鑑定を試してみる

 深い溜息が漏れる。


 異世界転生したはずなのに、チート能力はなし。

 ステータスは凡人レベルで、魔法すらまともに使えない。

 あるのは……『鑑定(Lv.1)』という、なんとも地味なスキルだけ。


「いや、でも……ひょっとすると、使い方次第では便利かもしれない。」


 今は悲観している場合じゃない。

 ここがどこなのか、どうやって生き延びるのかを考えないといけない。

 そう考えて、俺は試しに足元の草に視線を向ける。


「……よし、『鑑定』!」


 直感的にスキルを発動してみると、視界の端に淡い光のウィンドウが浮かび上がる。


【雑草】

特徴:ただの草。特に役に立たない。


「知ってるわ!!」


 思わずツッコミを入れる。


 いやいや、まてまて。

 たしかに役に立たないかもしれないけど、これがもし薬草だったら……?

 もう一度、違う草を鑑定してみる。


【雑草】

特徴:ただの草。特に役に立たない。


「……」


 どうやら、俺の目の前にある草はすべて"ただの草"らしい。

 なんかもう、色々とショックだ。


「……次は木で試してみるか。」


 視線を近くの大木に向け、『鑑定』を発動。


【樹木】

特徴:加工すれば建築材料として使用可能。


「……それ、普通に見れば分かるよな?」


 鑑定スキルというものに、俺はちょっとだけ期待していた。

 例えば、「この木の内部にはレア鉱石が眠っている」とか、「この葉っぱは薬草としての効果がある」とか。

 そういうゲーム的な便利スキルを想像していたのに——


 「ただの木です!」


 「建築に使えます!」


 こんなレベルの情報しか出てこないのか!?


「……せめて、レベルを上げれば使えるスキルになる……とか?」


 そう考えて、自分自身を鑑定してみることにした。


「鑑定!」


【藤崎悠斗】

種族:人間

特徴:特に特徴なし。


「特に特徴なし!?!?!?」


 心に突き刺さる一言だった。

 いやいや、俺、転生者だぞ!?

 特に特徴なしってどういうこと!?


「……いや、違う、違うよな?」


 もう一度、落ち着いて考える。

 もしかすると、このスキルのレベルが低すぎて、詳しい情報が得られないだけかもしれない。

 きっとレベルが上がれば、もっと詳細な情報が得られるはずだ。


 例えば……【特に特徴なし】の下に、実は「転生者である」「未来の賢者」みたいな特別な情報が隠れているとか!


「……でも、どうやってスキルのレベルを上げるんだ?」


 異世界転生モノなら、「スキルレベル上昇!」みたいなシステムがあるはず。

 ひたすら使い続ければ勝手に成長するのか、それとも経験値が必要なのか……。

 とりあえず、何でもかんでも鑑定していけば、そのうちレベルが上がるかもしれない。


 ——と、ここまで考えてから、俺はふと気づく。


「……ていうか、俺、そもそも今 ‘生きる’ こと考えないとやばくね?」


 冷静になって周囲を見渡す。

 大自然のど真ん中。見えるのは木々と草原だけ。


 ——街がない。人がいない。食料もない。


 異世界転生どうこうより、まずはこの未開の森でどうやって生き延びるかを考えないと。


「……はぁ、マジでどうすんだ、俺……」


 そんなことをぼやきながら、俺はひとまず水と食料を探すために歩き出した。

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