第12話 城の間取り
「ふ〜〜ん。じゃあ、ノックスおじさんはボクたちとはちがう国の人なんだね!」
「ノックおじさん、おめめが青くてカッコいいの!」
「そうか、格好いいか。2人の大きな黒い瞳もキラキラと輝いて格好いいぞ?」
ノックスさんが2人の相手になってくれている間に、遅くなったお昼ご飯の用意をしよう。
2人からはミートスパゲッティをリクエストされたから、それとスペイン風オムレツ、作り置きの鶏ハムと野菜スープ(レトルト)にするか。オムレツの具は……ジャガイモだとちょっと重いから、タマネギと枝豆、ベーコンにカボチャを少しだけ入れよう。
碌に食えてなかっただろうノックスさんには消化の良い物だよな。
食い物にマイナス効果は無いと信じて、レトルトの卵粥と……豆腐もいいな。湯豆腐にして生姜のカニかま餡を掛けるか。あとは、食えそうなら、おかずを好きに摘んでもらおう。
料理をしながら、打ち解けた雰囲気の3人を見てホッと胸をなで下ろす。
2人がノックスさんを怖がらなくて良かった。
やっぱり、ノックスさんの髭を剃っておいて正解だったな。
「ご飯だぞー!」
「「はーーーい!!」」「チュ!」
「おお、私の分まですまないな。有り難い」
ミートスパゲッティは小盛りにして、おかずと一緒にワンプレートに盛り付け。お代わり分を別皿に乗せた。余ったら俺が食えばいいな。
ノックスさんは、食卓の食事に興味津々で、あれこれ聞いて来る。
「「「いただきまーす!」」」
「い、いただくます?」
子供達は兎も角、ノックスさんの食い付きが凄い。『ゆっくり食べて!』と注意しても、飢えを満たす様にガツガツと食べてしまう。
これは後で腹ピーになるぞ〜。
お、チュ太は枝豆もいける口か。他にも色々試しに食ってみような。
そして、食後に残ってたミルク寒天を出し、やっと皆で人心地ついた。
「……はぁ……美味かった。ユウ、君は料理人だったのか?」
「違いますよ。ただ、日常的に料理をしていたからか、スキルに『料理』が出ていましたけど。それよりノックスさん、念の為この薬飲んでおいて下さい」
そう言ってノックスさんに胃腸薬を渡した。絶対に食い過ぎだったからね。
それにしてもこの人、飯もそうだけど、なんの躊躇いも無く出された物を口にするんだよな…。王族って、毒味をしないと食い物を口にしないイメージだったんだけど。
まあいいや。そろそろ本題の話をしていこう。
大樹くんと幸樹くんには、庭で遊んでおいでと伝え、ノックスさんとの話しを聞かれない様にした。
「ノックスさん、最初に会った時に話しましたが、貴方の甥っ子さんの手伝いをする気は無いので、俺はあの子達を連れてここから出ようと思ってます。それで出来れば、外へ出る安全なルートを教えて貰えると助かるんですが。若しくは、元々居た場所へ戻る方法でも構いません。ご協力頂けないでしょうか?」
「ああ、君達がここに居ても彼奴等に使い潰されるだけだからな。勿論教えよう。ただ、申し訳無いが、君達の居た場所への帰還方法は私達も知らないんだ……本当にすまない………」
そう言ってノックスさんは目を伏せた。
私達もか………俺はともかく、子供達は親元に返してあげたかったんだがな。
帰還が叶わないなら、当初の予定通り安全確保を目指そう。
ノックスさんに筆記用具を渡して、間取り図と脱出ルートを描いて欲しいとお願いする。
渡した筆記用具に驚きながらも、サラサラと淀み無く間取り図が描かれていく。その部屋数と広さに『ここはやっぱり城だったか…』と溜め息が漏れた。
だがやっと、この建物の間取りと最適な脱出ルートを知ることが出来た。この間取り図があれば手探りで進まずに済むぞ。
「ところでユウ、この城を出る前に出来れば立ち寄ってもらいたい場所があるんだ」
「立ち寄る?何処へですか??」
ノックスさんが指差した間取り図の場所は、ここからだいふ遠い部屋だった。
正直、寄り道はしたくいけど、なんで行きたいのか?
「……ここは私の妻、マリアの部屋なんだ。彼女は君達と同じ召喚者だが、私の妻になってくれた人なんだ。ただ、私が召喚術に反対したせいで、部屋に軟禁されている状態だと思う…無理を言ってるのは重々承知しているが、私が姿を消せば彼女の身も危うい。だから、城を出るなら連れて行きたいんだ」
懇願する強い視線がノックスさんから向けられる。それに地下牢で、あの甥っ子は『マリア様もとても心配されています』なんて脅し文句をノックスさんへ向けて吐いてた。
「脱出の助けになる魔法も教える!」
「(魔法!!)」
『未習得』状態の魔法を教えてもらえる!
これから何かがあった時に対応する手段が物理(バットと包丁)だけじゃ、心許なかったんだ!もし力ずくで襲われたら俺なんか一溜まりもないし、きっと相手は躊躇いもない。
保険は1つでも多い方がいい。
リスクは高い。だけど、やろう。
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