第14話 騒がしい朝

夜が明けた。少し早かったかな。昨日の興奮がまだ残っているようだ。部屋にある水道で顔を洗う。夢ではないな。記憶もしっかり残っている。詠美とまた会いたい。想う気持ちを抑えるようにもう一度、顔を洗う。

食事の時間だ。食堂に向かう。朝は大熊も一緒だった。

「おはよう!今日は野菜を交換してくれ。」

「あ、ああ。おはようございます。」

「?どうした?昨日の夜、見かけなかったけど何かあったか?」

「いいえ。野菜でしたね。この鮭でどうですか?」

「それなら、ベーコンもつけるよ。・・・ほんとに大丈夫か?これも練習だぞ。」

「よくわからないけど、いいんです。」

「自分の価値は大事にしろ!」

「・・・!」

びっくりして何も言えなかった。

「今日は交換はしない。話したいことがあったら仕事中でもいいから話してみろよ。俺は今日、別で食べる。」

大熊が去っていく。唖然としていると農場の2人組が現れた。

「おはよー!良い夜は過ごせた?」

「そんなこと言わないの!おはよう。なんでもないよ。お腹すいてるもんね。」

なんだかうれしそうだ。少し離れた席で食事を始める。2人の話し声が聞こえる。

「やっぱ、採れなかったね。」

「そんなことないよ。これからいい時期かも。」

「そうかな?葉を落とすタイミングずれたんじゃない?」

「焦らないの。花が咲けばわかる。」

どうやら、作業の話のようだ。2人にばれた訳ではない。気を取り直して食事を始める。食べ物を見るとパンに鮭おまけに漬物だった。組み合わせが難しい。上の空だったのだろう。昨日の事は短い時間だったけど大事な時間だ。今日は鮭と漬物を残しそうになった。でも、食べられた。

食事を終え、玄関に向かっている時、作業棟の男に声をかけられた。

「おう!詠美ちゃん今日もきれいだぞ!」

「・・・!」

また、驚いてしまった。

「朝、すれ違ったけど、いい女だな。こっそりとしたいだろ?」

「なにを言っているんですか!」

ムキになってしまった。

「そんなに怒るなよ。ただの感想だよ。」

男は雰囲気を変えて、去っていった。再び気を取り直して、ゲートに向かう。

ゲートの前で大熊が待っていた。

「大丈夫か?今日は仕事、行けるか?」

「はい!」

「よし!行くか!」

2人はゲートの外へ出て行った。

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