第2話 *「ラウリ」*

ラウリは、トゥーリとラースのともだちだ。

リールの森を少し入ったところの小さな泉のそばに住んでいる。りんごの木が入り口のところに立っている小さなおうちは、中も外もみどりであふれていて、ガラスの小さな温室にはさまざまな薬草が育てられている。


ラウリはとってもやさしくて、明るくて、トゥーリはラウリのことが大好きだ。家が近いから(まちやむらよりは近いということで、おとなりさんというほど近いわけではないけれど)、よくあそびに行ったり、あそびに来てもらったりして、はんぶんいっしょに住んでいるみたいにかんじる。こまったときはラウリをたよると、いつもしんせつにたすけてくれた。


ラウリはものしりで、トゥーリに色んなことをおしえてくれる。森のしょくぶつやいきものたちのこと、上手なおりょうりのしかたや(実はラースは朝ごはんのメニュー以外はあんまりおりょうりが上手じゃあないので、トゥーリはおりょうりのことはもっぱらラウリにおそわるようにしていた)おさいほう、おうきゅうしょちのしかた、まちやむらの人たちのせいかつのこと、せかいの色んなこと。文字をよんだりかいたりすることもおしえてくれるし、かずのかぞえかたもおしえてくれる。


ラウリは、トゥーリとラースといっしょに、ラースのおしごとのお手伝いにもよく来てくれる。


ラースも、ラウリからよく色んなことをおしえてもらっている。ちゅうもんのめずらしいしょくぶつのこととか、森の歩き方とか、おりょうりをマシにするコツとか(こればっかりは、なかなかうまくいかないみたいだけれど、前にくらべたらずいぶんよくなったのだ)。


星のことだけは、ラースの方がくわしかった。長いおしごとで、のじゅくするときには、ラースがトゥーリとラウリに星のことをおしえてくれる。そんなときは、ラウリはとってもしんけんにラースの話をきいていて、とっても楽しそうに、もっとおしえて、と言う。


ラースは、これ以上くわしくなってどうするんだ、ガッコウのセンセイにでもなるのか、と言いながらも、ふたりがねむるまで、色々なお話をきかせてくれるのだ。


ラウリは、ふつうの人ではない、なんとかっていう、かんたんなようでむずかしい名前のものだ(なんどかおしえてもらったけれど、トゥーリはいつもその名まえをわすれてしまう)。エリアスという人に、おにんぎょうを作るように、土から作ってもらったのだと言っていた。


トゥーリにはよくわからなかった。だって、ラウリは、前にまちのお店で見たおにんぎょうとはちがって、トゥーリやラースとおなじように、ごはんも食べるし(好ききらいもある)、ちゃんとねないとフラフラしてころんだりぶつかったりして、 いたがった(たんこぶもできた)。たしかにいつもにこにこしているけれど、たまあにおこるとラースと同じくらいこわかったし、ラースがからかうとすねたりした。


トゥーリがぎゅっとだきしめてもらうと、あたたかくて、やわらかくて、森のにおいや、シチューのにおいがした。ラウリの目には、昼と夕方のあいだのじかんの、はちみついろのまろやかな光がやどっていて、ラウリがその少し子どもみたいな(ラウリはそれを気にしているようだったが、トゥーリは好きだった)かおをくしゃっとさせて笑うと、まるで春のこもれびみたいにあまくきらきらして、トゥーリはうれしくなるのだ。


ラウリはラウリだ。ラースがラースで、トゥーリがトゥーリであるみたいに。トゥーリがそう言ったら、ラウリはあのトゥーリの大好きなえがおで笑って、トゥーリをぎゅぎゅーっとだきしめて、あたまをくしゃくしゃとなでてくれた。にわいじりをしたあとだったのか、ぬれた土としょくぶつのみどりのにおいがした。


今日は、ラースのおしごとで森へ行くから、ラウリもいっしょについて来てくれるやくそくになっていた。いつもとはちがうばしょをあんないしてくれると言っていたから、楽しみだ。


今日もきっと、ラウリのうちのよびりんをならして、こんにちは、トゥーリとラースがきました、ラウリいますか、と元気に言えば、はあい、今あけます、と、ぱたぱたと走ってきて、こんにちはトゥーリ、ラース、と、こもれびのようなえがおでむかえてくれるにちがいない。


早くラウリに会いたくて、トゥーリは思わずスキップする。ラースがうしろから、ころぶなよ、と言った。

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