我が子が不気味に見える時
肥後妙子
第1話 心の成長とは何か
明日は休みという事で、顔に美容パックを貼っている間、スマホをのんびりポチポチしていた私に、電話がかかってきた。同い年の友人からだった。彼女は結婚して子持ち、私は独身であまり共通点は無いのだか、そこは女性同士、最近は健康に関する話題で盛り上がる事が多い。
今夜もスムージーやお酢ドリンクの話題かなぁと予想したが、違っていた。
中学二年生の息子さんの事だった。内容は以下の通り。
いきなりごめん。でも私、息子の事で心配になっちゃって。ちょっと聞いてくれない?
あのね、今日、息子の学校の階段で、女の子が多分、貧血で倒れそうになったっていうのよ。休み時間で、周りに他の生徒が何人もいたから、近くにいた男子生徒がとっさに腕を引いて階段から落ちるのを止めたんですって。で、先生を呼びに行って、先生が来るまでみんなで側で待ってたらしいんだけど。息子はね、その子たちに腹が立って苦情を言ってやったって私に報告してきたのよ。
意味が分からないでしょう?私もきいたのよ。なんで苦情を言ったのって。
そしたらあの子、男がいる場所で倒れるなんてあの女子、図々しいって言うのよ。男が女に触ると、すぐセクハラだなんだって言われるから、女だけで対応するべきだ、なんで女は助けられて当然だと思うんだって怒るのよ。助けた男の方もイキがってる、調子に乗ってるって。
私、ますます訳が分からなくなって、急病の時はそんな事言ってられないのよって言ったんだけど、だったら普段から準備しておけばいいって言い張るのよ。
私も呆れて、あんた、具合悪い子と心配している周りの子に、そんな文句言ったの?ってきいたら、息子はニカッと笑ってイイねマークみたいに親指を立ててこう言ったのよ。
自信を持って自分の意見を言うのは、良いことなんだよ!
その時、私、自分の息子が不気味な存在に見えたわ。
以上が友人が私に電話で話した内容だ。息子さんには悪いが私も彼のことを、たちが悪い奴だなと正直思った。
終
我が子が不気味に見える時 肥後妙子 @higotaeko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます