第2話 新しい環境

事務室を出ると明るい室内、荷物や資材の乗っている棚や机、ちょっと傷んだ床。パーテーションの向こうで作業をしている人達がいる。作業している人は黙々と自分の担当している作業をしている。ラジオの音も聞こえる。ラジオから聞こえるのは最近の流行歌やパーソナリティのトークだ。ここで働くのかな?止まって見ていると学校のチャイムが鳴る。

キンコン、カンコン。

「休憩でーす!部品や品物はまとめて休んでください!」

それぞれ、給水したり、トイレに行ったりしている。中には話をしている人もいる。

「昨日のテレビ見た?」

「あれ?面白かったよね。」

中にはイヤフォンをつけて音楽や動画を見ている人もいる。休憩の時間が終わりに近づき、詠美が話しかけに行く。

「そろそろ、それはロッカーにしまって、トイレは行った?」

「まだだよ。」

注意された人は渋々、ロッカーにスマホをしまうが、ポツリと言った。

「むかつく。」

そのままトイレのほうに歩いて行った。

「ここではみんな、自分に合った作業をしてもらいます。」

「そうですか。できることならなんでもかまいませんよ。」

すぐにまたチャイムが鳴る。みんな席に戻っていく。さっきの人が遅れてくる。

「はやく戻らないと遅れちゃうよ。みんなと一緒にがんばろう!」

まるでお母さんと子供の会話だ。だから、「むかつく。」だったのかもしれない。みんなのお姉さんの様な立場や仕事の管理者をしている詠美への不満もあるのだろう。けど、俺はすんなり下に入れる。波風は立てたくなかったからだ。

詠美は作業の指示をして、戻ってきた。次は設備や共有スペースへ案内された。使っていい水道とトイレ。中には好き勝手に使ってしまう人もいるそうで説明は欠かせないようだ。共有スペースは休憩時間に本を読んだり、話をしたりする他に、お昼をそこで食べるそうだ。基本的には作業中に使えない部屋になっている。

「ここまででわからないことありますか?」

「ありません。」

年の差はさほどないけど、どうしてもタメ口では話せない。なんか不便だな。けど、これがもう普通なんだ。距離感というか、感覚なんだろう。そういえば病院に入ってから電話を持っていなかったな。言葉が大事なのかもしれない。

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