それでは、VRMMOのお時間です。

ヨノノス

第1話 【Bonds Adventure Online】




 まず、諸君らはおわかりだと思うが、VRMMOとは、MMO――マッシブリー・マルチプレイヤー(大規模多人数同時参加型)・オンライン……、それをVR――バーチャル・リアリティ(仮想現実)で行うゲームのことだ。


 どんなに遠く離れていても、どんな人であっても、ゲームさえ持っていれば、新たな世界で、新たな繋がりを持って遊ぶことができる。VRMMOとはなんと心が躍る言葉だろうか。

 ……なんて言ってみたりしたが、ぶっちゃけ友人と気軽に会ってゲームできるのがハッピーなだけかもしれん。正直、そんな大人数じゃなくてもいいぐらいだし。


 まあ、この話は、そんなVRMMOというゲームを俺がエンジョイする、ただそれだけの物語である。




 俺がVRMMOの存在を知ったのは、急な大金持ちになっただとか、ゲーム自体とのめくるめく運命的な出会いがあっただとか、いきなり死のゲームに参加させられてしまっただとかではなく、祖母との、それも単なる日常での会話でのことだった。


 先ずもって兄弟姉妹での姉と呼ばれる生命体はわりと(色んな意味で)強くなることが多いもんだと俺は思っている。自分家(うち)と周囲を見比べて、それにネットからの情報などを引っくるめた個人的な感覚の話なのでまあ異論は聞かん。

 とりあえず、その姉という俺では勝つことができない危険な生命体が俺の家では×2で存在していた。単純に双子だ。一人居るだけでも勝てねえってのに二人が揃ったときなんかは俺にとっちゃ災害レベルと言ってもいいほどの被害を毎回被(こうむ)ることになる。う、思い出しただけで周囲が薄ら寒い感じがしてきた。


 そんな姉共の圧力に屈し、俺は日々、祖母の部屋によく逃げ込んでいた。

 祖母はゲームこそしないが、それを題材とする漫画やアニメ、特に小説が好きで。そこでよく登場していたのが、今じゃファンタジーの定番と言っても過言ではない異世界に転移したりだとか、転生したりだとかする話。それにVRMMOの話だった。

 祖母の語るVRMMOの話は面白可笑しく、VRMMOのことを知ってからは部屋に行くとよく話をねだっていた。転生や転移よりは身近に感じたからだろう。

 あの日々のおかげで俺は見事なまでのばあちゃんっこだ。


 そして成長してからは自分でもよく祖母が青春時代にせっせと集めた本を読んだり、動画を見たりするようになっていた。

 俺が小さな頃からもうフルダイブできるタイプのVRゲームはそこそこ存在していたが、個人的には上手く稼働しているとは言い難く。

 高校生になってからは、VRゲームを自分でプレイするようにもなっていたが、圧倒的コレジャナイ感。俺が成長すると共に年月が過ぎて、VRでのゲームもどんどんと確実に進化していたのだが、あと一歩がどことなく足りなかったり、逆に違うほうに進んでいるかのようなゲームもあるし。いや、よくできたゲームだなと思うこともある。出した分の金額は楽しんだ。


 だが、どのゲームも俺や祖母が夢見たVRMMOではなかった。


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「……! これは……」


 どうしようもないゲームへの燻りと、もう俺が年を取るまで無理なのでは、いや年を取ったからといっても無理なのでは、という多大なる諦めを心に抱えていたそんな折りに、とある新作VRMMORPGの発売が発表された。


 ゲームの名は【Bonds Adventure Online】。


 名の通り、Bonds――絆を深めて異世界を冒険するゲームらしい。

 『あの日描いた夢を冒険しよう(ただし、夢が叶うかどうかの保証できません)』がコンセプト。カッコ内がもはや潔過ぎるだろ。最新AIが使われているから、プレイヤー一人ひとりに物語があると言いたいらしいが。まあ、確かに個人個人の満足感なんて人それぞれ違うだろうから、気にしてたらゲームなんて作りづらいもんな。


 開発者のプロデューサーが言うには「あの頃夢見たVRMMOの要素をふんだんに盛り込みました!」とのこと。

 発売を一年後に控えて、トレーラーの配信とβ版のテスター募集なんかが始まった。VRで革新的な技術を誇る会社元の発表ということもあり、ネットだけではなくリアルでもかなりの盛り上がりを見せている。


 これは、もしかすると、もしかするのでは。気分が高揚してワクワクとした感情が湧き上がってくる。


「……いいじゃねえか」


 社会人になった今でもやっぱりゲームってワクワクしていいもんだ。思わず独りごちながら、にっと口角を上げた俺は早速β版の抽選を申し込んだ。


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 まあ、すんなり都合良くβ版ができるだなんてこと、あるはずもなく! 知ってた!

 選ばれしものにはなれず、β抽選申し込みはぬるっと外れてしまった。うんまあ、想定内だ想定内。このオープンβテスト期間にせっせと知識を仕入れろというゲーム神からのお達しだと思っておく。こういうときはポジティブに行かねば。

 それから、二ヶ月程度のオープンβテストを終えて、β版で抽選に外れた申込者からの先行申し込み抽選も外れ。友人の当たったという連絡を受けつつ、まさかの公式オンラインストアのキャンセル待ちで入手できるというミラクル。よおしよし、ゲーム神に多大なる感謝。


 当たったという通知から直ぐに最新型フルダイブ用VR機器は購入済み。カプセル型はとうの昔に消えて、今じゃヘッドギア型が主流なの企業努力がすげえよな。あとはこのご時世、誰しもが入れてる個人情報の入った生体チップとも紐付けた。抜かりはない。紐付け等は転売対策などにも関わるし、とても重要だ。


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