第43話 今カノの豹変
「あ、あの〜〜……由乃さん。えっと、これはその……?」
「二人でゆっくり話したくて。陸翔君、ここ行きたかったんでしょ? なら、何でそんな顔しているの?」
「いえ、嫌なわけではないというか……」
そりゃ二人でラブホに行きたいって考えてはいたが、まさか、由乃さんの方からここに連れ込んでくるとは思いもしなかったので、どういう風の吹き回しかと困惑してるんだが、由乃さんは俺の腕を組んで、体をぎゅっと密着させていき、あからさまに誘ってるような素振りを見せていた。
「陸翔君、私の事、抱きたくないの?」
「いえ、抱きたくないわけでは……」
「奈々子がさ、陸翔君は私のこと、体目的だから、止めておいた方が良いって言ってたの。陸翔君も私のこと、七割ぐらいはそういう目で見ているって言ってたよね? それが本当なら、私の事、ここですぐ抱けるんじゃない?」
「あー、はは……そんな事、言ってましたっけ」
言ったのは確かだけど、あれはフザケて言ってたわけでしてね……。
まあ、最近は確かに由乃さんとやりたい気持ちが行き過ぎて、我を忘れかけていたけど、この前、俺の家で由乃さんを怒らせちゃってから、少し冷めてきたというか……ああ、由乃さんが何考えてるのか、まだわからない。
「ほら、抱いていいよ。いつも、私の胸とか隙あらば、触ってきてたよね?」
「あ、はは……いや、なんて言いますか、その……こういうところ、初めてなんで、緊張しちゃっているというか」
「んもう、駄目よ。ちゃんと人と話すときは、顔を見て話さないと。ほら、おっぱい揉みたくないの?」
うつむきながら、たどたどしい口調でそう言っていると、強引に由乃さんに顔を彼女の方に向けられ、おまけに自らワンピースを脱いで、下着姿の上半身を曝け出す。
おお、由乃さん、やっぱりおっぱい大きいなー……ブラも可愛いし、じゃないって!
ま、ついでなので、揉ませていただくか。
「やん♪ ふふ、やっといつもの陸翔君に戻ってきたね」
「え? いやー、いつものって、俺、いつもこんな感じじゃないですか?」
「あの日、陸翔君の家に行って、ギクシャクしてから、私を見る目変わってきた気がして。それまでは、私の事、ずっとエッチな目で見ていたけど、今日なんかは明らかに私の事、怖がっていない?」
「そ、そんな事は……んっ!」
「んっ、んんっ……」
図星を思いっきり突かれて、ビックリしていた所で、由乃さんがすかさず俺と唇を重ねてキスをする。
ちょっ、またかよ……何で、今日はこんなに積極的な訳?
「んっ、ちゅ……ねえ、ほら抱いてよー……私の事、散々抱きたいって言ったじゃない」
「あー、その……そ、そうだ。由乃さんっ、膝枕してくれませんか!? ちょっと、昨日、寝不足でして、はは!」
顔を離すと、トロンとした瞳で俺にしがみつきながら、由乃さんが迫ってきたので、咄嗟に彼女にそう言う。
少し前なら、遠慮はしなかったが、今の由乃さんは何かおかしいので、怖くなってしまい、何とか休憩時間が終わるまでやり過ごさないとと思っていたが、果たして由乃さんはどうするか……。
「膝枕? くす、いいよ」
「ほっ……それでは、遠慮なく」
怒らせてしまうかと不安になったが、由乃さんは即了承してくれたので、ベッドに横になり、由乃さんの膝に頭を預けた。
いやー、我ながらナイス機転。
このまま寝ちまおうかなと思ったが、流石に厳しそうなので、今の内にどうするか考えないと。
「陸翔君は甘えん坊ね。まるで、手のかかる弟みたい」
「そうですかね? 由乃さん相手だと、つい甘えちゃうんですよね」
「ふふ、奈々子も同じような感じかなあ。この前、奈々子にも膝枕してあげたの。あの子、喜んでいたわよー。やっぱり、可愛いわよね、あの子」
「は、はあ……」
また、妹が可愛いアピールをしているけど、俺にそんな事を言って、どうしたいのだろうか?
あいつは俺を振った、悪質な元カノなんだけどな……ま、顔は可愛いのは認めるけど、性格はとても悪い。
それに対して、由乃さんは仏か天使のような人だと思ったんだが、最近、ちょこっとだけそれも怪しくなってきた気が……。
「あなた、やっぱり奈々子に似ているわ」
「え? 奈々子にですか?」
「うん。我侭で、甘えん坊なところなんか特にね。陸翔君も、奈々子も似た者同士なんだなって。だから、弟が出来たみたいな気分なのよね」
「似てますかね、あいつに……?」
正直、弟みたいとか言われて、複雑な気分ではあるんだが、あいつと似ているなんて思った事もないし、言われて事もないからなあ。
「そうよ。私から見たら、凄く似ているわ。奈々子にも言ったんだけど、冗談は止めてくれって言われて、怒っちゃって」
そりゃ、怒るだろうな……俺だって、良い気分はしないんだけど、奈々子と性格が似ているなんてのが本当なら、ちょっと考えてしまう。
(俺、あんなのになりたくないよ……)
奈々子と同じなら、見境なしに言い寄ってきた女と遊び放題。
いや、俺はあそこまでモテないから、そんな心配は無用か。
「やっぱり、嫌なんだ、あの子に似ているって言われるの」
「あの……今、あいつとの関係が、良いとは言えない状況でして……」
「そうね。二人に仲良くしてほしいんだけどね。あの子も意固地よね」
意固地なんて言えるレベルじゃないと思うんだけどなあ……普通に、嫌われまくっているし、俺もあいつと仲良くなんかしたくないっての。
「だから思ったのよね。陸翔君との間なら、奈々子とよく似た娘が生まれるんじゃないかって」
「ぶっ! な、何、言ってるんですか……そんな訳……」
「だって、二人とも性格はよく似ているし。ねえ、試してみる?」
「はい?」
由乃さんが、怖いくらいの優しい笑顔で俺の頭を撫でながら、
「陸翔君と私の子供、どんな子になるか? 男の子なら、陸翔君そっくりにさせて、女の子なら奈々子と同じような娘にしたいなあ。ね、そう思わない?」
「…………え、その……」
ほ、本気で言っているのか、この人?
いやいや、そんな訳はないよね……?
「あの、まだそういうの早いんじゃないかなって」
「まあ。私を孕ませるとか言っていたくせに、そんな事言うんだ」
「いや、由乃さんだって、今は駄目って言っていたじゃないですか。あの、怒っているなら、謝りますので……」
「ふふふ。怒ってなんかないわよ。だから、謝らないで欲しいなあ。ね、陸翔君のこと、好きよ。君は奈々子によく似ている可愛い弟みたいだわ。ね、だから抱いてもいいよ」
こ、これ本当にヤバくない?
状況的には凄く嬉しいはずなのに、絶体絶命の状況のような気がしてしまい、冷や汗を掻きながら、由乃さんの表情をただ見つめていた。
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