第12話 突然の

朝食をすませて、作業棟へ向かう。作業棟の前で鳴海が待っていた。

「おはようございます。」

挨拶をすると立ちふさがるように言われた。

「おはようございます。突然ですが、今日から大熊さんを手伝ってください。」

鳴海が紹介する大熊は昨日、食事を一緒にした男だった。

「大熊一馬です。今日から外を手伝ってください。質問はありますか?」

食事の時と雰囲気が違う。砕けた感じがなく、警戒感を感じる。これは苦手な雰囲気だ。

「よろしくお願いします。今日は何をしますか?」

「今日は販売の仕事です。ついてきてください。それじゃあ、行ってきます。」

大熊は鳴海に挨拶をしてその場を去る。その後をついていく。

しばらく無言で歩いた。大熊もカードキーを持っていた。ゲートにかざすとゲートは開いた。昨日は気づかなかったけど、すぐ近くにも集落があった。ここだろうか。

「これからこの店でお客さんを待ちます。以上です。お客さんが来たら教えてください。」

「わかりました。」

大熊は奥の部屋へ入っていった。しばらくして機械の音が聞こえだした。何を始めたのだろう。気になるけど、ここで待っていればいいんだ。棚に置かれている物は生活雑貨のようだ。雑貨屋さんなのかな。昨日の商店とは雰囲気が違う。長くいたい場所じゃない。時間が長く感じる。

しばらく待つが人が来ることはない。聞こえるのは機械音と微かな物音、それが無ければ静かな場所なんだろう。待つことが辛い。奥の部屋のドアが開いた。

「休憩だぞ!さすがにそこまで硬くなるな。休む時は休む。」

「はい。」

「さっきも言ったけど硬くなるな。悠君。」

名前で呼ばれた。苗字で呼べよ。仕事なんだろ。思わずムッとした。

「馬鹿にしてるんじゃないぞ!コミュニケーションは大事だ!けど、管理人の前じゃ、鹿島さんだからな。」

「わかりませんよ。なんで隠すんですか?」

「隠さなくていい。俺は噓つきだからそうしてる。」

訳がわからなかった。

「さて、休憩終わり!またよろしく!」

休憩を終え、大熊は奥の部屋へ戻っていった。また長い時間を過ごさなくてはいけないのか。

結局、今日はお客さんが来なかった。

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