村人との出会い → とりあえず飯をもらう

 煙の立ち上る方角を目指し、俺はひたすら歩き続けた。

 空はすでに夕暮れに染まり、森の中は薄暗くなっている。

 足元の枯葉を踏みしめながら、慎重に前へ進んでいく。


 ——やがて、木々の向こうに、小さな農村の姿が見えた。


「……村、だよな?」


 ざっと見た感じ、家は二十軒ほど。

 藁葺き屋根の家が並び、畑や牧草地が広がっている。

 人影もちらほら見える。大人たちが家の前で話していたり、子供たちが走り回って遊んでいたり。


 確かに文明はある。だが、かなり素朴な村だ。

 道路は舗装されておらず、道端には井戸がぽつんと立っている。

 人々の服装も、シンプルな麻布の衣服ばかりで、いかにも中世の農民といった感じだった。


「……よし、とりあえず助けを求めるしかないか。」


 そう決意し、俺は村の入口へと足を踏み入れた。


 すると——すぐに気づかれる。


「おい、誰だ!」


 警戒した様子の中年の男が、鍬を持ってこちらに近づいてきた。

 他の村人たちも、作業の手を止め、怪訝そうに俺を見ている。


 いきなり押しかけてきた、見慣れない異邦人。

 警戒するのは当然か。


 俺は両手を軽く上げ、できるだけ穏やかに話しかける。


「俺は旅人です。少し道に迷ってしまって……水と食べ物を、分けてもらえませんか?」


 俺の声に、男たちが顔を見合わせる。

 「旅人?」という表情をしている。


 すると、奥から杖をついた老人がゆっくりと歩いてきた。

 白く長い髭をたくわえた、いかにも村の長といった風格の男だ。


「ほう……旅人とな?」


 村の長は、俺をじっと見つめた。

 鋭い眼光で、俺の身なりや表情を隅々まで観察している。


「……あんた、ずいぶん疲れた顔をしておるな。」


「ええ、まぁ……実は、朝から何も食べてなくて……」


 言っているそばから、腹がグゥゥゥゥ……と情けなく鳴る。


 村人たちの視線が、俺の腹に集まった。


 沈黙。


 次の瞬間——


「はははっ!」


 村の長が、愉快そうに笑った。


「お前さん、飢えておるのか。それなら、まぁ……話は後じゃ。まずは飯を食え。」


「……助かります!」


 俺は心底ホッとした。


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