夜の公園

かくれんぼしよーぜ


外に出れば、12月の夜の冷たい空気が肌に突き刺さる。

明るいネオンの光に、酔っ払いや学生の笑い声や賑わう声が耳に入ってた。



「ね、ダッ、ダイ!!」


あの日の事を思い出してしまうから、戸惑いを隠せない。



「ま、待って……」


ダイは私の右手を無理矢理引っ張って歩みをはやめていった。

パーティードレスは薄い生地だで寒いし、いつもより高いヒールを履いている私はたまったもんじゃない。



「ねぇ!ダイ!!」


やっとダイと向き合えたのは、駅周辺から大分歩いた場所で人々の笑い声は遠くに響いていた。



「足、痛いし!」


「……」


「さ、寒いし!!」


「あ、ご、ごめん……」


私の右手をしっかりと握りしめたまま振り向いたダイは、罰が悪そうに視線を足元に向ける。


「でもさぁ、ばっかじゃねーの?」


「はぁ?」


「何で合コンとか行って浮かれてんだよ?」


「……あ、あれは職場の後輩に誘われて」


なんで、ダイに怒られなきゃいけないのか。

なんで……、私が言い訳みたいな事をしなきゃいけないのか。



「ふーん。誘われれば出会いとか求めに行っちゃうんだ?」


「違っ……、しょうがないじゃん!適齢期とか色々と嫌味言われてんだから」


なんて、ギュッと握られたダイの右手を振り払った。




「な、んだよ。IT企業とかさぁ……」


さっきまで不機嫌そうだったダイが頭を抱えてしゃがみ込むから、まるで 私の方が悪いんじゃないかって思ってしまう。



「ダイ、あのさ……」


ダイの肩に手を置こうとした、その時──。


「アリカ、かくれんぼしよーぜ?」


突然ダイがヘラヘラと顔を上げた。


「は、はぁ?」


ダイは自分の上着を私の肩にかけて、私の腕を無理矢理引っ張る。連れていかれたのは、すぐ近くにあった公園だ。




「俺、鬼だからアリカ隠れて」


「私、ヒールなんだけど……」


「靴なんて脱いじゃえばいーじゃん」


なんて、口にするダイからは真っ白な息が漏れる。




「いーち、にぃー、さー……」


「ちょっと待ってよ!」


目の前には背中を向けて数を数えはじめるダイがいのから呆れてしまう。



信じらんない!!


一体なんなの?


突然、かくれんぼしよーなんて。






でも、もっと信じられないのは──、



ヒールの入った靴を脱いで走り出した私自身だ。




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