第2話 異世界二日目
異世界を旅する事二日目。
現実に残してきた家族の事や学校の事など、気になる事は多いが、一旦は安全確保が優先だ。
「あっ、繋がった」
「何が?」
「ほら、通信機! これで連絡が取れるかも。……うーん……?」
小さな青い機械。
イメージはキッズ携帯に近いだろうか。
が、通信はできなかったのか、首を振った。
「基地には近付いてるみたいだね。三日もすれば着きそう」
「遠いなぁ……」
「近くに村とかあれば良いんだけどね……。野営マスターになろう」
「異世界で極めるのが野営かぁ……」
あと三日は調味料無し生活が確定したわけだ。
「まぁ、進もう!」
「はぁい」
平穏に進めればよかったのだが、そうも行かないのが現実だ。
「うおぉっ!? なんだっけあれ、魚! 魚出た!」
『分かった。アイツらを倒せば良いんだね?』
魚の体に手足の生えた生き物が現れた。この個体もヘドロを纏っている。
モニターが表示され、《戦闘開始》の文字が浮かぶ。
前回のチュートリアル画面に習い、希洋をタップして
オートでの戦闘が始まるが、前回よりも相手は手強いらしく、HPが中々減っていない。
モニターから目を離し、実際の戦闘を見てもやはり
希洋が水の剣を魚神の体側面に叩き付ける。
が、魚神の鱗が水を弾いてしまってダメージに繋がらない。
隙のできた希洋の鳩尾に魚神の拳が伸びる。
咄嗟に後退して拳を避けるが、避けた先に魚神がヘドロを投げた。
魚神の投げたヘドロが、やけにスローに動いているように見える。
モニターが強く光った。
チュートリアル表示がされている。
示されるままに希洋をタップすると、スキルが表示された。
《ウォーターフィールド》
ハイライトされたその文字をタッチすると、希洋を中心に水の壁が生成され、飛んで来ていたヘドロを遮断した。
『当たらないよっ!』
チュートリアル表示は続く。
再度希洋をタップ。
《アクアブレード》
その文字に触れると、希洋が何も無い空中を剣で斬った。
その起動を水の刃が飛んで行き、魚神に当たる。
と同時に水の刃が分裂、一度魚神から離れた刃が左右から魚神を切り裂いた。
『倒れろ!』
魚神が倒れ、モニターからはその姿が霧散する。
『勝ったよ! 指揮官様!』
MVP表示と共に、
――――――――
魚神の背後になにやらリュックが見えた。
「うーん? なんだろうこれ」
「なんだろうね?」
ボロボロのリュックからボロボロの本が体力に出てくる。
水に濡れたのだろうか。インクが滲んだり、紙同士がくっ付いていたりして中は見えない。
表紙もインクが溶けていたり、ふやけて剥がれたり、ボロボロだ。
「大きさは同人誌っぽいな」
「同人誌?」
妹の
……中身もちょっとだけ。
なんにせよ、リュックの中身は同人誌のようなものだった。
実際は何なのか、判断要素が無いので分からないが。
「誰の物かも分からないし、もしかしたら目印として置かれてる物かもしれないから、置いていこう」
「分かった」
――――――――――――――
「
希洋と同じセーラー服を着た
彼の名前は
「全然。どこにいるかも分かんない」
花威に詰め寄られているのは
究聖主連盟の幹部だ。
「話になんない。僕、探しに行ってくる」
「探すったって
その軽い態度と、ほんのりと漂う気弱な雰囲気から、若干ナメられ気味の男だ。
「あ? 隊長が急に光ったと思ったらどっか消えたのにロクな探索もしてない方がマズいだろ」
「ひぇ……ごもっともです……」
「とにかく、僕は行くから。不在中は……まぁどうせオリオンが出動する事なんて無いでしょ。それじゃ」
桃色の長い髪と青い目を持つ青年。
――――――――――――
「そういえば
焼いただけの魚を食べながら、
「あー……うーん……
「大丈夫なのかそれ」
聞きたかったのは、
「どうだろう。
「それはそれでどうなの?」
「全然昇進するつもり無いって言ってたのに俺が隊長になるって決まったらすぐ副隊長になってたし」
「仲良いんだね?」
「そうだね〜。花威、俺以外に友達居ないし」
「そうなんだ……」
知らない人の悲しい事情を聞いてしまった。
「あっ、もし良かったら
「お、おぉ! 向こうが良いなら」
「多分ねぇ、
悲しいお願いをされてしまった……。
「楽しみだな〜、
「結構重症だ……」
本当に仲良くなれるのだろうか……。
「よし、そうと決まったら急いで向かわないとね。今日は早く寝よう!」
「分かった」
魚を食べ終えるとすぐに睡眠だ。
汗はかいたが、そう毎日水浴びもしていられない。
寒いし、裸になるし、裸になるし裸になるし。
――こうして異世界の二日目は過ぎて行った。
このまま平穏に究聖主連盟まで辿り着けるものだと、この時の
夜が、更けていく。
――――――――――――
《救世主情報》
刺草 希洋
戦闘経験:8年目
幼い頃から戦闘訓練を受け、実戦経験も深い。
が、年齢が16と若いため、当分の間は新人部隊オリオンの隊長から昇進させる予定が無い。
――――――――――――――
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