第2話 よくある展開


「よくぞまいった!勇者達よ!」


王様がそういうと周りにいたお偉いさんの方々が頭を下げた。

もちろんその状況にその場にいた全員が困惑していた。


「勇者の方々よ。困惑するのは十分理解している。だが今は我の話を聞いてほしい。」


全員で23人召還されており、年は同年代か少し年上が多く何人か大人もいた。

全員最初はあわてていたが今は少しだけ落ち着いていた。



それから王様の話を聞かされた。

まとめると……


まず、ここはアンギス帝国。このユーディタス大陸にある一つの国であった。

そして俺たちが呼ばれた理由は長年争っていた魔族との関係が激化し、大きな戦争がおきはじめているという。その打開策……言わば切り札として勇者召還を行ったという。



「民は困窮し、国も日に日に疲弊している。辺境の村や、町はいくつ地図から消えたことか…!」

拳を握りしめ怒りに震える王様。その後ろでは王妃?と姫様かな?がすすり泣き、臣下や騎士達も怒りや悲しみで震えていた。


「だからこそ、勇者諸君…君たちを召還したのだ。頼む……この世界を救ってくれ!」


バッと王様が頭を下げた。


「王よ!頭をあげてください!」


「しかし……」


臣下たちが王様の行動に驚き声をあげた。


その光景を見て……周りの高校生たちがやってやると声をあげ始めた。そして感慨されたのかやれやれといった感じで大人達も腰をあげていた。



(何この茶番?)

樹生は唖然としていた。

(いやいや、民が困窮?国が疲弊?じゃあお前らの格好はなんなんだよ)

国民の上に立つものとしての威厳とかならまだわかるが、さすがにそのお腹は……それに疲弊しているようには見えない。


「……ステータスオープン」

小声で唱えると目の前にステータスが出現した。

職業···探求者、世界を旅してみよう!思わぬ出会いもあるかも?


スキル

ホワイトマーケット···適正な価格と最高の品質でお届けします!



「········はぁ?」


かなりまずい状況に陥っていることに樹生はきづきはじめていた。


(異世界召還……戦争への利用……使えないスキル…etc…)


「さあ!勇者達よ各々の職業とスキルを!」


王様…‥いや、王がそういうと続々と職業の開示が始まった。


「俺は……」


「王よ!」

樹生は一番に声をあげた。

「王よ!無礼を承知で申し上げますが、どうやら私のスキルは戦いに向かないようなのです。皆と一緒にいても足を引っ張ってしまうだけです。」

そういうと周りの人達は固まっていた。


「…………確かに、戦闘職ではないですね。」

騎士の1人がそういいながら俺のことをジッと見つめていた。どうやら職業を見抜ける類いのスキルを持っているようだった。


「ふむ……」

王はひとしきり悩んだあと、

「使えぬものをいつまでも置いとくわけにはいかぬか……しかしこちらの都合で召還したのも事実……」

「よし!ならばそなたにしばらく生きていけるだけの金を渡そう。その後はどこへでも好きなところへ行くとよい」







「じゃあな、強く生きろよ!」

門番にそう言われた俺は軽くお辞儀をすると、金貨が数十枚入った袋を持って城下町へと歩いていった。

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