第49話 今カノの家族計画
「え? あ、あの……はは、そんな事して良いわけ? 俺がホテル入ってるところバラしたら、一緒だった由乃さんもタダじゃ済まないんだが?」
奈々子の脅しに冷や汗を掻いたが、落ち着け……学校に知られたら俺も確かにヤバイけど、由乃さんの方が立場上まずいはず。
だって、そうだよな?
大学生が高校生をホテルに連れ込んだって、かなりアレだよね?
犯罪的な行為じゃんか。
「へえ、そういう事、言うんだ。彼女であるはずのお姉ちゃんを守ろうともせずに、逆に盾にとるなんて。どんだけ、性根が腐ってるのよあんた」
「う、うるさい。とにかく、由乃さんを無理矢理ホテルに連れ込んだりはしていないからな。嘘だと思うなら、本人に聞いてみればいい」
「お姉ちゃんに聞いたって、あんたを庇うに決まっているじゃない! ああ、あんたの面をみたら、それだけで気分悪くなってきたわ!」
「あ、おい」
地団駄を踏みながら、そう叫んだ奈々子は俺の元から立ち去ってしまった。
まいったなあ……やっかいな事になってしまったが、どうするか?
至急、由乃さんに相談するしかないか。下手すりゃ俺も停学になりかねんからな。
「あ、由乃さん。今、いいですか?」
「どうしたの?」
「あのですね……奈々子に俺達がその……ホテルに入った所、見られていたらしくて……」
家に帰った後、すぐに由乃さんに電話をし、小声で奈々子にホテルに一緒に入ったことを盾に脅されていることを告げると、
『なーんだ、そんなこと。奈々子もしょうがない子ね』
「そんな事って……あの、学校にバレると、俺結構ヤバイんで……」
『ふふ、大丈夫よ。それより、陸翔。期末試験は明後日までだっけ? 終わったら会えない? その日、ちょうど午後、休講になったし』
「え……ああ、はい」
『じゃあ、明後日ね。学校終わったら、私の家の前に来てくれる?』
「由乃さんの家ですか? 奈々子は……」
『大丈夫よ。奈々子の事も話したいから。それじゃ』
と、試験が終わったすぐ会う約束をして、由乃さんは電話を切ってしまった。
奈々子の事は大丈夫だって言っていたが……不安はあったけど、今は由乃さんに任せるしかないか。
「では、終了です。後ろから答案を回収してください」
ようやく試験の全日程が終了し、ホッと息を付く。
奈々子の事は気になったが、今の所、先生からも何も言われてないので、由乃さんが何とかしてくれたんかな。
「ねえ、奈々子。これから打ち上げ行かない?」
「うん、いいよ。何処に行く?」
どうやら、奈々子は友達と打ち上げに行くっぽいので、あいつに邪魔される心配はなさそうだな。
由乃さんも自宅に年下彼氏を連れ込むとか、大胆な行動をしてくるよな……まあ、今日は試験も終わったし、少しは羽目を外してもいいか。
「あ、よく来たわね。ちょっと外で待っていて」
「え? あ、はい」
由乃さんの家に行き呼び鈴を鳴らすと、由乃さんは外に出て、車庫の方に向かう。
もしかして車に乗って何処かに行くのか? しばらくすると車庫から由乃さんが運転しら白の乗用車が出てきて、俺の前に停まる。
「乗って。今日は車で出かけよう」
「あ、はい」
免許持っていたのか……まあ、大学生だから当然か。
由乃さんに言われて助手席に座ると、車を発進させていった。
「この車、お母さんのだけど、今日ちょっと貸してもらったの」
「そうだったんですか。免許持っていたんですね」
「えへへ、やっと初心者マーク外れたばっかりだけどね。ちょっと遠出するけど良い?」
「いいですけど、何処に行くんです?」
「ちょっと二人で落ち着ける場所にね」
「はあ……」
二人で落ち着ける場所っていうと、公園とかか?
まさかまたラブホ直行とかじゃないだろうなと心配になったが、それにしても運転している由乃さんも結構決まっているな。
やっぱり、こうしてみると大人の女性だよなー……俺より三つ上だけど、この年齢差はやっぱり大きいなあ。
「あれから、奈々子に何か言われた?」
「え? いえ、別に何も」
「そう。奈々子にはちゃんと言っておいたから、平気よ。陸翔の事、困らせたら、めってね」
「は、はあ……どうも」
めって、子供じゃないんだからさ……やっぱり、奈々子には甘々だな……。
姉妹だからってのはあるんだろうけど、俺に対して、数々の暴言や暴行を働いている元カノな訳で、もうちょっと厳しくしてほしいなーって思っているんだけど。
「ちょっとここで休憩しようか」
「ん? ここって……」
かなり郊外の方まで走り、塀に囲まれた怪しげな四階建ての建物に到着し駐車場に入っていったが、もしかして……。
「あのー、由乃さん。今、俺制服なんですけど……」
「大丈夫よ、夏服でしょう。半袖のYシャツなら、会社員にも見えるから」
いやいや、そういう問題じゃなくてさ……人の話を聞いてなかったのかな?
「心配なら、Tシャツ持ってきたから、それに着替えて」
「いやー、あのですね。今日は……んっ!」
「んんっ、んん……」
奈々子の事について話そうかなって思っていたのに、またホテルに連れ込まれてしまったので、ちょっと待ってくれと言おうとした所で、由乃さんがエンジンを切った後、俺に急にキスをしてきた。
「んっ、んんーー……んっ、はあ……ねえ、陸翔。試験終わった打ち上げに、私としようよー」
「あ、あのですね……今、学校の帰りでして……」
「あら、前に学校の帰りにホテルに連れ込もうとしていなかった?」
う……今、それを掘り返してきますか。
やっぱり怒っているのかな……だったら、そう言って欲しいんだけど。
「私を孕ませるって言っていたのに、随分としおらしくなったのね。くす、そういう所も奈々子みたい」
「は? 奈々子みたいって?」
「昔ね。奈々子がよくイタズラしていて、溜まらず私がきつく叱った事があるの。その後、大泣きしながら、私に謝ってきて……それから、よしよしって頭を撫でながら、私もゴメンって謝ったんだけど、それから、奈々子も私の言う事をよく聞くようになってねー。今の陸翔の顔、その時の奈々子の顔にそっくり。怯えた子犬みたいで可愛いわ♡」
そういう事が……奈々子は由乃さんが好きというよりは頭が上がらない感じなのか?
今の俺も由乃さんにはすっかり頭が上がらなくなっているけど、このままだと一生尻に敷かれかねない。
「ねえ、子供欲しくないの?」
「い、いえ……今はちょっと……」
「ふーん。私も早いかなって思ったんだけど、よく考えたら、ウチのお母さん、二十三歳で私を産んだのよね。お父さんはお母さんより五つ上だけど、今の私と殆ど変わらないじゃない?」
「はあ……」
随分と若く産んだなと思ったが、今の由乃さんと変わらないって……。
「だから、私がお母さんより一年か二年早く妊娠しても、ウチの両親怒らないと思うのよ。私は今年で二十歳で、来年は二十一じゃない? だから、いいよ」
「はい?」
由乃さんは俺の手をぎゅっと握り、
「今、陸翔の子供作ってもいいよ」
「…………」
頬を赤らめながら、笑顔でそう迫ってきた彼女の言葉を聞いて固まってしまう。
えっと……本気で言っている? 嘘だよね?
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