第4話 子供達のステータス

天ぷらを揚げていると、不意に子供たちの泣き声が聞こえて来た。

俺は慌てて火を止め、ばぁちゃんの部屋へ向かった。


まさか2人に何かあったのか?!




「大樹くん、幸樹くんどうした?!」


「お…おじちゃ………ごめんなさっ、ぼく…お……ねしょ……しちゃった………」


「……ごめ……しゃい……」




ああ……おねしょかぁ………。

そう言えば大樹くんの方はトイレしてなかったな。幸樹くんはお兄ちゃんの泣き声に引っ張られて、もらい泣きだった。デカいトマト食べたあとに麦茶を飲んだし。




「泣かなくても大丈夫だよ。布団は洗えば良いんだ。それより大樹くんも、これで俺と幸樹くんと同じタオル服の仲間入りだな!」  

 

「あ……タオル………ぼくも一緒?」


「そうだよ。さあ、抱っこして行くから2人共おいで。寝汗もかいてるな……ついでにシャワーを浴びてサッパリ汗を流そうか!」



ブランケットごと2人を抱き上げ、そのまま浴室に連れて行き、シャワーの湯温を確認して2人を洗った。ううん…流石に2人一緒に抱っこは重かった。腰を痛めない様に気をつけねば。


大樹くんの服とブランケットは洗濯機に入れ、あとはお任せ。


丁度ばぁちゃんちには、俺が使ってたシャンプーハットがあったので、それを使って2人の髪を順番に洗う。


キャッキャッとシャワーを掛けられてはしゃぐ2人に自然と笑みが浮かんだ。


俺は『精神耐性』があるから、この状況でも比較的落ち着いていられるんだろう。だけど子供には辛い変化のはずだ。頼りになる両親もいないんだから。

ほんのひと時でも、不安を忘れて笑える時間があるなら、出来るだけ大事にしてやらないと。



「2人共、お風呂を出たらご飯を食べるぞー」


「「はーい!」」



風呂を出た後は、ばぁちゃんの箪笥を失礼して漁らせてもらった。俺は兎も角、子供達がタオル1枚の薄着では、いくら夏でも日が傾けば腹が冷えそうだ。

当たり前だけどほとんどは、ばぁちゃんの衣類だった。だが、その中に子供用の甚平が何着か入っていた。


昔、俺が着た物だ。


それが3着サイズ違いであったから、一番小さいのを幸樹くんに着せ、少し大きかったけどもう1つを大樹くんに着て貰った。

うん、タオルよりはマシだ。


その後、やっと昼メシにありつけた。


食わせてみると、食の好みも兄弟で違いがあり、大樹くんは茄子は食えるけどピーマンはダメ。幸樹くんはピーマンが大好きで茄子はグニャっとしてるから大嫌いときた。

カボチャと鶏天は2人共ガツガツ食ったが、オクラと茗荷は俺専用になりました。


食後は、縁側でチューペットを半分ずつ食べながら2人にステータスの確認をしてもらうことにした。

もし防衛手段があるなら率先して使ってもらおうと思う。



「大樹くん、幸樹くんちょっといいか?」


「にゃあ〜に〜?」


「ぢゅーーーーーーーーーーーー!」



チューペットに夢中の2人にステータスの話をして自分の能力を確認してもらおう。出来れば何のジョブなのかを教えて欲しい。



「『ステータス』と言うと、自分の出来る事が見れるんだよ。試してみてくれないか?」


「うん!すてーたす!」


「しゅてーたす?」



俺には見えないが、2人の目の前にはステータスが現れたんだろう。ポカンとした顔をして空を見ている。



「なんかでた!」


「ぼくも!!」


「良かった!じゃあなんて書いてあるかおじちゃんに教えてくれるか?」



俺がそう言うと、途端に2人共俯いてしまった。


え?ええ〜?内緒なのか?俺に教えたくないとか?!それはちょっとショックなんだが…。



「……めない」


「え?なに大樹くん?」


「ぼく、名前いがいのかんじわかんない!」



ああ!そうか!!

2人はまだ漢字を習ってるはずないよな。だから読めなくてもしょうがない……。



「……ねえ、おじちゃん。コレなんてかいてあるの?」



幸樹くんが俺の手を取って自分のステータスを教えてくれとねだった。


だが、人のステータスを他人が見ることは出来ない。幸樹くんには悪いがそれを伝えよう。



「ごめんな…幸樹くん。人のステータスは見えないんだよぉぉぉ?…………見える!え?!なんで今は見えるんだ?!」


「おじちゃんどうしたの?」



さっきまで見えなかった、幸樹くんのステータス。今は見えるって何が切っ掛けで変わったんだ?!


試しに幸樹くんに手を離してもらう。おお!見えなくなったぞ!

次は幸樹くんに手を取ったまま『見ちゃダメ』って思ってもらうと、再びステータスは見えなくなった。


接触プラス本人の許可制か……。


俺は急いで自分の鞄から筆記用具と手帳を出し、幸樹くんのステータスを書き留めた。




名前  曽我 幸樹(そが こうき)

年齢  4歳

ジョブ 土操士 Lv1

スキル 未習得

魔法  未習得




土操士…………これは公園の砂場で活躍しそうなジョブだな……俺の箱庭士もそうだが、これも要検証だ。 

続いて大樹くんのステータスも見させてもらう。



名前  曽我 大樹(そが だいき)

年齢  5歳

ジョブ 育成士 Lv1

スキル 未習得

魔法  未習得



これもまたくせのあるジョブで……。

何を育成するんだ?本人に好きな事を聞いてみれば分かるかもしれない。



「大樹くん、幸樹くん、これが君たちのジョブ……得意なお仕事だよ」


「いくせいし?」


「ど、そ、う、し?」


「そうだ。最初は分かりやすい幸樹くんから試してみようか?あそこの庭の土を使って、幸樹くんの好きな形になーれって思ってごらん?」


「うん!」




直ぐに目の前の土に集中した幸樹くんは、感じるまま素直にジョブを使う。すると、モコモコモコっと畑の隣の土が盛り上がり、徐々に形が顕になって来た。


ん…?……あ……これは俺も知ってるやつだ。

徐々に形作られたのは、全長50cmくらいの良く知られたアニメのモンスターの像だった。



「できたぁ!ピカ◯ュウ!!」


「コウキすごい!そっくりだよ!!ねえ、リザ◯ドンもつくって!」


「わかった!」



そうして次々と現れるキャラクター達。


だが、5体目を作った辺りで幸樹くんの様子がおかしくなった。

ふらふらと、身体が揺れている。



「わわわっ!!はい!ストップ!!今日はここまでな?幸樹くん、この力は使い過ぎると疲れちゃうんだ。だから続きはまた明日にしよう」


「うん……なんかグルグルまわってる……」



なんかじゃなくて、目が回ってるんだろう。

熱中し過ぎて、それこそ熱が出たら大変だ。


この辺は、俺が調整してやらなきゃ駄目だな。


さて、続いては大樹くんの番だ。先にヒアリングして何の育成に向いているのか、絞るとするか。



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