第11話 談話

水の滴る洗濯物を持ち帰り、洗面台に置く。天井を見るように今日を思い出す。時間が止まったように感じた。

気がつくと夕食の時間だ。食堂へ向かうと朝の男がいた。

「今日の作業はどうだった?」

「どうって。別になんとも。」

ごまかしてみた。

「そうか。あまり楽しくないか?」

「そんなことないですよ。」

詠美といたいとは言わない。

「そういえば、変更許可ってなんですか?さっき聞いたんですけど。」

「あぁ、それな。詠美さんに聞いてみれば。俺は知らないうちに外に出てるけど、早くてもいいんじゃない。」

「そうですか?なら、聞いてみたいです。」

「どんなことしたいんだ?」

「・・・それは、わかりませんけど。」

「なら、言われたことをしよう!俺からは言えることはない。」

男は食事をすませて席を立つ。

話したいことはなんだったんだろう。やっぱり、モヤモヤする。ちょっと外に出よう。

みんなが部屋に戻ったタイミングを見計らい外へ出る。

空には月と星、地面には土や草花。その場にある空気が止まるような感覚は昨日と同じ。今日、教えてもらった竜胆を見る。普通の草だ。そう思うと、見ても変わらないな。その場を去ろうと立ち上がる。今日は詠美の姿はない。多分、会えると思ってたんだ。こうすればいいなんてない。

宿舎へ戻ると食堂から声がする。農場の女性たちだ。

「だからさぁ。ここで変われば、また増えるよ。」

「え~変わってほしくないな。」

「ここでこらえて蓄えるか刈り取るか、待ってるだけ?」

「もう少し見ていたいな。じれったいの。じらさせたい気持ちあるでしょ?」

なんの会話だろう。会話を遮り、ゆっくりと部屋に戻ろうとする。

「あ!ちょっと!」

呼び止められた。

「変更許可の話、聞いたよ!うちおいでよ!」

「ちょっと、やめてよ!まだ、言わないで!」

その場から逃げた。今はここから出てより、会いたい人ができたが正しい気持ちなのかもしれない。部屋のドアを閉め、ベットに座る。明日は作業棟での作業だったな。明日は会える。何か伝えたいことを考えよう。

『ここから一緒に出よう』

これが伝えたいことだ。そのために知ることにしよう。考えもまとまり、床に就く。

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