Time Over
樹葉いろは
第1話 外へ
やっと出られた。なんで、病院へ閉じ込められなくてはいけないんだ。外に出れたから、また探そう。
病院から出してくれたのは郊外にある施設だ。『社会復帰したい』願いを聞いてくれた。
病院から退院して、そこへ移る。病院のカウンセラーと応接室へ挨拶に向かう。
「はじめまして。お世話になります。病院での生活は安定して、今日はご相談に伺いました。」
「鹿島さんですね。はじめまして!ここを管理している鳴海です。」
「はじめまして。今日からお世話になります。鹿島悠です。」
「ここでの生活について、ご説明しますね。」
管理人の鳴海さんは笑顔で迎え入れ、ここでのルールや作業の説明をはじめる。同時に、管理人とカウンセラーの話し合いは続いている。外に出られれば、こちらは問題ない。話は聞いていよう。
「鹿島さんの病状はとても安定していて、退院が驚くほど早かったのです。」
「そうですか。努力や環境のおかげですね。」
「ですから、安心しています。これからの生活や環境変化にも問題は無いでしょう。」
話し合いはしているけど、そんなに病院内の環境に混ざっていたつもりはないけどな。いつもの病室は当たり障りなく。共有スペースではそれとなく。みんなやってることだけど。早くこの会話、終わんないかな。話を聞き始めてからしばらく経つと、応接室の戸がノックされる。
トン、トン。
「どうぞ。」
鳴海さんが返事をする。
「失礼します。」
「娘です。ここに来る人の作業や生活のサポートをするスタッフをしています。」
「鳴海詠美です。ご案内して、よろしいですか?」
話を遮るように彼女は入ってきた。押し入ってきた雰囲気はなく、ただ自然に促すように話の和に入った。こちらは助かる。話が通じない内容だったし、わからないからだ。
「はじめまして。鹿島悠です。悠とお呼びください。ここではどんなことをしますか?」
「はじめまして!家族で同じ名字だから、みんなからは『詠美ちゃん』て、呼ばれてます。ここでの説明より、見たほうがわかると思うので、行きましょう!」
「わかりました。」
「それじゃ、詠美よろしくね。」
話は一時おさまり、彼女の後を追うように事務室を出る。
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