第41話 魔法図書館 蔵書目録①

・はじめてのルーン文字 レインワーズ・ルルーシュ著

 ルーン文字を初めて習う子供向けの教本決定版。

 ルーン文字一覧、それぞれの意味と役割、単語集、基礎構文など。

 複雑なルーン文字体系をわかりやすく解説するため、詩などを用いている。

 魔法都市ダームスドルフの学校に通う子供たちがまず初めに手に取る一冊。

 改稿・増刷を繰り返している。

 図書館内にあるのはレインワーズ本人が書いた原本で、大変貴重なもの。

 濃緑の表紙に金文字でタイトルが書かれているが、印刷本は安価に済ませるためにタイトルは白文字になっている。


 レインワーズ・ルルーシュ 執筆時48歳

 ダームスドルフ一の名教師として数々の伝説を残している。

 四角い眼鏡をかけ、濃茶の髪を持つキリッとした女性。

 生徒に寄り添い、どんな子も見捨てずに教え導く。彼女に教わった子は皆、一流の魔法使い・魔女となる。有名どころでは『変化の書』のオウィディウス・リドゲイトなどもレインワーズの教え子。

 

・おとぎ話全集 エドマンド・ニールセン著・絵

 本著はダームスドルフにおける有名なおとぎ話を集め、一冊の本にまとめたもの。

 数ページごとに挟まれる挿絵は繊細で美しく、美術的評価も高い一冊。

 特に表紙は各物語の象徴を一つの絵に織り交ぜたもので、並外れた完成度の高さになっている。

 花の妖精とミツバチの物語

 ユニコーンと銀の乙女

 炎の騎士と水の騎士

 笑うネコと消えるネズミ

 ヘビとリュート弾きの少年

 竜と薬湯

 魔法生物と魔法使いの交流を描いた作品が多い。


 エドマンド・ニールセン 執筆時68歳

 児童文学研究者。数々の文献を読み、古語で書かれた文学作品の翻訳なども行っている。

 美術にも造詣が深く、挿絵画家としての活動も積極的に行っていた。

 本作の出版は長年の悲願であり、無事刊行された際には涙を流して喜んだ。

 休日に孫とボード遊びをしながら物語を語って聞かせる時間を大切にしている。


・生活に密着した護符の作り方 ケレス・アーティカ著

 白い表紙に黒い文字のシンプルな表紙の本。

 ルーン文字を使った護符の作り方を記した一冊。

 いたずら小人からかまどを守るルーン

 魔力吸収を阻害するルーン

 雨の日に濡れないためのルーン

 靴擦れを防止するためのルーンなど。

 わかりやすく真似しやすい方法が書かれた本著は、それまでの高価な魔導具に手が出せなかった庶民層相手に大人気となり、瞬く間に大ベストセラーになった。ダームスドルフの一家に一冊は本著が置かれ、痒い所に手が届く護符を皆が作るようになる。


 ケレス・アーティカ 執筆時45歳

 ルーン文字を使った付与魔法を得意とする。その知識は深く、宮廷魔法士の座を用意されたが、本人はこれを辞退して一般家庭向け魔導具への魔法付与の仕事に従事する。

 本著が記録的な売上となったことで魔導具の売れ行きが落ち込んだと魔導具協会からケレスに不満の声があがったが、ケレスは「知識を占有するべきではない」とこれを一蹴。また、本の内容はあくまでも簡単なルーンの文字列と、どこでも手に入る石や小枝などを使った護符作りの方法を記載しているため、持続性やより高度なルーンを用いた魔道具を欲する人々は今まで通りに魔道具を求めたため両者はすぐさま和解した。

 生涯を付与魔法研究に捧げている。


・魔法解呪術 ユリス・ウェイクフィールド著

 複雑怪奇な解呪魔法を汎用的に使えるように記した画期的な一冊。

 本著のおかげで封印魔法の解呪が容易になったが、使い手の思考が邪悪だと重大な犯罪につながるため(魔法封印した監獄を破るなどの犯罪発生を憂慮した)、閲覧は上級魔法使い以上の者に限られ、かつ本を閲覧するためには宮廷司書の許可が必要だった。


 ユリス・ウェイクフィールド 執筆時37歳

 ありとあらゆるルーン文字による魔法の解呪方法を確立した大天才。

 彼女の考案した解呪の基礎、普遍的な解呪ルーン文字列により、これまで解呪が不可能だった古代封印魔法なども解けるようになった。

 なお非常にせっかちな性格で、本の内容も結論を急ぎがちで前段階や細かな説明を省く傾向にあり、出版前に五十七回もの修正が入った。

 本著に閲覧制限が入ったことを不服に思ってい愚痴っていたが、同僚であるケレスにたしなめられた。



・魔法都市ダームスドルフの繁栄と滅亡 リリー・ハンロット著

 一千年続いた魔法都市ダームスドルフがなぜ滅んだのかを書いた一冊。

 ダームスドルフの歴史について、そして滅亡の瞬間を生々しく記している。


 リリー・ハンロット 執筆時275歳

 ダームスドルフ最後の宮廷司書の一人。

 滅亡する都市から本を守るため、聖域であるメイホウの森へ本を運ぶ指揮を取る。

 都市は陥落したが、ダームスドルフの知識を絶やすわけにはいかないと森の奥深くで本を守り続ける。この時、同じく宮廷司書であったフィカも同行していた。

 リリーはダームスドルフの滅亡までを記した歴史書を書き上げ、程なくして息を引き取る。

「いつか心正しい人間が来た時、ダームスドルフの知識を伝えるように」とフィカに言い残して。

 魔法図書館のエントランスに刻まれている言葉も彼女が刻んだ。

 ありし日の彼女は聡明ながらお茶目さと愛嬌があり、皆に慕われる存在だった。


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次回より2章に入ります

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