第24話:ボス級モンスター襲来!?


 俺たちは荒野の奥へとさらに足を進めていた。


 地平線の先にぼんやりとシルエットが見える――

 城の廃墟のような建物があるらしい。


「何か手がかりがあるかもしれないな。あっちに行ってみようぜ」


「……そうね。あそこが拠点かもしれない。

闇の王とか噂される存在がいるって話を聞いたし」


「闇の王? それって魔王とは別物なのか?」


 俺が疑問を口にすると、イリスは険しい顔をする。


「そう。闇の王は、この辺りの世界を支配したと言われる存在。

 でも“魔王の血”とは関係ないわ。別物よ。

 世界が違うし……とにかく、力の性質が違うの」


「へえ……なんか色々あるんだな。わけわかんねえけど」


 そうこう言い合っていると、城の手前で突然地面が揺れた。

 ごごご……という音に、俺とイリスが身構える。


「こ、これは……地震?」

「違う、魔力の波動が強い……!」



◇◇◇



 視界の先、地面をぶち破るように巨大な鎧をまとったモンスターが出現した。


 人型に近いが、胸元にはうごめく闇の気配があり

 地面を踏みしめるだけで衝撃が走る。


「でかい……これ、ボス級か?」

 俺は思わずごくりと唾を飲む。


 イリスも驚いたように後ずさるが、すぐに杖を構えた。


「やるしかないわ。近寄られる前に攻撃を叩き込む!」

「おう。俺の“力”で一気に崩してやる!」


 奴が目を光らせたと思ったら、闇の衝撃波のようなものを正面から放ってきた。


 イリスが素早く回避し、俺は右手に光の力を集中させる。


 ひとまず“魔王の血”だか何だかは関係ない。


 今はこの怪物をぶちのめすのみだ。



◇◇◇



「そこだああっ!」


 俺は足元を蹴って跳び上がり、中ボスの顔面めがけて光の拳を叩きこむ。


 ビシィッと衝撃音。


 大柄な甲冑がヒビ割れるが、まだ完全に崩れない。


「……やっぱり硬いな! イリス、援護頼む!」

「わかってるわよ!」


 イリスが黒雷をまとった魔法弾を放つと

 ボス?の胴体を抉るように爆発が走った。


 だが、それでも跪く程度。


 しぶとい……!


「くそ、まだ倒れないのか……」


 奴は低い咆哮を上げ、今度は重々しい剣を振り回しながら突進してくる。


 俺はギリギリで回避し

 地面に大きなクレーターが生まれるのを目の当たりにした。


「やべ……あの一撃まともに食らったら即死だぞ……」



◇◇◇



 負けるわけにはいかない。


 俺は再度拳に力を込め、このまま一撃必殺に持ち込むことを決意。


 呼吸を整え、限界まで“謎の力”を引き出すイメージを頭に描く。


 濃密な光が右腕を覆い、ブンッと空気が振動する感覚がわかる。


「おらぁああああッ!」


 一気に間合いを詰め

 奴が剣を振り下ろす寸前にカウンターの形で拳を叩き込む。


 ズドンッ!!という爆音とともに、ヤツの甲冑が粉々に砕け散る。


「決まった……!」


 俺が確信した瞬間、奴の身体から黒い霧が漏れ出すように消滅していく。


 そのまま断末魔のような轟音を響かせながら地面に崩れ落ち

 動かなくなった。



◇◇◇



 静寂が戻る。


 俺は膝に手をつき、荒い息を吐きながらやっと勝利を実感。

 イリスが杖を持ったまま近づいてくる。


「ふう……圧倒的だったわね、あなた。なかなかやるわね……」

「ま、まぁ……いつものごとく“チート能力”様々ってところだけど」


 それにしても、闇の王とか言うのがいて

 こんな化け物を従えてるなら油断できないな。


 どこに行ってもとんでもない敵ばかりだ……

 地球に帰りたい思いが強まる一方で


 こうして暴れてると妙にスカッとする自分が嫌になりそうだ。


「今のが闇の王……あいつの配下だとしたら、もっと強いのが出るかもしれないわね。でも、さっき言ったように“魔王の血”とは全然別物よ」


「そうなのか? 闇の王と魔王の血が別なら、何の関係があるんだ?」


「わからない。でも、闇の王は闇の王。魔王の血は魔王の血。

 それぞれ生まれ育った世界が違う。

 あなたが想像してるほど簡単に結びつくものじゃないの」


「ふーん……そっか。ややこしいな」


 俺がため息をつくと、イリスは渋い顔をしつつも

 何かスッキリしたような表情で言った。


「……ともかく、デカブツは倒せた。さっさとあの城っぽいところに行きましょ。そこで闇の王の情報が手に入るかもしれないわ」


「おう、いいぜ。もうモンスターが出るなら全部蹴散らしていくまでだ!」


 疲労はあるけど、イリスの隣を歩いていると、少しだけ心強い。


 俺が一人で戦うわけじゃない。彼女がツンツン言いながらも

 しっかり魔法援護してくれるのは助かる。


 少しずつ縮まる距離を感じながら、次の場所へ向かって歩を進める。

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