隠し部屋のシルフィーたち

エフ=宝泉薫

部屋の扉


シルフィーは風の精。

パラケルススという昔の学者によれば、空気の要素を持つ目に見えない精霊で、 その姿を現すと、きゃしゃで優美な人間の少女に似ているという。


私のなかでは、こんなイメージかな。


ようやく視野に淡いピンクのワンピース姿が映った。白い肌と黒い髪。淡いピンクは、彼女の肌の色とよくあっていたし――淡いピンクが似あう程白い肌なんて、なかなかあるもんじゃない――、その体は、ちょっと力をこめて抱いたらこわれてしまいそうに細い。※1


少女は、思ったより小柄だった。蔓のように細くなよなよとして、溜息でも、ふきとばされそうだった。※2


どちらも有名な作家によるSF小説の登場人物で、実在はしない。

でも、自分磨きのモチベーションにはできる。


いや、現実の世の中にだって、シルフィーみたいな人はいるんだ。


リアルでもネットでも、ごくごくまれにそういう人を見かけると、私は心の中の隠し部屋にその記憶をしまい込み、時々取り出しては自分磨きのモチベーションにする。

もちろん、小説の登場人物みたいな、実在しない架空の存在も含めて――。


私の拙い文章力、もしくは詩才では、記憶をちゃんと表現できないことも多いけど、彼女たちの魅力が褪せることはない。

隠し部屋のなかで、風のように優しく厳しくささやいて、理想の世界へといざなってくれる、はずだ。



※1「グリーン・レクイエム」新井素子

※2「オルガ」小松左京


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