彼女をNTRれたら、彼女のお姉さんと付き合うことになって、それ以上にラブラブになりました

@beru1898

第1話 彼女を寝取られた怒りに任せて、家に押しかける


 高校二年になったばかりの俺だが、彼女がいる。


 同じクラスの女子の、大倉奈々子――


 明るくて誰にでも分け隔てなく接してくれる、学園でも可愛いと評判の人気の女子。



 そんな彼女に勇気を振り絞って告白したらOKを貰い、付き合う事になったのだ。


 まさか付き合えるとは思えず、完全に浮かれた気分になってしまい、それから幸せそのものの日々を送っていた。



 しかし、付き合って僅か数か月後――


「ごめんね。他に好きな人が出来ちゃったの。別れよう」


「は、はい?」


 突然、放課後に校舎裏に呼び出されると、奈々子がそう言って、そそくさと立ち去る。


 く、くそ……何でだよっ!?


 俺が何をしたんだ? 他に好きな男が出来たって……つまり、あれか?


 これって寝取られたって事?


「許せん……」


 俺の奈々子を寝取るなんて、何処のクズ野郎だ。


 そんな怒りに燃えながら、俺は奈々子の家に足を運ぶ。


 まるでストーカーみたいな事をしていると言う自覚はあったが、とにかく最愛の彼女を寝取られたと言う怒りで、俺も我を忘れていたのであった。



「あれ、君は……」


「はっ! い、いえ、俺は別に怪しいものでは……って、あなたはっ?」


 奈々子の自宅の前にまで行くと、一人の女性に声をかけられたので、慌てて振り向くと、見覚えのある顔であった。


 確かこの人は……奈々子のお姉さんっ!


 女子大生をしているお姉さんが居るってのは聞いていたし、一度だけ会ったことがある。


 しまったな……奈々子本人に文句を言おうとしたんだが、まさかお姉さんに会ってしまうとは。


「あ、奈々子の彼氏だったよね? 奈々子に用があるんだよね?」


「いえ、奈々子ではなくて……」


「ん? じゃあ、何しに来たの?」


 しまった。咄嗟に、そう答えてしまったが、流石にお姉さんに奈々子に文句を言いに来たとは言いにくい。


「奈々子なら、今、家に居るから、呼んでくるよ」


「あ、ああっ! 良いんですっ! その……奈々子じゃなくて……」


「ん? じゃあ、何なの?」


 まさか、お姉さんが居る時にあいつに文句を言うのは心苦しい。


 というか、怒りに任せて、奈々子の家まで来てしまったのは、ちょっと後先考えない行為だったと、頭が少し冷えた今は恥ずかしくなってしまった。



「くす、じゃあ、ちょっと付いてきて」


「え?」


「いいから」


「あ、はい」


 何かを察したのか、お姉さんは俺の手を引いて、何処かに連れて行く。


 予想外の展開に困惑してしまったが、一体、何処に連れて行くつもりなのか……。



「あ、コーヒーとチーズケーキお願いします」


「はい」


 お姉さんに連れ込まれたのは近くにある小さな喫茶店であり、ちょうど空いていた隅っこの席に二人で座る。


「遠慮なく頼んで。今日は私が奢るから」


「あ、すみません……あの、どうしてこんな所に?」


「いやー、ちょっと二人で話したいなって思って。もしかして、奈々子と何かあった?」


「え……いや、その……」


 奈々子との関係で何か異変があったことを悟ったのか、お姉さんは俺に穏やかな笑顔で聞いてきた。


 今まであまり意識してなかったけど、お姉さんも凄い美人だな……。


 長くキレイな黒い髪に、パッチリとした目、整った顔立ちをし、いかにも頼りになりそうな美人のお姉さんって感じで、見つめられるとドキドキしてしまう。


「喧嘩でもしたの?」


「あ……喧嘩というか……」


 正直に言おうかどうか悩んだが、思い切って、奈々子にフラれた事を打ち明けてみる。



「そっかー……奈々子にフラれちゃったんだ」


「はい……」


 まさか、彼女のお姉さんにフラれた事を打ち明ける事になるとは予想外だったな。


 自分の妹の事なので、案の定、複雑な顔をしているが、注文したコーヒーをすすりながら、しばらく考え込み、


「あの子さ……ちょっと男癖が悪いと言うか……子供の頃から、男子と何人か付き合っては、別れるってのを繰り返しているのよね。本人はあまり、自覚がないっていうか、天然な感じなんだけど」


「え、そうなんですか?」


 お姉さんからそんな事を言われるって事は、今まで相当、男をとっかえひっかえしていたって事なのかな?


 俺が初めての彼氏ではないって事は、奈々子本人からも聞かされていたし、それは気にしていなかったんだが、もしかして結構なビッチだったって事?


「ゴメンね。ウチの妹が迷惑をかけちゃって」


「い、いえ……お姉さんが悪いんじゃないんですよ」


 悪いのは奈々子と、寝取った男が悪いのであって、お姉さんは何も悪くない。


 しかし、お姉さんに謝られると、奈々子と男にギャフンと言わせてやろうという気持ちが一気に萎んでしまった。


「ありがとう。えっと……陸翔君だっけ?」


「あ、はい。南野陸翔です。えっと、お姉さんは……」


「由乃ゆのだよ。大倉由乃。大学二年生」


 由乃さんっていうのか……大学二年生って事は、俺より三つ上って事か。


 ああ、やっぱり大人っぽいなあ……こんな美人なら、きっと大学でもモテモテなんだろうな。


 よくみると、奈々子よりも美人で人当たりも良さそうなお姉さんだし……いや、やっぱり奈々子と似ているから、どうしても奈々子を思い出してしまう。


「奈々子とヨリを戻したいんだ?」


「ヨリを戻したいって言うか、ちょっと文句を言ってやろうかなって思って、つい……すみません、ストーカーみたいですよね」


「あはは、まあショックだったのはわかるし、しょうがないよ。奈々子もこんな人の良さそうな彼氏を振るなんてなー……私の方からも言っておくから、それでちょっと勘弁してくれないかな?」


「は、はい……」




 お姉さんの方からも言っておくか……うん、それで少しは気が楽になってきたかな。


「すみません、変な話をしちゃって」


「いいの、いいの。あ、陸翔君。良かったら、連絡先交換しない? 何か困ったことがあったら、相談に乗るよ」


「あ、はい」


 由乃さんとも電話番号やSNSのアカウントの交換をし、思いもかけず、お姉さんの連絡先を交換する。



 いやー、元彼女のお姉さんとはいえ、こんなキレイな女子大生と仲良くなれるとは……いや、それはちょっと自惚れだったかな。


「よしっと……えへへ、そうだ。ねえ、今度の日曜日、暇?」


「え? 特に用はないですけど」


「だったら、お姉さんと一緒にデートしようよ。妹が迷惑をかけたお詫びって事で」


「は?」


 いきなりとんでもない事を言われて、しばらく呆気に取られる。


 冗談だよな? と思いながら、ニコニコ顔の由乃さんをしばらく見つめていた。

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