「なくしてはいけませんか」甘く妖しくあなたは問う

佐藤宇佳子さまがついに殻を破った。既出作品と一線を画す世界を見せた。

この物語を読むと、区別や分類が便宜上のものであることを再認識する。私たちは「なくす」ことを過剰に恐れてはいないか。丁寧に作品世界を私たちの目の前でひらいてみせながら、逃げられない問をにっこりと提示された思いがする。しかし、語り口はあくまで控えめで、どうしようもなく甘美だ。

佐藤さまは人や物事のあわいを描き出す。これまでは繭の中から見え隠れしていたその真の姿がこの作品で明らかになった。

佐藤宇佳子さまの真の魅力にじみ出るこの作品、ファンならずとも一読の値打ちはある。

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