第21話 エピローグ

「アニキ! いい加減に起きろ! 朝だぞ!」

「うぃ……」

 バタンと強く部屋の扉が閉められる。その音で体が嫌でも目を覚ます。

 体を伸ばしてあくびをひとつ、今日もいい天気だ。

 顔を洗って、歯を磨いて、部屋の鏡の前で制服に着替える。

 この動作を、もうかれこれ何回したことか。

 鏡に映る自分の姿は、聖堂学園の制服でバッチリ決まっている。

 

 思えば、あのエキストラのいた入学式からどれくらい経ったのだろう。まるでそれがほんの一か月前のように思える。AB組での生活を振り返ると色々なことがあった。


 みんなとはじめて出会った日。

 好きなことをやろうとみんなで決めた日。

 時間割表を見てビビったことや、あだ名をつけられたこと。

 異世界転生について考えたことや、パソコンをもってカフェに行ったこと。

 ラーメン屋で暴れたこともあったし、親睦会で喧嘩したこともあった。

 それに、あいつとの出禁デートもあったな。


「たくさんの思い出があったなぁ……」


 そんな彼らとの一生分の思い出を、俺は懐かしく思った。でもこれからは新しい一ページをめくることになる。俺は部屋のカレンダーをめくった。


 ――五月。


「……って、まだ一ヶ月しか経ってないじゃないか!?」


   ―――――


 ゴールデンウィークも明けて、ひさしぶりにAB組のみんなと会う。

 たった一週間そこら会わないだけで、日々が少し物足りなかったというか、認めたくはないけど少しだけ寂しかった、ような気がしなくもない。

 俺は聖学の校門をまたぐといつものように聖学の生徒とは違うほうへ歩む。学校の隅にある雑木林を歩き、開けた場所にポツリと佇む校舎に入る。

 上履きに履きかえて廊下に立つと、すでに教室のほうは騒がしかった。

 やれやれ、物足りなかったのは俺だけじゃないみたいだ。

 

 ――一年AB組。

 

 高峰アリス。

 新茶古助。

 左衛門次郎宇宙。

 鬼ヶ島灰治。


 梶原も入れておいてやる。


 さあ、今日からまた青春がはじまる。

 俺はその青春の扉を、一年AB組の扉をワクワクしながら開けたのだ。





「だれか私にキン〇マ貸しなさいよッ!」

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