思い出と未来

 地球組に捜査が入り、あらゆる真実が解明された。ゆうきの推理がほとんど当たっていた。地球組の設立者であるこうきは、高校中退後、地球組の起ち上げを開始したという。その背景には、テストの結果のみで計ってきた両親の憎しみと世界への憎しみが考えられた。しかし、本当のところは、ゆうきが推理していた、憎んでいた両親を殺めてしまったことへの懺悔のためだった。こうきが高校中退してまもなく、家の庭にガソリンを撒いて、火を放った。その日の出来事を忘れられずにいて、善行のみの世界を作り上げることを目的とした地球組を開設することで、懺悔を目論んだ。

「それが真実ってわけか」

 すっかり風邪も治ったゆうきが、新聞を読んで納得した。

「あながち、あんたの推理も間違ってなかったわね」

「ああ? 俺はただ、思いつきで言っただけだよ」

「は?」

「俺はな、常に思いつきで行動するからな」

「なによそれ?」

 呆れた。

「ところで姉ちゃん。転職先どうなんだよ?」

「ええ? ああもう大変よ。年配の女性だらけで、陰で人の悪口言ってるとこ聞くのなんて日常茶飯事で。前はこういうことなかったのになあって思うことがある」

「へえ」

「でも、そんなの無視すればいいわ。得意な料理ができるんだから!」

 まいは、営業をやめて、給食センターで調理場の仕事に転職した。元々料理が得意だった彼女は、ようやく手に職をつけたと、満足げの様子だった。

「あかねちゃんは一人暮らしを始めて、バイオリン教室を開いたんだって」

「そっか。調子崩さないようにしないとな」

「だから、たまに私の家でご飯食べさせてあげることにしたのよ……」

「え、あいつ飯作れないの?」

「そうよ。だから、一人暮らしっていうのも、私の隣部屋なのよ!」 

 呆れた様子で、まいが答えた。

「はええ」

「あんたも早く稼いで、あかねちゃんといっしょに暮らせるようにして!」

「ちょっ。俺とあかねはそういう関係じゃねえよ!」

 ゆうきは照れた。

「さーてと。俺も行くか」

「え、あんたいつの間に仕事始めたの?」

「違うよ」

「じゃあ、なにを始めたの?」

 立ち上がり、ゆうきは答えた。

「自動車学校。免許取って、運転手になるんだ!」

『俺、大きくなったら運転手になるんだ』

 と、ゆうき。

『なんで?』

 こうきが聞く。

『だってさ、運転手になれば、遠くに行けるようになるじゃん。俺、遠くに行くの好きだからよ!』

 まいはほほ笑み、言った。

「ファイト!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大人になったまいとゆかいな仲間たち みまちよしお @shezo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ