第18話 回想

岩場の花を見て、自分の変化に気づき、部屋へ戻る。今日、会った人に言われるまで気がつかなかった。これも詠美のお陰だろう。ベットに寝転がり目を閉じる。

「戻りました。」

「お疲れ様!」

事務室へ案内される。いつものように椅子に座り話をする。

「今日は初めて物が売れたんですよ!今まで人が来ても話をするだけだったのに。今日は記念にと約束のコップを一馬さんからもらいました。」

「すごい!おめでとう!一馬さんとはすっかり仲良しね。」

「うれしいな!こんなに喜ばれると思いませんでした。」

「でも、無理しないでね。お仕事が忙しくなると大変だから。」

「そんなことありません。これからもがんばりますよ!」

「そうじゃなく、あなたの体が心配なの。」

思わず息をのむ。

「元気ですから、まだまだいけます!」

「だから、無理しないで!」

涙ぐんでいる。抑えようとしている気持ちが抑えられなくなりそうだ。

「・・・心配してくれて、ありがとうございます。けど、引きません。」

「どうしてわかってくれないの?このまま続けたら、あなたが辛いんだよ。」

もう抑えられない。立ち上がって、手を取り抱き寄せようとする。けど、止められた。

「わかって!」

手を取ったつもりが両手で手を包み込まれるようにもたれて、お願いされる始末だ。驚いてしまった。突然の事でどうしたらいいのか、わからなくなってしまい、体も心もいうことをきかない。ただ、その場で時が止まる。

「本当は疲れてるんだよ。少し休もう。」

「・・・はい。」

閉じていた目を開ける。変化で喜んでいた心が曇る。なんとも言えない気持ちだ。涙がこぼれる。それを隠すように目に腕を当てて泣いた。

ここに来て変われた理由。働く目的。そんな事はどうでもよくなった。ただ、どうすることもできないことだけ心に残る。この気持ちがいつ晴れるのだろう。空は曇ることが少ない日々だったのに突然の雷雨に襲われたような気持ちだ。今はただ泣こう。

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Time Over 樹葉いろは @kibairoha

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