歪み探偵鎮村透華の事件簿

憮然野郎

Chapter 0b1

0x0 始まりはいつも突然に

名門私立心象学園の桜並木は、陽光にきらめき、新緑の葉がそよ風に揺れていた。

その美しい光景とは裏腹に、学園の敷地内には、生徒たちのざわめきと好奇の視線が渦巻いていた。


鎮村透華は、その中心にいた。

誰もが羨む美貌と社交性を持ち合わせ、クラスでも常に注目の的。

しかし、彼女には誰にも知られていない一面があった。


ある日の昼休み、透華は屋上で一人、サンドイッチを頬張っていた。


「また告られたのか?透華」

背後から声をかけたのは、幼馴染の日向朔だった。

透華の隣に腰を下ろすと、彼はにこやかに笑いかけた。


「ええ、今回も腕相撲で返り討ちにしてやったわ」

透華はサンドイッチを咀嚼しながら、涼しい表情で答える。


「しかし、モテるよな。透華は」


「モテても意味がないのよ。

私には、相手の心の『歪み』もわかるから」

透華の言葉に、朔は少し驚いた表情を見せた。

「また、その話か。透華は本当に、そういうところがドライだよな」


「仕方ないじゃない。だって、本当にそうなんだから」

透華は肩をすくめると、残りのサンドイッチを口に入れた。


彼女には、五感全ての認知の「歪み」を知覚する特殊な才能がある。

周囲の人間には感じられない違和感、音、匂い、味、触感。それらは彼女にとって日常的なノイズであり、その力を持て余し、孤独を抱えていた。


「透華」

朔は心配そうな表情で透華を見つめた。

「また何かあったのか?」


「うーん、別に。ただ、最近、妙な『歪み』を感じることが多くて」


「妙な歪み?」


「そう。うまく言えないんだけど、今まで感じたことのない種類の『歪み』なの」

透華は眉をひそめると、遠くの景色に目を向けた。

「もしかしたら、何か良くないことが起こるかもしれない」


彼女の言葉に、朔は静かに頷いた。

「気をつけた方がいいかもしれないな」


その数日後、心象学園で奇妙な事件がおこる。


"ありえないはずの場所で、ありえないはずの物が消えた"


ことの発端は、そんな噂が広まったことからだった。


※透華AIイラスト↓

https://kakuyomu.jp/users/buzenguy/news/16818622173027292614

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