第32話 この世界にブラジャーは存在しない

 二階の部屋に帰り、キスをしようとしたら、またスルリとかわされてしまった。


 「ううん、お風呂に入らせてよ」


 しょうがない、ここは〈いろは〉の宿だから、今直ぐしたいなんて我儘わがままは言えないな。

 風呂に入っている間に、旅の荷物を片づけておくか。


 汚い下着の替えと、ボロいマントと毛布とタオルが少々だな、後はこまごまとした日用品しかない。

 それと黒糖があるな、忘れないうちに渡しておこう、もう忘れていたしな。


 「ふぅー、良いお湯だったわ」


 あっ、忘れていたぞ。


 「新しい下着はどうなったんだ? 」


 「へっ、それはお風呂に入ったんだから。 もう着替えたわよ」


 「えぇー、そんな。 見たかったのに」


 「はぁ、しばらく一緒なんだから、いつでも見れるわよ。 それに今はいているのも、新品なんだ」


 そう言われて〈いろは〉を見ると、白いスリップから、真っ赤な下着がけて見えている。

 見えるのは下だけだ、この世界にブラジャーは存在しない、だから胸の先っぽが見えている、二つちゃんとだ。


 もう我慢の限界が来たから、半年ぶりだからな、俺はとりあえず抱きしめてキスをした。

 もう〈いろは〉は逃げない、俺の背中へ手を回してくる。


 そして自分から、俺の口の中へ舌を差し込んできた、これを愛撫あいぶしろってことだ。

 そうに決まっていいる。

 やり部屋に恥じない、激しいキスを二人でおこなう、ぐちゅぐちゅという音が鳴っていたと思う。


 白いスリップを脱がせば、真っ赤な下着がモロに見える、当たり前か。

 生地は薄くてレースの縁取ふちどりがとても豪華だ、黒いものが透けて、赤黒い部分もある。


 〈いろは〉のおっぱいは、見かけより大きいんだ、俺にジャスト、ふふん、サイズだと思う。

 形もりも最高だぞ、わぉぉ、すごく良いおっぱいなんだ。


 まなければならない、両手を使ってだ、ソフトに的確にモミモミしようー。

 いけない、久しぶりだから、興奮し過ぎて貧血で倒れてしまいそうになる。


 「はぁん、ベッドに連れていって」


 このためにきたえた筋肉を、俺は総動員して、〈いろは〉をお姫様抱っこに抱え上げた。

 俺の目の前で、おっぱいがプルンとれる、二つ同時にだ。

 間違っておりました、訂正いたします、プルンじゃなくて、プルンプルンです。


 誠に残念ですが、真っ赤な下着をクルクルと脱がして、〈いろは〉の体中に愛撫を加える。


 我慢だ俺、せいは事を仕損じる、だぁー。

 〈て〉が抜けていたから、手でおっぱいをモミモミするのだぁー。

 かなり支離滅裂しりめつれつになっている。

 プリプリのお尻も揉めってことだろう。


 「あぁん、〈ゆうま〉、感じるわ。 もう来てよ、お願い」


 俺はかなり溜まっていたんだろうな、二回戦もしてしまった、〈いろは〉はもうグロッキー状態だ。

 ベッドもぐちゃぐちゃになってしまった、誰がこれを洗濯するのだろう、ごめんなさい。


 〈いろは〉がなかなか復活しないから、水を口にふくんで口移しで飲ませてあげる。

 水を求めてなのか、俺をまだ求めているのか、〈いろは〉の舌がまだうごめく。


 だけど俺も疲れていたんだろう、抱き合ったままで、二人とも寝てしまったらしい。

 スッキリして満足したからな。


 朝起きると〈いろは〉はもう起きていた、鏡の前でお化粧をしているらしい。

 白いスリップ一枚か、無防備な姿だな、俺に気を許してくれているんだろう。


 丸い椅子に座っている、お尻がまん丸で良いな、それに赤が透けていないぞ。

 おっ、ノーパンなのか。

 なんてことはない、良く見れば白いパンツだった、だから透けても分からないんだな、納得。


 そして心に何かが引っかかっている感じだ、なんだろう思い出せない、くぅ、もう少しなのに気持ちが悪いぞ。


 スリップ姿で鏡の前でお化粧。

 スリップ。

 ではない。

 鏡。

 鏡だ、荷物の中に買うつもりが無かった、手鏡がある。


 「〈いろは〉、おはよう」


 「おはよう。 まだ寝てても良いのに」


 「はい、これ。 旅のお土産なんだ」


 俺はケースに入ったままの手鏡を渡した。


 「へぇー、気がくじゃない。 何かしら」


 「ははっ、たいしたものじゃないよ」


 「わぁ、可愛い宝石がついた手鏡じゃないの。 ……ありがとう、嬉しいな」


〈いろは〉は手鏡に、自分が浮かべた満面の笑みをうつしたあと、俺に抱き着いてチュッとキスをしてきた。

 こんなに喜んでいるんだ、宝石じゃなくて貴石だけど、真実は一生黙っておこう。


 〈いろは〉はレストランで、朝食を食べる間もルンルンしていたと思う、団員への挨拶あいさつも笑いながらだった。

 俺の嫁は、こんなに分かりやすい性格だったんだな。


 「ごめんね。 まだ仕事が片付かないのよ。 夕方には帰れるから、それまで時間をつぶしておいてね」


 団の制服に着替えた〈いろは〉は、また俺にチュッとキスをして、拠点である屋敷の方へ行ってしまった。


 気味が悪いほどご機嫌だな、ふぅー、浮気をしなくて本当に良かった、少しだけあった出来事は、全然全く何にも浮気なんかじゃない。


 やる事が何にもないから、俺はボロい下着とかを風呂でゴシゴシと洗った、ロープにるして干しておくか、小さな穴は見えるがまだまだ使えそうだ。

 そして〈いろは〉が用意したくれた、かなり上等そうな服を着て、拠点の受付に行くことにした。


 貴族街に隣接している旅館から、南の方へ向かうと、〈古都ダウラ〉の市場バザールが遠くに見えてくる。

 少し丸くなった蒲鉾型かまぼこがたの屋根だ、その下で百を超える店が、五月蠅うるさいくらい活発に商売しているはずだ。


 バザールに足をみ入れれば、わぁーわぁー、と響く喧騒けんそうと雑多な匂いが俺を襲ってくる。

 香辛料と果物と油で揚げた食べ物の匂いが強い。


 ただ港湾都市〈ツィア〉のバザールと比べれば、さわがしさの中にも、落ち着いたものを感じる、ここが古都だからだろう。

 俺の先入観が、そう感じさせているだけかもしれないが。


 魚臭さが何も無いのは、大河〈ラメンサ〉と海から、ここが離れているせいだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る