とりあえず実作してみる。揺らぎ駆動
前回の例題『次郎の冒険』について、実作をシミュレーションして、三層コンフリクト法の使い方を説明します。
まずは、コンフリクト設計の確認から!
▼ストーリー
優しい小学生の次郎は飼い猫の『トム』を飼っている。
兄ちゃんの『太郎』は強気な中学生。
ある日、猫のトムが木に登ってから降りられなくなった!
次郎は外出している兄に電話で相談すると「お前が木に登って、降ろしてやれ」という。
次郎はどうする??
▼コンフリクト設計
自己:次郎は「トムを助けたい」「でも木に登るのが怖い」という葛藤
他者:兄の太郎から「お前がやれ」と急かされる
世界:トムは怖がっていていまにも落ちてしまいそう
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結末:次郎はトムを救う
▼執筆
ここから執筆していきます。前回にも挙げた以下に注意します。
(必ずしもこう書かなくても問題ないと思いますが、僕の場合は以下のようにすると、三層コンフリクト法を活かせるようです)
・キャラの好きなように動かす
・セリフは現実みたいに曖昧に揺らぐ(小説的なセリフにしない)
・無理に話を進めずキャラにまかせる
こうすると、三層コンフリクト法特有の、『揺らぎながらストーリーが深まってゆく』という感覚がわかってくると思います。
また、クライマックスについては、『過程の揺らぎと葛藤のエネルギーが全て一点に集約』するため、爆縮的なエネルギーが発生します。(意味不明かもですが……)
▼作例
今回の次郎の話ではありませんが、僕の作品の引用をしてみます。三層コンフリクト法による、揺らぎ駆動の感覚が伝わると思います。
この序盤ではあまり揺らぎが激しくないですが、基本的に主人公やキャラクターは、プロットを無視して本音を喋らせます。
揺らいで葛藤する中で、ストーリーが進んでいくのです。
セリフは整理しすぎず、現実ぽい言葉で書くようにしています。(……とか、そうか、まあね、とかの間が異様に多く、言い切らない。このあたりは作風にもよると思いますが)
滅びの国の魔女紀行 より
https://kakuyomu.jp/works/16818093089601697918
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メイナは布にくるまって壁に背をあずけ、暖炉の火を見ていた。ささくれだった木の床に、壊れたテーブルや椅子の影が落ちていた。
横にいるリティは言った。
「意外と、すくないねえ」
メイナは聞き返した。
「なにが? 木の実炒め?」
「ちがう。骨とかが」
「え? 骨?」
「うん。みんな、いっきに凍えてしまったとしたら、もっとそのへんに、さ。落ちていてもいいよねえ」
「あー。そうだね」
「もしかしたら……」
そこでリティは、あくびをしてから続けた。
「人々は、避難したんだろうねえ」
「避難?」
「そう。ラーニクの町の人々と同じように、伝承のとおり北の聖地に。それか、暖かい場所へ。そこで、誰かが生きているかも」
「えー。でもさー。暖かい場所って。南だとしたら、海の向こうってこと? ここより南って……」
「そうか……」
リティはしばらく床を見つめた。目が眠そうだった。暖炉から火のはぜる音がしたあと、またリティが言った。
「北へ、行ったんだろうねえ……」
「北、か。やっぱり、聖地ファナスへ」
「そうね……。氷の、みなもとの、女神ミュートの……。誰かが、きっと、生きて…………」
すると、リティの声は寝息に変わった。しばらくメイナは、リティの細い眉毛と、そこにかかる銀色の髪が、呼吸とともに静かに動くのを見ていた。メイナはつぶやく。
「きっと、生きているひとが、いるよ、リティ……」
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この揺らぎと曖昧感、なかなかおもしろいと思いませんか 笑
通常 物語のセリフ。主にストーリー進行
三層 現実のセリフ。揺らぎも作る
このような役割や演出の違いがあります。
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