覇情(はじょう)

夢楽亭 六瓜

第1話 保憲編 学校

和子かずこ「あの人かっこいいね どこの家の人かしら?」



美智子みちこ「知らないの?國破大臣くにばだいじんのご子息しそくよ」



咲恵さきえ「國破って幸子さん遠い親戚しんせきに当たるのでは?


   知り合いでしたよね 今度 紹介しょうかいしてくださいな」



幸子は皆がカッコイイと言っている殿方とのがた


かつての許嫁いいなずけであるのがほこらしいようなくやしいような気持ちでいた。



幸子「国破保憲くにばやすのりさんです 許嫁なんです」



すこし見栄みえを張りたいがためにうそをついた。


これぐらいのうそなら父にたのめば本当になるくらいに考えていた。



咲恵「何だ、すで婚約済こんやくみですか 残念ざんねん



女学生が見ているのは


陸軍士官学校りくぐんしかんがっこう模擬戦闘訓練もぎせんとうくんれんだ。



保憲やすのりは自分の苛立いらだちをこの模擬戦闘訓練の相手ではららすことにした


一班六人、が八組で一人の装備そうびはペイント弾6発が入った拳銃けんじゅう2丁


ペイントナイフ 一本 


切ったりしたり怪我けがはしないが血のりがべっとりつく仕様の


高性能こうせいのうおもちゃだ 負けた班が全員ぶんの制服を洗うそういう決まりだ。





この学校にいる生徒は全てこの国の政治家せいじか有力者ゆうりょくや息子しそく


こんな事になったのは校長が乱心らんしんしたせいだ



突然とつぜん全校集会ぜんこうしゅうかいで校長が


日進月歩にっしんげっぽ しんと」唱えだし


これまた突然の男女共学宣言だんじょきょうがくせんげんをした。


頭がおかしくなったので無ければ、弱味を握られおどされでもしたのだろう



男女共学宣言の直後、銃弾じゅうだんが校長の横をかすめた。


みな有力者の息子達だ各々ここ信念しんねんも考えもある。


大和男子やまとだんしとして育てられた子息ばかり、こんな納得なっとくのいかない話があるか



(男女7つにして席を同じょうせず)


昨日まで教えらた道徳どうとくが校長の都合つごうで変わるわけもなし


しかし決めてしまえばくつがえせないこの国のいやなところだ。


学生の怒りはおさままらない。



護衛ごえいに守られ、震えながら校長は当初の計画ではなかった公約こうやくを盛り込み


「理科室、図書館、礼法室 作るのに資金のいる設備を交代で使い後は別の学舎」


と言い残し逃げていった。それ以来見ていない。



保憲(バカか?ここは陸軍士官学校だぞ!なんで


女学生の見せ物にならねばならないのか?


思いだすだけでも腹立たしい)



保憲は目の前の仮想敵かそうてきを見ながらそんな事を思っていた。


「國破さえ抑えれば まだ勝機しょうきもある とりあえずは ここは共闘きょうとうして國破の班を グフっ」



軽い身のこなしで提案者ていあんしゃ顔面がんめん


膝蹴ひざげりりを喰らわせ、心臓の後に グサリと血のりを付けた。


一回転して着地ちゃくち衝撃しょうげきを抑え


間髪かんぱつ入れず周りにいた4〜5人の首元に敗者はいしゃの血のりが付く



それを見て他の班もおくしている



「すげ〜 先祖せんぞ猿なんじゃね? 人間があんな動きできるか?」



「まあ…みんな先祖は猿だろ 頑張るしかない」



少年2人がのろのろと保憲に突っ込もうとした矢先


教官きょうかんの声でみなとまった。



「ヤメ! 國破 お前は次から参加しなくていい


 お前ら 今日はここまでだ。倒れた奴を運んだら 次の授業の準備でもしてろ」



学生「教官 陰陽術おんみょうじゅつの使用ありにしてもらえませんか?

   これはあまりにも國破くんに有利じゃありませんか」  



教官「陰陽術の勝負がしたいなら、陰陽術の教官に言え! 解散」



突如とつじょ湧いてでた休憩時間に倒れていない生徒は喜んだ。



「なぁ 保憲 ちょっと数学のノートかしてくよ昨日宿題できなくてさ」



保憲「いつもできてねえじゃん」



そんな会話をしながら学生たちは運動場をあとにした。



放課後


清治「保憲 野球してから帰らないか?」



保憲「ワルイ! オレ 軍用犬の訓練入ってるから」



清治「そっか言ってたもんな、お前 犬と一緒に


   居られる所がいいからこの学校に来たんだっけ」



保憲は夕焼けの校舎を去る清治を見つめていた。


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