第8話 保憲編 呆気ない終わり

保憲は倒れた昴の体をながめながら、肩の傷の止血しけつ応急処置おうきゅうしょちをした。



クゥー 


心配そうに旭が近づいてくる


あさひの後から山城やまじ随行ずいこうする



保憲は片膝かたひざを付き、旭を抱きしめた。


とても大事なのがそのかた一つで見て取れる


頭をでてやっり 頬擦ほおずりする



保憲「あぁ 旭 無事でよかった」



旭も返り血で汚れた保憲の顔を舐めた



山城「言いたい事は山ほどあるが

   

   こんなめちゃくちゃな計画があるか!


   私が遅れてたら旭もお前も死んでたぞ」



保憲「山城が遅れるなんて微塵みじんも思わなかったよ」


山城「絶大ぜつだい信頼しんらいはいらん! 重い 困る」



幸子(何時も見ている保憲とは全然違う)


幸子はよろよろと通路の真ん中にでてきた。


保憲は幸子を見た



保憲「1人で逃げてもらっても良かったけど


   今となってはこれが正解かも


   廊下ろうか鉢合はちあわせしても面倒めんどうだし」



足音がする



岸郎「昴 旭が逃げた 生きてさえいればいい


   つかまえろ」



部屋の入り口に立ち 中を見る


その惨事さんじ一瞬いっしゅん 思考しこうが付いてこない


岸郎はゆっくりとすみから隅まで見回みまわした


あららされた部屋の中 一点いってん釘付くぎずけになる


血溜ちだまりに落ちた鳥のミイラだった。



岸郎はソレ以外目に入らないのか


通路の真ん中に立っている幸子を 


視界しかいさえぎ障害物しょうがいぶつとして邪魔じゃまだと言わんばかりに


手でぎ払った。



幸子は倒れたが一切いっさいにもめず


保憲の横も通りすぎてミイラにった



血溜まりの中 先程の山城の炎で半分焼けたソレを


丁寧ていねいに拾い上げると保憲をにらみつけた


岸郎「織姫様になんて事するんだ


   保憲 貴様 この罰当たりが!!!


   ここまでおろかだと 生かす価値かちもない


   大事な物とそうで無い物の違いも分からんのか」



岸郎は銃を取り出した



保憲は幸子を後ろ手に庇う



六発全弾発射されたが保憲はおすう数枚でふせいで見せた



岸郎「お前 術は使えないはずじゃなかったのか



保憲「そんな事一言も言ってないよ」



岸郎が近くにあった昴の折れた刀を拾い上げ


保憲に斬りかかる。


悪人の最後の悪あがきらしい



「ゴミむし以下いかくせに 誰が化け物に育ててやった

 

 とおもってる」 



保憲も、はらわたが煮えかえる思いで


「化け物に育ててくれ何て言ってないぞ!


 人を道具どうぐみたいに お前の全てが嫌いなんだよ


 さっさと死にさらせ」



保憲は幸子に見えないように岸郎の首を落とした


幸子は髪に液滴えきてきが付くのを感じた



保憲「誰がゴミ蟲以下だ


   そんな事 分かってるんだよ


   クソっ こんなあっさり殺してやる


   予定じゃ無かったのに


   おまえはこんな楽な死に方して許される奴じゃない」



保憲は刀の血を払いのけると刀をさやおさめた



なるべく後が見えない様に幸子の前にしゃがみ込み


幸子に手を差し伸べたが



恐怖きょうふで涙する幸子



保憲は自分の血だらけの手を見る


返り血でドロドロの服 殺人現場特有の


血と生き物の匂い 



保憲は幸子の姿を見て気付いた事はあるが


その事には触れなかった。



出した手を引き下げ 立ち上がりマントで血を拭った


保憲「立てる? 直ぐに此処からでないと」



幸子は保憲を見上げるだけで答えなかった



保憲(腰を抜かしいるのか)



保憲はすこぶる嫌そうな顔をしたが


ため息一つ 幸子の額にお札を


バチンッ


幸子「痛」



保憲「土木用どぼくのおふだ 流石さすがに幸子さんは運ぶには重すぎる 


   ソレでも今の僕のじゅつじゃ5分の一くらいの重さにしかならないよ」



保憲「僕 かた痛いから幸子さんも自分でしがみついてよ」



幸子は保憲を見た


幸子(心臓が痛い 身体が熱い)


恥ずかしいそうにするだけで動こうとしない




保憲は暴れたら殺すという顔して


無理むり矢理やりに幸子を抱き上げた


苦痛くつうで小さなうめき声がれる




保憲「山城 盛大せいだいに燃して」



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