第7話
目が覚めた。と言うよりは脳が覚めた。だから目はまだ閉じたままだ。
さて、今日もやる事無いからとりあえずネットサーフィンしよ。顔洗うのもトイレするのもめんどくさいから我慢する。もう何回も観て見飽きたはずなのにまた同じ動画やアニメを繰り返し観よう。腹減ったら飯食って、日が沈んだら寝よ。そんな何にもならない何の為にもならない1日にしよ。
考えてた事を実行しようとして目を開けると知らない天井だった。
…そうだった、俺はときドキの世界に転生したんだった。理解するのに3分もかかってしまった。
身体が重い。昨日は16歳の身体にあんなにも感動したのに、疲れが取れてない。転生初日だから仕方ないか。他に転生初日の人がいないから比べようが無い。
「よしっ!」
パチンッと自分の頬を叩いて気合いを入れる、俺は今から水野祥太なんだと。
朝ごはんめんどくさいなぁ、作るのも食うのもめんどくさい。あーおばあちゃんのだし巻き卵が食いたいよぉ。おばあちゃんの熱々の味噌汁を飲み干したいなぁ。
髪の毛のセットもめんどくさいんだよなぁ、せめて転生するのが水野祥太じゃなければ適当に終わらせるのにな。髪の毛のセットなんか初めてだから携帯観ながらやるか。
1人暮らしの洗濯のタイミングっていつ?回すタイミング無くない?もしかして1日一回じゃ無い感じ?じゃあいつ洗濯するの?…助けておばあちゃん。
遅いんだよなぁ、後悔するタイミングが。もっとおばあちゃんに感謝するべきだった。
だから!俺は今日も水野祥太として生きていく。
っぶねぇ、遅刻するところだった。朝からやる事多すぎ!結局出来てない事の方が多い。
出来て無い事が多くて遅刻ギリギリって事はもっと早く起きないといけないじゃないか。だとしたらおばあちゃんは一体いつに寝て起きてたんだ?…おばあちゃん。
はい、切り替えろ。俺は水野祥太俺は水野祥太俺は水野祥太俺は水野祥太俺は水野祥太俺は水野祥太俺は水野祥太俺は水野祥太俺は水野祥太俺は水野祥太俺は水野祥太。よしっ。
「おっはよ〜!」
勢いよく教室のドアを開けて元気よく挨拶をした。
「おー水野じゃん」
「おはよう祥太」
「ショータ、今日髪変じゃね?」
相変わらず水野祥太は人気者だな。
「みんなおはよう。いやぁ今日起きるのギリギリだったから適当になっちったんだよ」
携帯観たところで上手く出来るわけでは無い、毎日やってきたから上手くなるやつだ。だから俺はこれから練習しないといけなくなってしまった。
「よ!親友」
ときドキの親友キャラである俺は主人公の早乙女に話しかける。
「いきなり肩組んでくんなよ」
「別にいいだろうが」
朝からどうして俺は主人公の方とイチャイチャしなくちゃならねぇんだよ。この学校にはヒロインが3人もいるのによ。
「まだサラサちゃん来てねぇの?」
「うん」
隣の席の新色はまだ来ていない。なぜなら昨日落としたキーホルダーを探している頃だからだ。
「サラサちゃんって本当に可愛いよなぁ。隣の席のお前が羨ましいぜまったくよ」
「お前って本当に相変わらずだな」
早乙女は呆れた顔をする。
「お、褒めてんのか?」
「褒めてねぇよ」
早乙女は褒めてないつもりなんだろうけど相変わらずって事は、俺はちゃんと水野祥太になれてるって事になる。つまり「相変わらず」は本当に褒め言葉になる。
「お、噂をすればってやつか」
「サラサちゃんだ」
きたきた、今日も今日とて可愛い新色が見れるなんて俺は幸せ者だ。今後新色と早乙女がイチャイチャするのを目の前で見て怒らずにいられるだろうか。
「おはよう」
「サラサちゃ〜ん。おっはよ〜」
腕が取れるんじゃないかってくらいブンブンと手を振る。
「おはよ」
「あれ、テンション低いね」
よし、このテンションの低さはキーホルダーが見つかってないって事だ。ちゃんと原作通り進んでくれてありがとう。
新色がテンション低いのに対して俺はテンション爆上がりしてしまう。
「ちょっとね…」
「どうしたの?可愛い顔が台無しだよ?」
オエー。まさか自分の口からこんな言葉が出てしまうとは、…さすがにキモいよな?
「多分昨日なんだけど、学校案内の途中でキーホルダー落としちゃって…」
「だからテンション低かったのか」
「どんなキーホルダー?」
「えーと…、こんなの」
そう言ってキーホルダーの画像を俺たちに見せてくれた。
「それってもうどこにも売ってないの?」
「売ってない」
「どこら辺で落としたか覚えてない?」
申し訳ないけど俺はハッキリと覚えてる。今から見つけて来いって言われたら3分で見つけられる自信がある。
「ごめん。覚えてない」
「謝る必要はないよ」
「そうだよ、サラサちゃんが悪い訳じゃないんだから」
分かるよ、落ち込んでるとつい何でも謝っちゃうのは。でも、悪くないのに謝っちゃうと本当に悪者になっちゃうからな。
「昼休みと放課後で探そっか」
「え、そんな悪いよ」
「いいのいいの、俺たち暇だから。な?」
この「な?」は早乙女に向けての言葉だ。この勢いに任せていつもみたいに肩を組む。
明るくてノリが良い奴はよく肩を組むからな、マネしていかないと。
「もちろんだよ。だって何より俺たち暇だから」
ちなみに俺は暇じゃない。家の事でやらないといけない事がまだまだあるからな。
「そんな。本当いいの?」
「いいのいいの。人の優しさに甘えれる時は甘えとかないと」
「ありがとう」
あざまーーーす!!とびきり笑顔とありがとうをありがとう。これで俺は何日でも頑張れる。
「じゃあ昼休み探そう」
まぁという事で新色のキーホルダーを昼休みと放課後を使って探し出す事になりました。
正直なところ俺はすぐにキーホルダーを見つけれる事が出来るけど一生懸命探してるフリするだけの時間を過ごさないといけない。
ここら辺からね、俺と早乙女との好感度が広がっていくんだよ。悲しいのか嬉しいのか分からない事が続いて、俺のメンタルがどんな事になるか考えただけで怖い。
え、待って。これってちゃった変な形ではあるけどBSSじゃね?これから早乙女とずっと好きだったヒロインが目の前でイチャイチャするってBSSだよな?俺ってBSSもNTRも嫌いなのに…。
べ、別にいいもん!ヒロインが幸せならそれで俺も幸せだもん!そ、そ、それにおばあちゃんに会えれば俺はそれで幸せだからそれでいいもん!
はぁ〜がんばろ…。
「あった?」
「え!あったの!」
「いや、今の「あった」は疑問系」
「うわ〜あるあるだ」
楽し〜これが友達ってやつか。昼休みは当然見つけられなくて2時間くらいただ探し物を探してるだけなのにこんなにも楽しいものなのか?これが友情の力か。
だけどもうそろそろあの言葉を言わなくちゃいけなくなる。これを言っちゃうと俺の好感度が下がるから言いたく無くないんだよなぁ。
これからもこんな事が多々あるのに一々戸惑ったり落ち込んだりしたらキリがない。原作通り進んめるのに俺の感情はいらない、ただただこなせ。
「あーだりぃ。これいつまで続ける感じ?」
よくもまぁ自分の口からそんなひどい言葉が出るもんだ。これは自分でもびっくりしてる。
自分から探すの手伝うって言ったくせにめんどくさくなるって酷い性格してるよな。
「そんな事言うなよ。もうちょっと頑張れよ」
「だってよ、腰痛いし汚れるし爪に土入るしでもう嫌になったんだよ」
探してもらってる立場でそんな事言われたら傷つくよな、自分のせいで機嫌が悪くなる奴がいたら落ち込むの分かるよ。だから俺はわざとらしく大きい声でだるそうに言った。
「あ、もう良いよ全然帰ってくれて。そもそも私が落としのが悪いんだし」
くっ、好きな人にこんな事言わせたくなかったのに…。転生前の俺が見てたら絶対に殴り飛ばしてたよこんな奴。
「お、ラッキー。お前はどうする?」
早乙女も一緒に帰るように誘ったけど、誘いに乗られたらすごく困る。頼むから断ってくれ!こんなにも言ってる事と思ってる事が違う事ある?
「俺はもうちょっと探すわ」
「あ、そう。じゃお先」
帰ろ帰ろ。この空気の中このまま居続けるのはしんどい。
俺が酷い事をして、早乙女の好感度が自然と上がる仕組みになってる。
実はちょっと怖かったんだよ、学校案内に俺を指名した時、俺の方が好かれてるんじゃないかって。でも、これで確実に評価は逆転した。俺の評価が下がって早乙女の評価が上がる。完璧だ。
実は新色が探してたキーホルダーは小中とずっと仲良かった子からもらった大切な物だから見つける早乙女の好感度はグーンと上がる。見つけてもらった時は泣いて喜んでたのが可愛いんだよなぁ。
その笑顔が見れるのが俺じゃないのは寂しいけど俺は親友ポジで主人公は早乙女だから。だから今日は大人しく帰るとしますか。
「ただいま」
なぜ誰も居ない家に「ただいま」って言ったんだろう?もしかして「おかえり」が聞こえてくる事を望んでいたのだろうか?誰も居ないのに。
また泣いてしまった、止まらない。これだといつか癖になりそうだから止めないとな。
次の日になったけどここはそこまで進展は無い。
なぜなら今日でキーホルダーを見つけるからだ。今日の放課後にもう諦めようと新色に言われるけど何とか見つけ出す、新色は泣いて喜んぶ、好感度が上がる。この流れが今日行われる。
ここでもっと早乙女への好感度が上がるように俺は隣の席の新色に聞こえるようにチクチクと嫌な事を言っていた。
「もう見つかんねぇよ」
「落とした奴が悪い」
「あんなのただのキーホルダー」
「カラスが取ってったんじゃねぇか?」
「お前が探す理由が無くて草」
聞いただけでイライラしそうな言葉をチョイスしておいた。最後に草を生やす徹底ぶりだ。
ここまでしたら完璧だ。明日が楽しみで仕方ない。
「ただいま」
もう癖になってまた泣いてしまった。でも、泣いたらストレスが消えてくんだよ。俺って教室移動の時は1人で行きたいのに、クラス奴らが付いてくるんだよ。1人好きの俺からしたら結構なストレスではある。
「え?また泣いてんの?」
声で誰かなんかすぐに分かる。
「うっせぇ」
「怒るくらいなら泣かなきゃいいじゃん」
耐えろ、ここで反抗したら面倒な事になる。
「用は?」
「はい」
女神は紙切れを2枚渡してきた。
「ん」
「私はこれだけだから。じゃね」
そう言って女神は消えていった。
俺はこの紙切れの存在を知っていた。これはスイーツ食べ放題のお店の無料券である。
キーホルダーが見つかって、あの時悪い事言ったな、って言ってこれを新色に渡す。2枚あるから探してくれたお礼で早乙女と一緒に行く。
それで帰り道に「この学校に転校しての初めての友達になってください」って言うんだよ。これがまたね、良いのよ。ここから仲が深まっていくんだよぉ。も〜早く見たいよぁ。これは2人のデートにこっそり付いていくしか無いよな?
早く明日にならないかな?
目が覚めてからルンルンである。こんなにスッキリ目が覚めた事なんてあっただろうか?それくらい今日を楽しみにしてた。早く目が覚め過ぎて一番乗りに教室に来てしまった。
待ちに待ってようやく早乙女がやってきた。
渡すのは新色だけどキーホルダー見つかったことは早乙女に聞こう。
「おっはよ〜!」
「おう」
「で、昨日も見つかんなかったのか?」
「うん」
「いやー良かった良かった、見たかったのか。お前もサラサちゃんも一生懸命探して…た…。は?見つかんなかったのか!?」
「うん」
また、おかしい事が起きてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます