空腹と極限状態 → 村を発見
腹が、減った。
乾いた唇を舌で湿らせ、朽ちかけた木に寄りかかる。
地面に座り込むと、足の感覚がじわじわと遠のいていく。
「……マジでやばいな、これ……」
異世界に転生して、まず最初に襲ってきたのは"生存の危機"だった。
今の俺は、まともな食料もない。水すらロクに確保できていない。
何時間さまよったのかも分からない。日が高かったはずの空は、徐々にオレンジ色に染まり始めている。
「……異世界って、チュートリアルとかないの?」
思わず呟いた。
が、もちろん誰も答えてはくれない。
——腹が減った。
——喉が渇いた。
——体がだるい。
このまま夜を迎えたら、俺はどうなる?
肉食獣が襲ってくる? それとも、気温が下がって低体温症で死ぬ?
まさか、異世界に転生して数時間で死ぬとか、そんなオチはないよな?
「……いやいや、それだけは絶対に勘弁してくれ……」
俺はふらつきながら立ち上がる。
今の状況を冷静に考えろ。パニックになったら死ぬぞ、悠斗。
まず、水だ。
水さえ確保できれば、食事がなくても数日は生き延びられる。
俺は森の中を慎重に進みながら、耳を澄ませた。
どこかに水の音はしないか?
——ざあぁぁぁ……
遠くで、微かに水が流れる音が聞こえた。
「川か……!?」
俺は体のだるさを無理やり押し殺し、音のする方へ向かって歩き始める。
木々をかき分け、足元の枝を踏み越えながら、なんとか水源へと辿り着いた。
目の前に広がるのは、小さな清流。
透き通った水が、夕日に照らされてゆらゆらと光っている。
「……助かった……!」
俺は夢中でしゃがみ込み、両手ですくって飲んだ。
喉を駆け抜ける冷たさに、全身の細胞が生き返るのを感じる。
——ふぅ。
息を整え、もう一度周囲を見渡す。
水は確保できた。次は食料だ。
試しに、川の近くの木を見ると、青い実がなっていた。
食えそうな見た目だが……毒があるかもしれない。
「鑑定!」
——【青果実】食用可。ただし、未熟なものは若干の渋みがある。
「……いけるのか?」
慎重に一つ摘み、恐る恐る口に運ぶ。
——甘い。
味は悪くない。少し渋みはあるが、空腹の身には十分すぎる。
俺は貪るようにいくつかの実を食べ、少しだけ体力を回復した。
「……とはいえ、これだけじゃ栄養が足りねぇな……」
このまま森の中を彷徨い続けるのは危険すぎる。
動物やモンスターが出る可能性もあるし、食料の確保も不安定だ。
俺は立ち上がり、再び歩き出すことを決めた。
目指すべきは、人が住んでいる場所——村か街。
そんな時だった。
——もくもく。
「……煙?」
遠く、木々の隙間から、細い煙が立ち昇っているのが見えた。
誰かが火を焚いているのか?
少なくとも、そこには人の営みがあるはずだ。
「……マジかよ……!」
胸の奥に希望が灯る。
俺は、渾身の力を振り絞って、煙の立つ方へと走り出した。
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