第6話◆魂の白米
カランコロンカラーン
ナイスタイミングで来たようだ。
「お店突っ切って母屋へどうぞ~」
キッチンから叫ぶ。
二人はザ・和食が配膳されたテーブルを見て固まった。
いつもはお調子者で軽口ばかりのシヴァさんだけど、やけに静かに小さく「いただきます」と手を合わせ、箸をとると、大事そうに白米を口に運び、「美味しい…」と涙がポロリ。
大男のシヴァさんの背中がこの時だけは小さく見えた。
一つのミスが文字通り命取りになる世界で肩肘張って生きてきたんだね。
今だけはその荷を下ろしてたくさんお食べ。
一方ジェイさんはその細い体にどんだけ入るんだという勢いでせわしなく箸を動かしている。
甘い卵焼きをご飯で追っかけ、刺身をご飯で追っかけ、味噌汁をご飯で追っかけ、梅干しを大量のご飯で追っかけの無限ループ。お口がリスみたいにパンパンだよ。
でも、いつものハイライトの消えている瞳には光るものが。
ずっと頑張って来たんだね、我慢してきたんだね。
私にはこれくらいしかできないけどたくさん食べて英気を養って欲しい。
食器の音だけがカチャカチャと鳴る無言の食卓には温かな時間だけが静かに流れて行った。
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「はぁーマジ生き返った。マッッッジでありがとう!こんなに美味い飯、こっちにきて初めて食った」
シヴァさんにいつもの調子が戻て来た。
ジェイさんも「うんうん」と頷いている。
めっちゃガタイのいい戦士とフードを目深にかぶった猫背の魔術師が緑茶を啜って和んでる様子はちょっとシュールだ。
「これバッカスにも食わしてやりてぇー。あいつきっと俺たちが白米食ったっつったら血の涙流して悔しがるぞ」
「え?バッカスさんもご一緒なんですか?」
バッカスさんって言うのは、こちらも箱舟でご一緒だったレベルキャップ解放者の一人で種族は“ドワーフ”、職業は鍛冶師で確かスタイルは戦槌だったような?
「一緒っつーか、俺たちバッカスの工房を拠点にさせてもらってんだ」
「あ~、武器とかメンテいりますもんね」
「そそ」
「確か、バッカスさんってカナンガラ山脈のドワーフの国でしたよね?今日はご一緒じゃないんですか?」
「あいつ飛翔持ってないから…。本当はもっと早くこっち来たかったんだけど、バッカスの手前、こういうことでもなけりゃ俺たちだけ飛んでくってのもできなくて」
「そういうことならギルドに伝言でも残してくれればよかったのに。はい、お弁当」
竹籠お重のお弁当と鍋ごとお味噌汁をドンッと差し出す。
インベントリがある者同士でしか成り立たないやり方。
「ノエル、マジ神!!!!!俺たちもう足向けて寝れねぇわ」
大喜びするシヴァさんと無表情だけとちょっと顔が紅潮している気がするジェイさん。
「いや、そこは足向けて寝て下さい。私にはこれくらいしかサポートできませんけど…」
と申し訳なく思いつつ…。
事実そうなのだ、私以外の箱舟メンバーはみんなレベルキャップ解放者で、邪神討伐の実働部隊。
つまりは命をベットしてここにいる面々なのだから。
だから、力以外のことで私にできることがあるなら何だってしたい、そう思うのだ。
「いやいや、全然“これくらい”じゃないから。これがどれだけ俺達の心の支えになるか。マジ箱舟にノエル乗ってて良かったわ~。バッカスなんて白米食いたさに遺跡攻略してるからね」
「え!?遺跡ってカナンガラのゴーレム遺跡ですか?」
「そそ、今三十階層っつってたかな?あっこの最下層って精霊石あるじゃん?それで精霊の道開けてここに来る予定らしいよ。で、俺たちも時々攻略手伝ってるってわけ。飛ぶより精霊の道使った方が早いしね」
「っ!?白米のためにやってることのスケールがデカすぎません!?あんまり危ないことしないで下さいね。こんなもので良ければいつでもお弁当用意しますから」
「それ、バッカスが聞いたらマジ泣きしそう。その前にこの弁当で号泣すると思うけどね」
シヴァさんは笑ってるけど、私からしてみたらまさかだよ。
あんな高レベルな遺跡を攻略するほど白米を渇望してるなんて…。
私には逆立ちしたって無理だわ。さすが解放者はなまじ力があるから思考がぶっ飛んでる。
そうして彼らは次回のリクエストを言い置いて帰って行った。
バッカスさんに早くお弁当を届けてあげたいんだってさ。
次回のリクエストはシヴァさんが某有名カレールゥで作るカレーライス。
ジェイさんは卵がペラペラなタイプのおうちオムライス。ちょっとジェイさんの好みがわかってきた。多分、あの人、卵を使った家庭料理が好き。
んで、「飯代」って、それはもうフランクに、何でもないことのように、“
ジェイさんは転移で私のポッケに「“朧真珠”!?」。
素材が高級すぎるぅーー!
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明日のエピソードはリアム視点
「第7話【Side:リアム】あの子は何者!?」です。
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