冬の醍醐味

月兎アリス/月兎愛麗絲@後宮奇芸師

「世界で一番、大っ嫌いだ!」

「げっ」


 学校内を移動中。

 廊下で「あいつ」を見かけて、吾輩わがはいは思わず顔をしかめる。


「どうしたの?」


 友人の莉花りかが顔をのぞむ。吾輩はため息をついて、ひそひそ声で話した。


「……吾輩さ、あれ、大大大っ嫌いなんよ」

「えー!? なんでなんで!?」


 吾輩は、あいつの嫌いなところを約三個ほど挙げた。風評被害にならないように、だいぶ減らした方である。


「……そっかぁ……」

「もうね、吾輩がこーんな小さい時から、大大大っ嫌いなわけ!」


 このほか、さまざまな愚痴をこぼした。

 ……付き合わせてしまった莉花に感謝すると共に、申し訳なかったと謝りたい。



 * * *



 四時間目が終わった後、机に置かれたあいつを見て、また顔を顰める。

 試しに一口だけ……。


「白皮……クソまずい……!」


 吾輩は、橙色で、中に白皮のある、給食でお馴染みの果物が、大っ嫌いだ。

 世界で一番、大っ嫌いだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

冬の醍醐味 月兎アリス/月兎愛麗絲@後宮奇芸師 @gj55gjmd

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ