第3話 箱庭を保存する

ばぁちゃんちに戻ると、大樹くんと幸樹くんはまだぐっすりと寝ていた。


可哀想だけど、もし家に帰ろうとして勝手に外に出られたら、俺1人では助けられなくなってしまう可能性が高い。


これから2人には、なんとか少しずつでもこの環境に慣れてもらわないとな。


そんな事を思いながら、自身のステータスを改めて確認した。




名前  箱守 優志(はこもり ゆうし)

年齢  38歳

ジョブ 箱庭士 

スキル 精神耐性 疲労耐性 速読 算術 健脚 料理

魔法  未習得

【製作済箱庭】「ばぁちゃんち(保存する/保存しない)」




あれ?なんか項目が増えてる。

この『箱庭』を作るのに能力を使ったからか?それに【製作済箱庭】って、作った『箱庭』を保存出来るって事なのか?


これって何個でも『箱庭』を作れるのか?その場合は、もう1つ『箱庭』を作って保存すれば良いのか?分からない事だらけだ。

でも『ばぁちゃんち』は間違いなく『保存』一択で。


あとは『魔法』だよ。これは是非覚えたい。

絶対に覚えた方が便利だろうし、攻守共に今の俺では戦力が皆無だから。


全てが分からない事だらけで、切実に誰かに教えて欲しかった。他の人達は、この世界の人に教えて貰ってるのかね?




「とりあえず、ばぁちゃんちの『箱庭』を保存しよう『箱庭保存』!」




…………これで出来たのか?分からないぞ??


ステータスで確かめるか。




名前  箱守 優志(はこもり ゆうし)

年齢  38歳

ジョブ 箱庭士 Lv2

スキル 精神耐性 疲労耐性 速読 健脚

    料理

魔法  未習得

【製作済箱庭】「ばぁちゃんち(保存済)」



ぶふっ!!そのまま『ばぁちゃんち』って名称で登録されてた!

まあ、分かりやすいから良いけどさ…。それに

レベルも2に上がったし。


次は魔法だ!これもイメージなのか?

水よ出ろ出ろ出ろ出ろ!!



……………………………………出ないし!

これは詠唱したりする必要があるパターンか?



はぁ……考えても分からない!それに腹が減った。魔法の習得は保留にして飯でも作るか。


ばぁちゃんちに遊びに来ると、いつも野菜の天ぷらと素麺を昼メシに出して貰ったよな。


きっと台所に材料があるはず。

 


「うわっ!懐かしいなぁ……」



台所に行って色々探し回ると、今はもう製造中止になったアイスが冷凍庫に入っていた。


四角柱のバーアイス。なんちゃってバニラ味。

それに凍らせたチューペットも入ってる。

きっと、ばぁちゃんちが近くの商店で買って来てくれてたんだろうな……。


あとで2人に食べさせよう。


野菜は、庭から採って来た茄子にピーマン、オクラと茗荷。台所にあったカボチャも揚げよう。鶏のササミもあったから鶏天も作るか。


材料を切り分け、天ぷらの用意を整えた。素麺の汁は冷蔵庫にある『つゆの元』の濃度を調整して冷やせば完了。鍋に水を入れて火にかけたら、天ぷらを揚げる。


パチパチと油の弾ける音。昔は、台所にいても聞こえていた蝉の鳴き声が今は全くしない。


この『箱庭』には、植物はあっても、昆虫や動物は居なかった。アリンコ一匹見掛けない。

まあ、悪い事ばかりじゃ無いさ。だって、蚊もアブもいないって事だからな。寝ている時にあの煩わしいプ〜〜ンが、耳元で聴こえないのは素晴らしいことだ。


だけど不思議だ。電気もガスも水道も使えるのに、後から入った俺達以外に生き物がいないって。



さて、魔法が無理となるともう1つ『箱庭』を作りたい。

次に作るのは、可能なら今の俺が住んでいた部屋だ。


あの部屋なら、各種レトルト食品、カップ麺類、缶詰、乾麺、無洗米、ペットボトルの水に酒類各種が揃っている。錚々そうそうたるレトルト・インスタント食品のオンパレードだ。最近は特に疲れて料理をする気力も失くしてたからな。


その代わり生モノは全く無い。あっても納豆と卵、牛乳ぐらいだ。野菜は必要な時に使い切りのカット野菜を買っていたから。あ!冷凍野菜とフルーツは確か買ってあったぞ!


確かプライムデーにまとめ買いした、パウチのスープやスパゲッティソース、カレーもあるはず。


生活ベースは『ばぁちゃんち』の方が庭もあって子供たちに良いだろう。俺の部屋にある食い物を使って、子供の好きそうな食を充実させたい。


俺は震災以降、自然と食料を備蓄する様になっていた。賞味期限の長い物や以前は買う事の無かった水を買い、1週間以上は在庫で暮らせる食料を持っていないと不安になった。


だから、キャンプに行かないのに小さなバーベキューコンロと炭も持っている。


それが役に立つ時が来たんだ。


俺の部屋も『箱庭』登録するぞ!






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