第19話 脳筋になって寝取られちゃえばよくない?





「……また、雨咲君に恥ずかしい姿見せちゃった」



【ヒロインヒール】後。

 西園寺は顔を真っ赤にし、羞恥心で悶えていた。



「いやいや。全然恥ずかしがることないから」


 

 立派だった。

 とても立派にエッチだったんだから。

 

 これからも西園寺のエッチな姿、どんどん見せてくれてもいいんですよ?

   

 

「むぅ~!」


 

 だが俺のフォローでも、全然納得してくれていないご様子。 

 西園寺はねるように、プクッと赤い頬を膨らませる。

 子供っぽい仕草を見せる西園寺も新鮮で、これまた可愛らしい。


 あ゛ぁ~西園寺成分ヒカリウム美味うめぇぇ!!

  

 

 その後。

 可愛くいじけちゃった西園寺のご機嫌を何とか取って、【従者果実】の採取をさせてもらう。

  


「……雨咲君。これ、何回やっても恥ずかしいのは恥ずかしいんだからね?」 

 


 と、恥じらいを含んだ上目遣いで言われた。



 ……危ねぇ危ねぇ。

 雨咲君の雨咲君が、危うく雨咲君の雨咲さんになるところだった。


 ……いや、ちょっと自分でも何言ってるかはわかりませんね。      


 

 今回の【従者果実】で、ようやく【マジックショット】のゲージバーが半分を超える。

 約6割ほど貯まっただろうか。

 

【ヒロインヒール】のゲージバーは、2割行ったか行ってないかくらいだ。

 やはりスキルを0から習得する場合よりも、習得済みスキルのレベルを上げる方が必要な経験点は多いらしい。


 そして〈調教 果実1〉【調教ポイント 経験点20】のおかげで、また今日も調教ポイントが20ポイント貯まった。


 


[従者果実 収穫画面]


 保有調教ポイント:210


西園寺さいおんじ耀ひかり 果実一覧


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 〈ジョブ 果実2〉【セカンドジョブ 経験点小】 

  必要調教ポイント:200 収穫日数:1日

   

 〈ジョブ 果実3〉【ヒロインヒール 経験点小】 

  必要調教ポイント:100 収穫日数:1日

 →収穫まで残り23:55:32


 〈調教 果実1〉【調教ポイント 経験点20】 

  必要調教ポイント:50 収穫日数:1日 

 →収穫まで残り23:55:32  


― ― ― ― ―



 “保有調教ポイント”が200に乗った。

 これで【セカンドジョブ 経験点小】の果実を収穫できるようになる。



『おめでとうございます! 現在ある、すべての果実を収穫可能な状態――“全穫”状態にしました。全穫状態の間、得られる経験点が倍になります』 



 再びすべての果実を収穫可能な状態、すなわち“全穫状態”にしたことで、経験点が2倍に。

【セカンドジョブ】以外は今日すでに収穫済みのため、その恩恵は明日以降となる。

 

 


「収穫を、もう1回? もちろんいいけど……うぅ~恥ずかしい」 



【セカンドジョブ 経験点小】の果実収穫を伝えると、西園寺は恥ずかしさで若干涙目に。


 手ブラするように胸に両手を当て。

 ウルウルとこちらを見上げてくる姿は、庇護欲をこれでもかと刺激してきた。

 あ゛ぁ、可愛がわいぃ~!!

     

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

[ステータス]

●基礎情報


 名前:雨咲あめざき颯翔はやと

 年齢:17歳 

 性別:男性

 ジョブ1:ヒロインテイマーLv.2 

 ジョブ2:―― New!!    


●スキル

【調教】

  ■調教スキル     

  【テイム】

  【調教ツリー】

  【従者果実】 

  【調教才能Lv.1】 

  【ヒロインヒールLv.1】


【マジックショットLv.1】 

【セカンドジョブ】 New!!  



  

 ちゃんと“基礎情報”と“スキル”の欄に、それぞれ【セカンドジョブ】が反映されていた。

 特に“基礎情報”の方は、取得したばかりだからか空欄になっている。

“ジョブ2:――”をタッチすると、小さな別画面が現れた。

 

 

『“ジョブ2”のジョブを選択できます。以下のジョブから選んでください』




[ジョブ2 候補ジョブ]


 1 戦士

 2 弓使い

 3 盗賊 

 4 魔法使い

 5 神官


― ― ― ― ―


 この5つから選ぶらしい。

 すでに【マジックショット】と【ヒロインヒール】が使える今、魔法系統のジョブにそこまで魅力は感じない。

      

【神官】である西園寺との兼ね合いを考えると。

 後衛職っぽい【弓使い】も避けたかった。


 となると消去法で【戦士】か【盗賊】。

 遊撃よりも、前衛っぽい前衛の方がいいか……。



『“ジョブ2”に【戦士】を選択します。よろしいですか? はい/いいえ』 

 


 選択を確定。

【戦士】のジョブを習得した。


 

[ステータス]

●基礎情報


 名前:雨咲あめざき颯翔はやと

 年齢:17歳 

 性別:男性

 ジョブ1:ヒロインテイマーLv.2 

 ジョブ2:戦士Lv.1 New!!    

 

●能力値


 Lv.3

 HP:12/12→17/17(12+5) New!! 

 MP:12/12 

 筋力:7→12(7+5)New!!

 耐久:5

 魔力:7  

 魔耐:5

 敏捷:5

 器用:5


※+5:【戦士】補正


●スキル

【調教】

  ■調教スキル     

  【テイム】

  【調教ツリー】

  【従者果実】 

  【調教才能Lv.1】 

  【ヒロインヒールLv.1】


【マジックショットLv.1】 

【セカンドジョブ】   

【強撃Lv.1】 New!!



 2つ目のジョブを得た効果が顕著に表れていた。

 ステータスの能力値も補正が入ってるし、スキル【強撃】だって習得できている。


 ただ【従者果実】の恩恵も、今のところHPや筋力などの成長が目立つ。

 立派にゴリラ街道まっしぐらだ。


 クソッ。

 俺はゴリラになりたいんじゃない、不労所得生活をしたいだけなのに。

 これが“西園寺耀 陽キャ化け物計画”をくわだてたむくいだというのか。

 

 だが、もう俺は【戦士ゴリラ】を選んでしまったんだ。



 ……【セカンドジョブ】で選べるのは一つだけだってわかっていたのに……なんでもっと【盗賊】を知ろうと思わなかったんだろう。

 

 

 1000年以上生きたエルフが、仲間の勇者の死に接して感じた悲しみ。

 それに似た悲壮感がグッと押し寄せてくるぜ……。

 

   

◆ ◆ ◆ ◆



 翌日の土曜日。

 昨日は頑張ったため、午前は惰眠だみんをむさぼることに。


 ここ最近はずっとダンジョン続きだったからなぁ~。

 何もせず布団でゴロゴロ過ごすことが、とても癒しに感じる。


 あぁ~決めた。

 俺、もう布団と結婚するわ。

 一生布団に養ってもらおう。

  

 異性との青春とか、甘酸っぱい学生生活とか、もうどうでもいいんだ。

 布団さえいれば、もう何もいらない。


 これが真実の愛だと、ようやく気付けたよ。

 ありがとう、布団。

 愛してるよ、布団。



「……んっ? なんだ?」



 俺が布団と愛し合っていると、スマホがメッセージの着信を告げる。

 まるで俺たちの仲を引き裂こうとするかのような、狙ったとしか思えないタイミングだった。


 ……誰だよ。

 まだ9時半だぞ?

 

    

『西園寺:雨咲君、おはよう!』 

  


 西園寺からだった。


 ……って、そりゃそうか。

 家族以外で連絡先に登録されてる相手なんて、西園寺以外いないしね。

   


『昨日は改めてありがとう! まだFランクになれた感動の余韻よいんが続いてるよ……。お母さんなんて、泣いて喜んじゃってたし』



 じーんとした顔の絵や、涙を流し喜ぶ絵が適所に使われていた。

 毎度お礼の文をちゃんと入れてくるところに、西園寺の律儀さみたいなのを感じる。


 

『――それで、今日は13時に集合だったよね? でも雨咲君さえよければ、少し早めに集まってお昼、一緒にどうかな? Eランクダンジョン初挑戦の作戦会議もかねて』



 なんだって?

 これから布団と、二度寝という名の第2回戦を楽しもうとしていたんだが。

 

 

『……えっと。いきなりでごめんね? せっかくだから雨咲君と一緒にお昼、食べたくなっちゃって。用事があったりしたら遠慮なく断ってくれて大丈夫だからね!』



 ――スマン、布団よ。俺、ちょっと西園寺に寝取られてくるわ。



 長く身近で育んだ絆よりも、一週間で芽生えた男女間の関係。 


 ごめんね布団。

 でももう俺、あの人の主人になっちゃったから。

 あの人の可愛さを知っちゃったら、もう元には戻れない……。  

 

 ……うん。

 何を言ってるんでしょうね、俺は。



 返事を送ると、西園寺からすぐに反応が返ってくる。



『よかった……。雨咲君とお昼、凄く楽しみ! じゃあまたあとでね』                 



 ニッコリ笑顔の絵文字を眺めつつ、モゾモゾと布団から抜け出る。

 ベッドに腰掛け、伸びをしてから立ち上がった。


 さて……起きるか。



 そうして準備を進め、予定より早めに家を出たのだった。



――――

あとがき

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