【連載強制終了】カメラが写した真実――それは本当に事実か、否か

第1話 妻が消えた

俺は40にして、愛妻を失った。原因は不明。手がかりがあまりにもないってんで、警察はほとんど俺の手伝いをしてくれずにこの事件は終わった。


あの日、あの夜。俺は、いつも通り妻のなごみと楽しくお喋りしていた。

本当に他愛もない話。

今日も職場の上司がうざかったーとか、残業したくなくて全集中して仕事を終わらせてきたから疲れたーとか、子どもほしいねーとか、今日アイス買ってきたよーとか。


俺達の家庭は、俺が専業主夫で、なごみが会社勤めという感じだ。


なごみは大体8時に家を出て、18時に帰宅する。俺はその間に、洗濯物、掃除、飯作りをして、愛妻を待つ。


あの日だって、いつものルーティンをしながら過ごしていた。

だが、残業しているにしても帰りが遅かった。

さすがに心配になったが、上司に怒られているとか、踏切につかまっているとか、交通渋滞とかの関係で車が全然動かないとかなら、気長に待っていれば必ず帰ってくるとか思っていた。


夕飯が冷めてもなごみは帰ってこない。さすがにおかしい。

とりあえず、なごみの会社に電話をしよう。


俺は家の固定電話をとり、会社の電話番号を入力し、電話をかける。

3コール目で誰かが応答した。


『お電話ありがとうございます。東陽株式会社総務部の石井です。』


そう言って石井さんを名乗る、恐らく、女性が電話に出た。


「すみません、そちらに斎藤なごみはいらっしゃいますか?」


なごみの旧姓は内山だが、俺と結婚しているので斎藤なごみだ。


『斎藤ですね。しばらくお待ち下さい。』


そう言って通話は保留モードになった。

1分ほど経ったであろうか。石井さんが、「お待たせいたしました」と言って戻ってきた。


『斎藤ですが、本日は定時上がりされています。』


…なに?定時上がりだと?そんなばかな。じゃあなんで今なごみは家にいないんだ?


「そう…ですか。ありがとうございます。失礼します。」


俺はそう言って固定電話を指定の位置に戻す。


どうしよう。俺は今どうするべきなのか。でも、もしかしたらスーパーとかコンビニとか少し寄り道をしているのかもしれない。


更には、なごみはスマホを気にしない人が故に充電をし忘れることがあるから、充電がなくなって連絡の手段がないのかもしれない。


もう少し待ってみるのも一つの手だ。俺は、もうしばらく待っていることにした。


・・・・


ピピッピピッピピッ


「ん…」


これは…アラームの音か?俺は寝てしまっていたのか…


目を開けると、カーテンから朝日が溢れていた。いい天気だ。

あ、そうだ。俺はなごみの帰りを待っていたんだ。

多分、俺が寝てしまったから起こさないでおいてくれたのだろう。

だとしたらなごみは寝室にいるはずだ。


椅子から体を起こし、台所横の寝室の扉を開ける。


「なごみー。朝だから起き…なごみ?」


ベッドがまるで、客を迎えるホテルのベッドかのように整えられている。触ってみると、とても冷たい。到底、なごみが寝ていたとは思えない温度だ。


「まさか…」


なごみは昨夜から帰っていない…?


ピーンポーン


インターホンが鳴った。ドアスコープを見てみると、二人の警察官がドアの前に立っていた。この流れで警察は怖すぎる。そんなことはないであってほしい。


俺がドアを開けると、警察は警察手帳を俺に見せ、事情を説明した。


昨夜、なごみが道路の真ん中で、血を流しながら亡くなっていたとのことだった。


今一番聞きたくない話だった。


警察は俺に事情聴取をし、約30分で家から出ていった。


信じられない。どうしてだ。警察が言うには、今原因を調査しているとのことだった。


俺が人生で初めて愛した人。その人は原因不明とかいう簡単な言葉で命を落とした。俺はその犯人を絶対に許さない。いや、まだ犯人がいるとは確定していない。だが、少なくとも血を流しているのだから、他殺だろう。


「くそ…どうして…!!!」


俺はこの日から明け暮れていた。そして、警察からの連絡は滞り、挙句の果てには音沙汰もなくなった。俺は見捨てられたのだろうか。


俺は家中を探し、懐かしいものを見つけた。14歳のときに母さんに頼み込んで買ってもらったデジタルカメラ。俺は幼少期、カメラマンになるのが夢だった。


「まだ撮れるかな。」


一か八かでカメラを起動しようとしたが、画面が光らない。経年劣化だろうか。


「新しいの買うか…。」


確か、なごみと行こうとしていた海外旅行に向けての貯金があったはず。

惜しいが、使うところがないので使ってしまおう。

明日、電気屋さんにでも行こうか。

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