第32話 不穏な領主…ンゴ

どみん「中華まん各種上がったンゴ〜チャーシューエッグ弁当と生姜焼き弁当も10づつンゴ!」


子供たち「「んごっ!」」


イグル「!…ミィアパイセンよぉ、いくらガキ共がいるからってよぉ〜ちったぁ働けよな!」


ミィア「嫌だにゃ!ゴロゴロするにゃ」


オークのスタンピードから2週間。

食堂…は好評すぎて手が回らないほどだったので弁当や中華まんを積極的に売るようにした。

ハト教会の子供たちが手伝ってくれたり、簡単な木箱を作ってくれるので、その木箱に料理を詰めて提供し木箱の料金は教会に寄付という好循環が生まれている。

年長の子たち(12〜14才くらい)の子たちが10数人も手伝ってくれるので人手が足りているせいか、ミィアたんが以前にもましてだらけている。

仕事内容や対応はイグルが全部やってくれるので客対応や子供たちへの指導は全ておまかせしている。

いつの間にか子供たちの返事が「んご」になってるので悪影響にならないか心配な気持ちもあるが昔、小さい頃ひーくんに言われてからずっと続けてる事なので癖でつい出てしまう。

そんなこんなやってるうちにちらほら行き場の無い子供たちがやってくる。

ハトさんが泣く泣く断っていた子供たちをどんどんこちらに回してトビちゃんが連れてきてくれる。

トビちゃんの見えそうで見えない絶対領域のミニスカシスター服、大きい瞳、可憐な仕草。

ンゴはいつ目覚めても不思議ではない。

そんなこんな活動のかいあってか冒険者達に瞬く間に噂が広まり、地元住民とともに毎日大行列で、どこからかどんどん冒険者達が集まってきてこのギュウシーギルド周辺はとんでもない好景気が到来したってモツナベさんが卑しい笑いを浮かべていた。

ギルドや周辺の宿などにもンゴのレシピをギルドを通してばら撒いたのでそれも後押ししたのかも?

調味料や油をギルドに卸した時大量の金貨約200枚を頂いたので様々な家具や魔道具を買ってどんどん孤児院をリフォームしていく。

これがなかなか楽しかった。

魔道具はストーブみたいなものから扇風機みたいなものまで、なんか家電みたいな感じかな?


どみん「今日はこの辺で閉店ンゴ!みんなお疲れ様でしたンゴ!」


一同「「「んご!」」」


お弁当は銀貨2枚、中華まんは銅貨4枚。

粗利80%という暴利でも飛ぶように売れて、純利益だけで計算しても一日平均100金貨売れている。

手伝いの子供たちに金貨一枚づつ渡しても金貨80枚は余るので今ンゴの預金は凄いことになっている。

お金は十分だが店を畳むことはしない。

最終的には子供たちだけでも回るようにしたいのだ。

そのために食堂を畳んだ後、夜まで計算、接客、買い出し、調理法、そして読み書き(イグルが)教えている。

夕飯は実際に自分たちで調理して食べてもらっている。

もう既に割と上手く出来る子もいる。


パクチー「うーん、もっと肉をつける時間を…ぶつぶつ」


例えばいまブツブツ言ってる小太り細めのボブヘアーのパクチーくん。

来た当初やる気が無さそうな素振りだったが、キッチンに入れた瞬間誰よりも情熱がある子。

研究熱心で本当に楽しそうに料理をする、ンゴが居なくなったらたぶんこの子にキッチンを任せるだろう。


トントット「今日も凄く美味しい…ついこの前までスラムで彷徨っていたのに、豊穣神ツイフェ様に感謝を…」


オールマイティで爽やかイケメンでこの『マネキネコ孤児院』のリーダー的存在のトントットくん。

どことなくはやとくんを思い出す気品のある感じ、本当に孤児なのかな〜?


レーペル「お菓子作りなら私が一番だもんね〜」


年齢の割に発育が良くて萎える長髪のこの子はレーペルちゃん。

ハキハキしてて陽キャ感強くて近づきにくいけど、甘味や中華まんは彼女の右に出るものはいない。

といってもンゴができる甘味自体が少ないので、こんなの時幼馴染のまっちゃんが居てくれたらなぁって思う。


ソニア「あーまた焦げやがった!料理なんて俺の性に合わねぇよ!そんなことよさぁ、ンゴの兄ちゃん!俺にも〈シノビノワザ〉ってやつをイグル兄ちゃんみたいに教えてくれよ」


どみん「ソニアちゃんには早いかな…ンゴ」


アニメでしか見たことのない男っぽい女の子のソニアちゃん。

料理は駄目だが接客はイグルにもまさる効率の良さ。

意外にも計算も得意。

最近イグルが「金は要らねぇ!それより技を教えてくれ」というのでまだまだ未熟なンゴなのだが基本ぐらいは教えてもいいかとおもって深夜教えている。

低い体勢のまま移動、足音をたてない歩法、呼吸の仕方、立ち方、寝方、身体のひねり方、目線の追い方、受け身。

どれもコレも地味だし、実際に相手にどう作用するか理解しないと何やってるかわからないだろうからそのうち飽きて辞めるかなぁ〜と思っていたが、


イグル「すげぇ…全くが違う…ひひ!」


なんて不気味に笑うものだから何か気持ち悪い。

ってかそれを見てたとなると深夜まで起きてたのか…ソニアちゃんには釘を刺しておかないと。


上手くやっていけてると思っている時こそ災難はやってくるもので。

孤児院の入口がやけに騒がしいので、キッチンで皿洗いをしていたンゴも出向いていると…

そこにはやけに偉そうな服装のちょび髭がやけに長いおっさんがフルプレートの騎士たちを連れてイグルと揉めている。


クサレイボ「吾輩は『クサレイボ・ギュウシー』子爵であるぞ!そこを退け!」


イグル「ちっ!ドブ腐れ領主のくせに「この孤児院を領に返納しろ」だぁ?舐めてんのかチビ!」


クサレイボ「ドブ腐れ領主!チビ!そこの緑のガキ、貴様命は要らないようだな?この私兵50人を見てよく吠えたと褒めてやろう」


イグル「いいからかかってこいよ…オーク程度にビビり散らかしてる連中だろ?」


騎士①「このぉ!」

騎士②「ぶっ殺す!」

騎士③「【ファイター Lv2クロススラッシュ】!」


無手のイグル一人に全員で取り囲んで襲いかかってきた!

恥ずかしく無いのか?

まぁあの程度ならあの真空を纏ったやつを使えばどうにでも成りそう。


イグル「!…え?」


イグルに奴よく見えてる。

大袈裟に避けず最小で避けてるから相手のほうが先にバテたンゴ。

そりゃあフルプレートなんて数十キロの重りだもの。


イグル「……これが正しい姿勢・捻動・歩法か…10分程度動いたがまるで疲れてねぇ!?よく周りも見える…本当に【スキル】じゃなくて誰でも出来る技術なのか!ハハッ!」


…ちゃんともうできてるじゃん。

本当に神童なのかも…


クサレイボ「ええい何をやっているお前たち!この景気のいい孤児院を吾輩のものにするためにそのガキをたたっ斬れ!そのガキどうやら攻撃は皆無―――」


イグル「【風魔法Lv4 サイクロン】」


騎士達「「ぎゃああああああああぁぁぁ……   ……ぁぁあああああ!!??」」


ドゴゴン!カランカラン


上空4mぐらいまで強風で舞い上がり、そのまま落ちた。

あれは痛いよぉ?


クサレイボ「ひ、ひぃ!吾輩に傷でもあれば国王陛下の怒りを買うことになるぞ!!」


イグル「はぁ…めんどくせぇ。もういいからこの私兵共連れてさっさと帰れよ…」


クサレイボ「きょ、今日のところはこのくらいにしてやる。だがいずれ吾輩が―――」


イグル「早くしろっ!首を切るぞ!」


クサレイボ「ひやあああああん!!」


余りに小悪党過ぎて、後ろからイグルに聞いてしまった。


どみん「あれ、一体なんなンゴ?」


イグル「ここの領主。昔から嫌になるぜ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る