第14話 元カノの宣戦布告?

キーンコーンカーンコーン……。


「んしょっと……これで、終わりと。はー、掃除当番ってのも面倒くさいな」


 今日は掃除当番だったので、放課後に教室の掃除を軽く済ませ、ゴミ箱に溜まっていたゴミを、外に出していく。


 さっさと帰るか……と思っていると、



「あ……」


 帰ろうとした所で、奈々子とバッタリ会ってしまった。


 またこいつかよ……何か、最近、こういう二人きりの状況で奈々子と会う事多いな。


「こんにちは」


「よお」


「今、帰るの?」


「まあな。じゃあ、俺はこれで」


「待ってよ」


「何だよ?」


 何となく居辛い気分になったので、さっさと帰ろうとすると、奈々子に呼び止められる。


「昨日、またお姉ちゃんと会ったんだって?」


「まあな。由乃さん、本当に可愛いよなあ。一緒に居るだけで、マジ癒やされる」


 奈々子に見せつけるように、由乃さんとのノロケを聞かせてやるが、奈々子はあまり面白そうじゃないみたいだ。


 ふん、俺を振った事を後悔か? 


「へえ、二人とも順調に行ってるんだ」


「まあな」


 奈々子が何処か不貞腐れた表情でそう聞くと、俺も得意気な顔で答える。


 やっぱり、俺と由乃さんが付き合っているのが面白くないようだが、そんな事は俺の知った事ではない。


 俺をフラなきゃ、こんな事にはなってないんだからな。


 精々、後悔しながら、俺と由乃さんがイチャイチャしている所を見ていろ。


「由乃さん、家ではどんな感じ? 俺の話もしている?」


「私にはたまに。何か、やたらと陸翔の事を聞いて来るの。何が好きなんだとか、趣味はどうなんだとか、今日は学校でどうだったんだとか」


「ほ、ほう……俺の事をね」


 憮然とした顔をして、奈々子はそう答えるが、それを聞いて、胸が躍りそうになる。


 いやー、俺は由乃さんに愛されているとみて良いのか。


 奈々子が言うなら、間違いはないだろう。


「何か変わったね、陸翔」


「何が?」


「私が言える義理じゃないんだけど、節操なさすぎじゃない。別れてすぐに他の女子に……しかも、元カノの姉と付き合うって、私への当てつけ?」


「は?」


 こいつ、何を言ってるんだ?


 当てつけで、由乃さんの付き合っているのかってさ……。



「俺が誰と付き合おうが勝手だろ。俺達はもう……」


「わかっているけどさ。当てつけにしても、あんまりじゃない。おかげで、私、お姉ちゃんに家でノロケ話をやたら聞かされる羽目になっているんだけど」


 知るかよ、そんなもん。


 元カレが姉と付き合っているってなれば、そりゃ複雑な気分にもなろうが、そんなの自業自得じゃない?

 

 他の男に走った奈々子が100%悪いんじゃん。


「俺と由乃さんが付き合うの反対なのかよ?」


「別に。面白くないだけ。お姉ちゃんの話すると、私にも見せたことないくらい、デレデレしちゃってさ。デリカシー無さすぎ」


「…………」


 おいおい、お前の口からそんな言葉を聞く事になるとは、驚いたぞ。


 デリカシーという言葉に関してはお前こそ、よく噛み締めないといけない言葉なんじゃないか。




「一つだけ聞かせろ。お前、俺の事が好きで付き合っていたか?」


「好きか嫌いかでいえば好きだよ。嫌いな人とは付き合わないよ」


「本当だろうな? じゃあ、何で……」


 俺を振って、他の男に走ったんだよ……意味がわからないだろ、それ。




「さあね。私しか好きにならないとか調子良い事言っていた元カレが、お姉ちゃんにぞっこんなんて、節操なさすぎるってだけ。私だけが生き甲斐とかってのも嘘だったんじゃない。じゃあね」


「はあ? おいっ!」


 と、吐き捨てるように言った後、奈々子は俺の元から去っていく。


 な、何なんだよ、あの女は……節操がない?


 どっちがだよっ!? 俺を一方的に振ったのはあいつだぞっ!




「ああ、ムカつく! 何で、元カノと話すたびにあんな気分にならないといけないんだ!」


 てか、もしかして俺に未練があるのか? だったら、俺をフるんじゃないと言いたい。


 あんな性格が悪い女だとは思わなかったよ……もう、あんな女の事は知らんっ!


 由乃さんの妹とは思えないな、本当に……。



「帰るか……」


 ムシャクシャした気分の中、下校していくが、本当に何なんだよ、あの女は……!


 由乃さんの妹じゃなかったら、ぶん殴っているところだ。




 ん?


 家に着いた後、ラインの着信があったので、スマホを見てみる。


 もしかして由乃さんかなと期待していたが、意外な奴からのメッセージだった。


「何だよ、奈々子か……」


 あいつからのラインは久しぶりだが、正直ブロックしてやりたい気分だ。


 というか、まだあいつとのやり取りもぜんぶ残っているんだよな。


 後で消しておこうっと。


「なになに……はっ? 何だこれ!?」


 奈々子から届いたメッセージを見て、一瞬、目を疑い、声を張り上げる。



『絶対、別れさす』



「…………」


 なにこれ? どういう意味?


 別れさすって、誰と誰を?


 メッセージの意味がわからずにしばらく固まっていた。



「あ、あいつ……!」


 慌てて奈々子に電話をかけると、


『はい』


「おい、今のメールは何だ!?」


『今のって?』


「とぼけるなよ! な、何なんだよ別れさすって!」


『ああ……ちょっと間違って、送信しちゃった。漫画で印象に残ったセリフメモってたら、つい』


 と、すっとぼけた口調で奈々子は答えるが、いくら何でも苦しすぎる。



『別に深い意味はないから。じゃ、私、これからバイトあるんで』


「は、はあ? ちょっと、待てよ、おいっ!」


 と告げて、一方的に奈々子は電話を切ってしまい、その後、繋がる事はなかった。



 絶対別れさす……まさか、俺と由乃さんを?


「ふざけやがってっ!」


 そんな事、させるかよ!


 思わず机をダンっと叩いて、声を荒らげる。

 

 ただの冗談だと思いたかったが、あいつの今日の態度を思い出すと、そうとは思えず、奈々子への怒りが収まりそうになかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る