第42話 デートで連れ込まれた場所は
「はあ、気分悪いなくそ……」
奈々子に由乃さんの事を話してみたが、案の定、邪険にされてしまい、何の解決にもならなかった。
そりゃ、あいつが親身に相談に乗ってくれるなんて最初から思っちゃいないけど、由乃さんが昨日、家でどんな様子かは聞きだせるかと期待したんだがなあ……。
しかし、他に相談出来そうなのは……駄目だ、思い当たらん。
「AIにでも聞いてみるか」
藁にもすがる思いで、スマホを取り出し、AIに質問してみる。
「彼女と喧嘩してしまいました。仲直りするにはどうすれば良いですか……っと。さて、どんな答えが返ってくるやら」
まともな解決策が出てくるとは思ってはいないが、果たしてAI様はどんな答えを示してくれるやら。
「おっ、出てきたな。何々……」
『まず一旦、彼女と距離を置き、喧嘩になった原因を冷静に考えてみましょう。その後で彼女とよく話し合い、彼女に仲直りの意思があると判断したら、自分の方から歩み寄ってはいかがでしょうか』
へえ、こんな質問にも答えてくれるんか。
便利な時代になったもんだと感心してしまったが、これはまさに模範解答といった解決案だった。
由乃さんとちょっと距離を置いて、頭を冷やした方がいいか……別に、喧嘩って程でもなかったんだけど、しばらく彼女とは会わない方が良いってことか?
今週末は由乃さんは奈々子と出かける約束をしているので、会う約束もないし、ちょうどいいか、
AIのアドバイスなんかを真に受けるつもりもなかったんだけど、無理に会っても気まずくなりそうなので、しばらく由乃さんと自分の事を頭でじっくり考えて行こうっと。
数日後――
「ん? あ、由乃さんからだ」
日曜日の夜になり、由乃さんから電話が着たので、出てみる。
「もしもし」
『あ、陸翔君。今、ちょっといい?』
「どうしたんですか? 今日は奈々子と……」
『うん。あの子と二人でカフェ行ったり、映画行ったりしてね。えへへ、久しぶりに妹と二人で遊びに行って楽しかったなー。やっぱり、奈々子は可愛くて良い子よね。一緒に居ると楽しいわ」
「そ、そうですか」
と、心底嬉しそうに奈々子と遊びに行った事を報告してきたので、俺もちょっと複雑な気分になる。
はあ……明らかに俺とデートした時よりも、楽しそうに話しちゃってるよ。
奈々子と仲良いのは構わないけど、わざわざ俺にその様子を嬉しそうに報告するのはどうかと思ってしまう。
『今日はゴメンね。来週はちゃんと陸翔君とデートに付き合うから。ね、何処か行きたい場所ある?』
「えっと、何処でもいいですけど……」
『そう。じゃあ、とにかく二人で会いたから、行先については、後で連絡するね。あ、今日の写真送るから』
と電話を切った後、由乃さんが写真を何枚か俺に送信してきた。
「奈々子と一緒に遊んだ時の写真か……」
由乃さんも奈々子も楽しそうにしているなー。
奈々子も俺と付き合っていた時は、俺にこんな笑顔を見せていたのだが、由乃さんも俺に見せたこともないくらい楽しそうな顔をしちゃって。
随分と二人でイチャついていたようだが、あー、何とも言えない気分になってしまった。
何か、面倒な姉妹に関わってしまったような気もしたが、由乃さんとその分、イチャついて、奈々子とのストレスを発散する以外なさそうだなと。
死んでも由乃さんと別れてやるもんかってんだ。ちょっとだけギクシャクしちゃったけど、付き合っていればこういう事もあるさと思い直したのであった。
そして、週末になり――
「お待たせ」
由乃さんとデートの日になり、待ち合わせ場所の駅前に行くと、ほぼ時間通りに由乃さんはやってきた。
「今日は暑いねー」
「ええ。どっか涼しい所、行きたいですね」
今日は陽射しがかなり強くて暑く、由乃さんも白の肩がちょっと出ているワンピースを着用していた。
別に怒っている様子もないし、俺の気にし過ぎだったのかもな。
普段通りに、由乃さんと接すれば良いんだよな。
「だね。何処にしようか?」
「うーん……どうしようかな……」
涼しく過ごせる場所というと、どっか店に入るのが手っ取り早いけど、どっかゆっくり過ごせる店は……。
「そうだ。ちょっと付き合って欲しい所あるんだけど、いい?」
「え? いいですよ」
「よかった。じゃあ、付いてきて。電車にちょっと乗るから」
「はあ……」
電車に乗ると言ったので、由乃さんと一緒に駅に入り、電車に乗り込む。
何処に行くつもりだろう?
遠出するのはいいけど、今日は二人でゆっくり過ごせる場所がいいかなーって。
「着いたよ。えっと、こっちの方かな?」
電車に十分ほど乗り、電車を降りた後、駅の近くを由乃さんはスマホを見ながら歩いていく。
ここに何があるんだ?
駅の周辺を見ても、ロクに店もないし、人気のない小さなビルばかりで、遊ぶ場所とか特になさそうなんだけど、どっか穴場の店でも見つけたのか?
「あった。ね、ここに入ろうか」
「ん? ここは……」
「多分、陸翔くんでも大丈夫だよ。あ、念のため、帽子でも被っておこうか」
「は、はい? えっ! ちょっと、待ってください! ここは……」
塀に囲まれた三階建てくらいのビルだったので、一体、何の建物なんだと一瞬、首を傾げたが、入り口の前の看板の料金表を見て、ようやく理解した。
休憩二時間三千五百円って……ここ……ラブホじゃねえかっ!
「うん。陸翔君、こういう所、入りたかったんでしょ。行こうよ」
「い、いや……でも、俺……高校生なんで」
「ここ、フロントは無人だから、大丈夫よ。さ、ほら来て」
「え、ええ……」
いつもと変わらぬ顔で、由乃さんが俺をラブホテルの中に連れ込んでいき、思いも寄らぬ場所に連れてこられて、困惑してしまう。
おいおい、どうしちゃったんだよ、由乃さん……。
「何とか入れたね。へえ、ここが部屋の中なんだ」
フロントには誰もおらず、無人のレジみたいな精算機で受付を済ませ、由乃さんと一緒に部屋に入る。
ピンク色のライトに照らされて、デカくてフカフカのベッドがあり、いかにもカップルで二人で楽しめそうな部屋の作りになっていた。
おいおい、これ大丈夫なんだよな?
学校とかにバレたら地味にヤバそうなんですけど……まあ、黙っていれば平気と思うしかない。
「ゆ、由乃さん何で、ここに……?」
「ん? ふふ、陸翔君来たかったんでしょ?」
「いや……まあ、そうですけど……」
由乃さんは俺の腕にぎゅっと密着し、胸を押し付けながら、俺をベッドに案内して、一緒に座る。
ま、まさか由乃さん俺と一緒に……ちょっと心の準備できてないんですけど!
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