第七話 夏季休暇 と 報告会
ペルーから帰国し、家に帰り着くなり、ラグの上に気絶するように寝てしまい、起きると帰国から二日経っていた。
スマホを手に取り、電源を入れてみるが電池切れ。片付けもしていない荷物の中から充電器を探しコンセントに差しスマホを充電する。五分くらい放置して、電源を入れてみると、シオンからすごい数のメッセージと着信があることを知ると同時に、シオンから着信が入った。
通話ボタンを押すと、聞こえてきた割れた音声。
「もし……! ……キ! ……る!?」
正直言って何を言っているのかわからない。
「シオン、落ち着いて。音割れて何て言ってるかわかんない」
「あ、ごめん。とりあえず、生きてて良かった」
「え、なに? 私、死んでることになってんの?」
「だってアキ、帰国から二日間、電話に出ないし、メッセージも返ってこない。心配もするに決まってんでしょ」
「ごめん、ごめん。帰ってきて早々に寝落ちてさっきまで寝てた」
「まじか」
「マジだ」
「なら、明日、アキん家行く」
「は、なんで?」
「なんでって、アキ一人で報告書書けるの? 宿泊時の同室の者と一緒に報告書作成だけど、アキが一人で書いてくれるなら私めっちゃ楽だなー」
「あ、報告書あるの忘れてた。シオン、一緒にやろう」
「なら、今日中にペルーへ行ってた時の荷物片づけといてよ」
このあと、いつもならグダグダ他事探しして後回しにするのが私だけれど、シオンと明日約束してしまった以上やらないわけにはいかず、洗濯から始めて途中で昼食をはさみながら丸一日かかって片づけた。
翌朝、シオンを迎え入れ、調査報告書を書いていた。
報告書には、調査に行った国の特徴、調査内容、調査参加中の自己評価を書く欄があり、ワークショップを受けて得たペルーの文化、インカ帝国について、調査方法や掘り出し物の扱いなどを具体的に書いていく。
自己評価の欄は、基本的にはどんなことでも書いていいらしく、私は体調を崩したこと、その原因などを書きながら自己評価を行った。
書いた報告書は、帰国より一週間後、九月二十日の報告会で報告及び提出をすることになっている。
そして、報告書を書くついでに、現地調査で得た情報をレポートのほうにも書けるよう、なるべく詳細にまとめることした。しかし、思うように進まず、書き終えるまでの間はシオンが家へ泊まることになった。
報告会当日。
調査期間が短かった学生から報告発表が始まった。
調査期間は二週間、三週間、四週間の三グループがあり、一グループ内の発表順は学科学籍番号順だった。私たちは一番最後のグループで、一番最後だった。最初は人の発表を聞いているだけなので不安や心配事はなかったが、順番が近づくにつれて、不安も大きくなり、シオンに話しかけてしまう。
「シオン、どうしよう。うまく話せるかなぁ」
「アキ、私も。心臓バクバクいってる」
普段の講義中のレポート発表などではめったに緊張しないシオンまで緊張している様子だった。
自分たちの番が来て、教壇に上がると司会進行を務める角崎さんから紹介が入る。緊張はピークに達していて、角崎さんからの紹介が終わり次第、報告をすることになっている。しかし瞬時に声が出ず、助けを求めるために見たシオンのほうも辛そうだった。それが緊張を緩和させたのか、そのあとはスムーズに声が出て、報告を始めた。
私が報告を始められるようになったことが大きかったのか、報告内容の後半はシオンが頑張ってくれて、他の学生よりも時間を使ってしまったが、報告を終えた。
報告会が終わり大学からの帰り道、シオンへのお礼もかねて夕食を食べ行こうと誘って、ちょっと(?)学生からするとかなり(?)金額の張る食事を食べに行った。
食事を終え、レジにて清算するときにシオンも払うと言ってくれたが、それではお礼にならないと何とか財布をしまってもらい、二人の食事代金2万ほどを支払ってお店を出た。
報告会の翌日からは残り一週間となってしまった夏季休暇を謳歌するべく、シオンと水族館へ行ったり、遠出をして一泊二日でDランドへ行ったり存分に楽しんだ。
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