュ:「…え、」
白銀:「強制誘導術をかけろ。道はローウェンが作っている。術に抵抗するようなら幻惑術で無理やり道に乗せろ。そうすれば、あとはこちらの駒たちがなんとでもする」
アンジュ:「……グウェン」
白銀:「何をボサっとしている、早くやれ!」
アンジュ:「……はい!」
黒翼:「お優しいねぇ、グウェン」
白銀:「なんの事だ」
黒翼:「お前は、悪に染まるには向いていないよ」
白銀:「……知らんな、計画に支障が出ているから動かしただけだ」
黒翼:「それが、優しいんだよ」
白銀:「…」
0:グウェンが指示した強制誘導術の甲斐あって、国民は半日ほどの時間を費やし全て避難。
0:そして残された上層部の人間は、そんな事も知らずに眠っている
黒翼:「…これで、いいんだな?」
白銀:「……お前がそれを言うのか?」
黒翼:「俺たちの復讐は、これで、いいんだよな?」
白銀:「…そうだ」
0:アンジュの解除呪文で目を覚ます上層部
グリード:「(役人1)……なんだ、急に眠気が襲ってきて、我々は今まで何をしていたのだ…」
白銀:「よぉ、ブタ共」
ローウェン:「(役人2)…貴様は、白銀…いや、大罪人グウェン!!」
グリード:「(役人1)何をしに来たのだ!貴様は白銀の地位を捨て大罪人となったのだ!今更何を!!」
白銀:「何を?簡単だよ、復讐だ」
黒翼:「俺達の村を、家族を、全てを奪ったお前達に、地獄から悪魔が2匹、雁首揃えて乗り込みに来てやったのさ。ありがたく思え?」
ローウェン:「(役人2)ふざけるな!!我らはこの国を思えばこそ!1つの罪は全ての罪!この国を平和で豊かなものにするためには必要な事だ!」
黒翼:「だから、村ひとつ丸焼きにしても許されるってか?」
グリード:「(役人1)そうだ!国家安寧は必要悪の元に成り立つのだ!貴様ら羽虫がどれだけ飛び交おうが我らはそれをたたき落とすまで!」
ローウェン:「(役人2)我らの思想に意を唱える者は、何人たりとも活かしておかぬ!!」
白銀:「……だとよアッシュ」
黒翼:「全くもって胸糞悪い。こんな耳が腐りそうな演説を聞かされるとは思わなかった」
白銀:「馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、ここまで来るとは……こいつらはブタじゃなく、ウジ虫だったか」
黒翼:「だな、面倒だからさっさとやっちまおう」
白銀:「いや…」
0:懐から出した拳銃で役人を撃つ
グリード:「(役人1)ぐぅっ!!」
黒翼:「……また古風なモンを持ち出してきたな」
白銀:「一思いに殺すなんて誰がするか…こいつらは俺たちの家族を、全てを、何もかもを奪っておきながらのうのうと生きてきたゴミだ」
黒翼:「…そうだな」
0:白銀は冷酷な眼差しをしながら、役人2に向けて発砲
ローウェン:「(役人2)ぐぁぁ!!」
黒翼:「お前は、外面は良いが何かが外れるとこうだったな…」
白銀:「なんの事だ。」
黒翼:「手に負えなくなる」
白銀:「お前も望んだことだろう」
黒翼:「俺は、面倒な事は一気に片付けるタイプなんだ」
白銀:「そうだったな。」
黒翼:「だが、そろそろ国民の避難が完了した頃だ。もういいだろう」
白銀:「…あぁ、ここにいる馬鹿なゴミ共に慈悲などない。俺達が…いや、お前達が奪ったモノの代償の大きさを知れ」
0:深く息を吸う白銀と黒翼
白銀:「イフリート・フレア!」
黒翼:「デモンズ・フレア!」
0:2人の魔法により、国は一瞬で焦土と化した。
ローウェン:「(役人2)あ、あぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!」
グリード:「(役人1)た、助けてくれ!!熱い!!焼ける!身体がァァァァァァ!!!」
白銀:「言っただろう、慈悲は無いと。そのまま焼け死ね。」
黒翼:「お前達が奪ってきたモノの…その罪の重さを、命を持って知れ!」
0:炎に巻かれて役人は絶叫と共にのたうち回る。その最後を見ることなく、2人はその場を去る
0:間
ローウェン:「……綺麗に焼け野原……」
アンジュ:「とてつもない魔術ですね…」
グリード:「あんなモノ…国民を逃がしたのは、紛れもなく守る為の…」
ローウェン:「国民に罪は無い。あの二人は、ただ純粋に国を丸ごと潰し、ブタ共に復讐しただけだ」
アンジュ:「私たちは、何も知らずに……」
グリード:「……」
ローウェン:「やり直せばいい」
グリード:「ローウェン?」
ローウェン:「やり直せばいいだろう。国民は皆無事なんだ。グウェンに言われて、俺が用意した広大な土地がある。」
アンジュ:「用意…?何故……」
ローウェン:「グウェンはこちら側についた時から、そのつもりだったらしい。言ってたぞぉ…同じ轍は踏まない。国を新しく、今度こそ国民が豊かで、平和になるようにすると。そのためにお前たちの力が必要だったと。」
アンジュ:「…隊長っ」
グリード:「やはり、あの方は…俺達の隊長だ…!」
白銀:「その名で呼ぶなと何度言えばわかる」
黒翼:「慕われてるねぇ。さすが隊長様」
白銀:「アッシュ、お前もか……」
0:駆け寄って抱きつくアンジュとグリード
白銀:「……っ!?離れろお前たち!暑苦しい!」
グリード:「隊長!俺は一生貴方について行きます!!」
アンジュ:「私も!駒と呼ばれようが構いません!貴方のお傍に居させてください!」
白銀:「……(困った顔をしながら黒翼を見る)」
黒翼:「いいじゃねぇの。何だかんだコイツらだけは気にかけてたんだし?」
白銀:「…本当に駒として使うなら、あんな言い方はしないか……」
黒翼:「お前は本当に、お優しいねぇ」
0:数年後。
白銀:「(演説)長きに渡る悪政は滅びた!そして我らは新たな国家を築き今ここから歩み始めるのだ!ここまで来るのにたくさんの時間を使った…強引に民を連れ去りこの地に留め、苦労もさせてしまった…だが、それはあの腐った国を潰すため……!にも関わらず、民は受け入れてくれた!信じてくれた!何をお返しすれば良いか…ずっと考えてきた…だが、情けない事に…私の軽い頭では全ての民に返せるものなど思いつかなかった……だからこそ約束しよう!!同じ轍は踏まない!あの国が掲げた思想を今度こそ現実のものにすると!(きいく深呼吸)…今ここに、新国家の誕生と、第一代国王戴冠を宣言する!」
0:少し後ろから
黒翼:「気合い入ってんなぁ」
ローウェン:「そりゃぁねぇ…おーさまになるんですから」
黒翼:「まさか、本当に国を変えるはな…文字通り丸ごと。何もかも変えちまったよアイツ」
ローウェン:「…で、どーするんですかァ?アッシュさまぁ」
黒翼:「…どーするもこーするも…俺はアイツの弟だ。それに、もういがみ合う必要は無い。」
ローウェン:「……ってことは??」
黒翼:「ここで、アイツと暮らすさ」
ローウェン:「…それぇ、俺も一緒にいいですかぁ?」
黒翼:「……当たり前だ…お前は俺の右腕だろう」
ローウェン:「……アッシュさまぁぁぁぁ!!」
アンジュ:「相変わらず賑やかね、ローウェン」
ローウェン:「…なんだよ!邪魔すんな!」
グリード:「良いじゃないか、めでたい日だ。」
黒翼:「そう言えばお前達、結婚したんだってな」
グリード:「なっ!」
アンジュ:「ちょっとアッシュ、誰から聞いたの!?」
黒翼:「誰って、グウェンからに決まっているだろう」
ローウェン:「人がせっせと働いている時に結婚ですかァ!呑気なもんですねぇ!!どーぞお幸せに!」
黒翼:「……拗ねてるのか?」
ローウェン:「ち、違いますよぉ!」
アンジュ:「…あー…ついでに言うと…ね」
グリード:「…ん?なんだアンジュ」
アンジュ:「子供が、出来たの…」
グリード:「……」
ローウェン:「……」
黒翼:「(笑いながら)…はっ」
グリード:「アンジュ!ダメだ!休め!!頼むから安静にしてくれ!!」
ローウェン:「妊婦がこんなところで何やってんだ!!さっさと家に帰れ!!」
アンジュ:「…ふふっ、何だかんだグリードとローウェン、兄弟みたい!」
グリード:「冗談を言っている場合じゃない!頼む!お腹の子に何かあったら困る!頼むから家に帰ろう!!」
ローウェン:「そうだ!さっさと帰れ!そして仕事も休め!!全部グリードに押付けて楽しろ!!」
アンジュ:「それは出来ないなぁ!もうグウェン様にはギリギリまで働くって言ってあるし!」
黒翼:「言ったら聞かない女は面倒だぞ。好きにさせてやれ」
ローウェン:「そんなの俺が代わりに受け持ってやるから!!」
アンジュ:「…やっぱり、ローウェンは優しいわね」
ローウェン:「…う、ううるせぇ!」
アンジュ:「ふふっ!」
白銀:「M/後ろから聞こえる仲間の声が妙に心地良い。この心地良さを全ての国民に与えられるように…俺は、俺のできる全てをこの国に捧げるんだ。」
白銀:「さぁ、新しい時代の幕開けだ!!!」
END
be reborn 夜染 空 @_Yazome_
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