ストーカーはどっち?
@madder1
第1話
地下鉄を降り、彼のアパートまでの長い一本道を一人歩く。
以前はよく彼と手を繋ぎながら歩いたこの道。
たわいもない話をしながら途中にあるコンビニに寄って、お酒を買ってアパートに向かうのがお決まりだった。
桜並木が綺麗な春も、汗ばむ手の感触さえも愛しい夏も、木枯らしが二人の距離をより近付ける秋も、そして気温は寒くても心は一年で一番温かい冬も…季節が変わっても何度も二人で歩いてきた道を、今は一人で歩き続けている。
恐らく二人で歩いた時以上に。
PM19:00
彼のアパートの前に着くと部屋は真っ暗だった。
彼のアパートはオートロックなので、私はいつも裏口から入る。
そして彼の部屋のドアの前に顔を寄せ、耳を澄ませる。
無音だ…。
次に音を立てずにゆっくりとドアノブを回す。
鍵がかかっている。
大学は終わっているはずだし、バイトかな。
私は裏口から出て向かいのカフェに入る。
そして窓際の席に座り、正面から見える彼の部屋の明かりがつくまで観察する。
別れた時にショックで携帯も番号も変えたから、彼と繋がる術がこれしかない。
彼のこと忘れようとしたけどやっぱり忘れられなくて、私は暗い部屋を見つめながら今日こそ彼に会えるようにと待ち続けている。
PM19:00
家を出てアパートのオートロックを解除する。
そして地下鉄までの長い一本道を一人歩く。
以前はよく彼女と手を繋ぎながら歩いたこの道。
別れを切り出したのは俺だけど、まさかあんなにあっさり受け入れるとは思わなかった。
俺はただ…別れたくないと取り乱しすがりつく、彼女の泣き顔が見たかっただけなのに。
笑った顔も、怒った顔も、泣いた顔も、そして怯えた顔も...全部俺の物だ。
それなのに彼女は連絡先を変えて俺の前から姿を消した。
だから俺はこうして毎晩彼女の家に向かって一人歩き続けている。
恐ろしいほど異常なあなたへの愛情。
一体今どこにいる?今夜こそは会えるだろうか。
次会ったら、あなたとこの道連れ 立って歩きたい。
ストーカーはどっち? @madder1
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます